水・ガス・電気なしで一年間生活してみた
はじめに
何とか大学に進学できたことをきっかけに、一人暮らしをすることになった。
高校を中退してふらふらしていた結果、自分は大学受験のときに二浪もしてしまったので、「せめて生活費を切り詰めて親に詫びたい」と思っていた。
フリーター時代の貯金やバイトの給料で、家賃はなるべく親に頼らずに自分で払おうと思っていた。
「定期を申請するのが苦手だから徒歩通学できる場所に住みたい」と思っていたので、キャンパス周辺で物件を探すことにした。
しかしキャンパスは渋谷の近くにあり、その周りの家賃はひどく高かった。
バイトの面接に五連コンボで落ちており、金が入るあてが一切なかった私にはとてもこんな大金を払う余裕はなかった。
「虫や湿気対策のためには二階がいい」「トイレとバスは別の方がいい」など、物件を選ぶ上ではさまざまな条件があるが、家賃を抑えるのは大前提として、どこまでそれらの条件を切っていけるか?というのが難しいところだった。
最強の物件?を見つけた
そんなこんなであれこれ悩んでいると、ふと、キャンパスから徒歩15分、家賃3万という恐ろしいコスパを誇る物件を見つけてしまった。それに目がくらだ私は、まともに条件を確認せずに即入居を決めてしまった。
それがこの物件だ。
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木造築60年、あり得ない狭さの廊下に、急傾斜で滑りやすい階段。現行の建築法からすればギリギリアウトといったところではないだろうか。
火災保険などもあるにはあったのだが、マッチ一本で全焼しそうなこの建物を前にしてはあまり意味がないと思う。
公共料金を契約しそびれた
入居するときに貼り替えてくれたようで畳だけは綺麗だったのだが、全体的に空気が埃っぽく、窓際にはゴキブリのような変な虫が出てきて辟易した。
押入れに至っては「蜘蛛の巣でも張っていたらどうしよう」と中を見るのが怖くなって、1年間で1回も開けることができなかった。
「部屋が明るくなったら虫を見つけちゃいそう」「クーラーをつけたら冷気より埃が出てきそう」といった訳のわからない理由で何となく電気を契約するのを躊躇っていたら、気がつけば一週間が過ぎていた。
もうこうなったら電気も水もガスも要らないのではないか、とヤケクソになった。
ここに、忘れないうちにこの生活のルーティンを書き留めておくことにする。今後一人暮らしをしたいと思っている人の参考になればいいと思う。
一日の流れ
3:00〜4:00
起床、というか暑いor寒くて目が覚めてしまう。あまりの就寝環境の悪さに、早起きしすぎて逆に昼夜逆転してしまった。
することもないので本を読むか、
おやつを食べる(冬だったら冷蔵庫がなくても前の晩に買った牛乳を飲めるということに気づいた)。
5:00
空が白みはじめてきて、スマホのライトなしに文字が読めるようになる。
天気のいい日には近所のランドリーに行ったりするのだが、おじいちゃんとおばあちゃんが経営しており、朝の5時に開いたり7時に開いたりとオープン時間がまちまちで少し混乱した。
6:00
このへんで空腹と孤独に耐えきれなくなって外へ出る。近所の公園で顔を洗う。
6:30
この時間になると公園の広場におじいちゃんたちが集まってきてラジオ体操が始まるのだが、それを延々と眺めていた。
ラジオのパーソナリティの挨拶に対していちいち「おはようございます」とお辞儀を返している姿が微笑ましかった。
7:00
最寄りのまいばすけっとへ開店と同時に入る。大学の生協は高いので、ここで昼食を買っておくことにしていた。
毎朝ここで買った一リットルパックの牛乳(一日分)をずっと持ち歩いていたら、クラスメイトに「一リットル牛乳を持っている人」と認識されるようになった。
持ち歩くと言えば、「塩分を摂るとうつが治る」と当時どこかで聞いた私は、塩を持ち歩くようになっていた。それを休み時間にちょくちょく舐めるようにしていた。
あまり眠れないせいか、この生活を始めてからテンションの上下がおかしくなっていたのだ。
7:30
キャンパス内の体育館やシャワー棟でシャワーを浴びる。うかうかしていると朝練を終えた運動部の人たちが更衣室に入ってきて気まずいので、コソ泥のようにこっそり入っていた。
19:00
授業が早めに終わっても、家に帰りたくないのでキャンパスに無理やり滞在する。夜になったらまいばすけっとで軽食を買い、帰宅。
19:30
〜就寝〜
20:00
体は眠りたくて仕方ないのだが、夏場は暑すぎて、冬場は寒すぎて眠れなかった。
夏はほぼ裸になってペットボトルの水や冷感スプレーを被りながら寝ようとするのだが、それでも暑くて何度も起きてしまって、終いには睡眠薬に頼っていた。
冬には6枚のヒートテックの上にニットとスキーウェアを着て、それでも耐えられなくてウイスキーをあおっていた。あまりの寒さに、大学のゴミ捨て場から段ボールを拾って布団代わりにしたこともある。
おわりに
一年間続けてみてわかったこの生活のメリットとしては、以下のようなものがある。
・生活費が浮く
・水や電気のありがたみがわかる
・外にいる時間が増えるので、自ずと外向的になる
・「これ以上ひどい生活になることはない」と思うことで、人生に希望が見える
・なぜかNHKの集金が来ない
眠れない夜もあったがなんだかんだ楽しかったし、サバイバル能力みたいなものを手に入れることができたような気がする。これが本当の「生活力」だろうか。
ただ何となく公園で髪を雑に洗ったときには周りの人に臭いと言われたので、シャワーだけはちゃんとしといた方がいいと思った。
ここまで読んでくれてありがとうございました。もし良かったら参考にしてみてください。