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9月にアメリカの学校をスムーズにスタートさせるために、知ってもらいたいことーその2ー学校選びに役立つWEBサイト
どの学校に通いますか?
自分の子どもがどの学校に行くかは、日本でだって、アメリカでだって、大問題です。
特にアメリカでは、住む地域によって学校の質が左右されるといいます。その土地にまったく知り合いがいない場合、どうやって学校を選べばいいのでしょうか?
日本から来て、アメリカの治安が極端に悪いところに住むことは、あまりないと思います。多くの日本人は、日本人が前々から住んでいるところを選ぶ傾向にあります。それでも、昨今の円安のあおりで、これまで日本人がいなかったところに住む方もいらっしゃいます。アメリカは、道路1本挟んで向こう側は突然治安が悪くなる、ということもよくあるので、単純に家賃や、電車やバスの駅が近いから、などの理由で選ぶことはできません。
街によって住むところの治安はこのサイトにあるように、調査できる方法があるのでそれを参照していただくとしましょう。ここでは割愛させていただきたいと思います。
学校の評価サイト
上記の、地域の治安評価サイトのように、アメリカ全国の学校(私立、公立両方)を評価するサイトもあります(アメリカは、なんでも点数をつけるのが大好きです)。
さて、代表的なサイトをいくつか挙げてみましょう。
Niche
Great!schools
SchoolDigger
さて、この3つのサイトを比べてみましょう。
ランダムに学校をピックアップしてみました。アメリカ第3位の大都会、シカゴの学校を見てみたいと思います。
注:本当にランダムにシカゴでピックアップしました。私はシカゴのことは全然わかっていないので、的外れなことを言っていたらごめんなさい。
USNews、というサイトで、シカゴのベストエレメンタリースクールランキング、というのを見てみました。
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このランキング1位の学校はこちらです。
Skinner North classical school
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学校のホームページもしっかり作ってあって、楽しそう。
さて、このSkinner North classical schoolの評価は、上記3つのサイトではどうなっているでしょうか?
詳しくみてみましょう!
1) Niche
さて、Nicheのサイトを見てみましょう。
サイトを開き、一番上のFindのページで、学校の名前と、エリアの名前を入れます(例:Find:Skinner North Elementary School、In:Chicago Area/Chicago IL)
もしエリアの名前だけで検索したければ、「K-12 Schools」(小中高校)を入れてみてください。
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検索結果が出ました。
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総合評価は、A マイナスの評価です。1位だけど、Aマイナスか?
Academic(学業面)、Diversity(多様性)、Teachers(先生の質)はそれぞれA評価ですね。
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DiversityについてのA評価の理由は、人種的、家計的に多様な生徒が多くいることを示しています。いろんな肌の色の、国内外出身の、お金持ちから貧困層までの、いろんな家庭のお子さんが来ているイメージです。アメリカでは、この「多様性」をとても重視するので、多様性があればあるほど評価は高くなります。
また、次に見ていただきたいのは、Free or Reduced Lunchの8%という数字です。これは、給食(ランチ)のお金を払うことができなくて、給食代の補助を受けている家庭の割合です。8%という数字ですが、これは少ないな、という印象です。私の今教えている学校は、この数字が50%を超えます。この数字からわかることは、この学校に通う生徒たちは、それほど家計に困窮していないということです。
この数字と、この学区の不動産価格をあわせると、どのような社会階層の子どもたちがこの学校に来ているか分かるでしょう。
また、他に注目したいのは、Pollsの頭のところで、100%の保護者と生徒たちが、この学校はcompetitive(競争が激しい)だ、としています。つまり、勉強はハードそうだな、とわかります。まず最初に、宿題がたくさん出るかな?ということが頭をよぎります。また、学校外のアカデミックな活動に参加している生徒も多いかな、ということも考えられます。しかし、100%ということは、よほど競争が激しいのかー・・・のんびりした学校生活を送りたい生徒さんにはちょっと要注意かもしれません。
2) Great!schools
つぎに、Great!schoolsの評価をみてみましょう。
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このGreatSchoolsの評価は、オール10点中10点という素晴らしいスコアですね。Test Score(テストの成績)、Student Progress(生徒の進捗)、Equity(公平性)もオール満点です。これらをひとつひとつ見ていってみましょう。
同じページの下のほうに、詳しい解説が出ています。
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学校で実施するテスト(主に、standardized test:全州統一模試のようなもの:だいたい数学と英語のテストであることが多い)のスコアは、このイリノイ州の平均のはるか上のようです。とてもレベルの高い学校であることがわかります。
しかし、「Parent Tip」のところに注意書きがあります。
『高成績を収める学校でも、生徒グループ間に格差が存在する場合があります。この学校がすべての生徒にどのように対応しているかを理解するために、以下の「Equity: 公平性」セクションの情報を確認してください。お子様の学習状況を把握し、自宅でどのようにサポートできるかを理解しましょう。』(この「Equity: 公平性」については、下で説明します)
確かに、これから入学するあなたのお子さんは、まだ英語ができない生徒さんです。このように学習面でハンデがあると考えられる場合、暗に保護者の自宅でのサポートが大切ということを示唆しているのだな、とわかります。
次に「Student Progress」をみてみましょう。
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『昨年の成績から見て、この学校の生徒たちは州内の同様の生徒たちと比較して、はるかに大きな学術的進歩を遂げています。
高い進歩と高いテストスコアは、生徒たちが強い学術的スキルを持ち、学校が他の多くの学校と比較して学術的成長を非常にうまく支援していることを意味します。』
ということなので、やはりこの学校はレベルの高い学校だということがいえるでしょう。
次に「Equity」をみてみましょう。
Equityというのは「公平性」という日本語になりますが、例えば、低所得の家庭の子どもと、それ以外の子どもに平等に学習の機会が与えられているか?ということを示します。
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低所得の家庭の子どもたちも、それ以外の子どもたちと同じくらいのテストの点が取れることを示しています。
「ふーん」と思われましたか?
これはなかなかすごいことで、普通は低所得の家庭の子どもたちのテストスコアは、そうでない家庭の子どもたちのものより明らかに低いです。
例えば、下記はニューヨークタイムスの調査結果です。高校のSATという大学入試に必要なテストの点数分布なのですが、右に行くに従って、親の収入は高くなりますが、それに比例して点数も上がっているのがわかります。
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2023/10/23のニューヨークタイムスより
なので、私の教えている学校でも、下のように低所得の子どもたちのテストの点数は低くなります。
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さて、ここで何がわかるかというと、どれほどマイノリティ、ここでは低所得の子どもたちですが、に手厚いサポートがあるか、ということです。
例えば、成績のふるわない子どもたちに、放課後特別授業・補習をしてくれる、または補助の先生の数が多くて、授業中にわからない時に助けてくれる、などが考えられます。
残念ながら、ELの子どもたちへのサポートがどれくらいかは、わからないのですが、これだけすべての子どもたちのテストスコアが良いのであれば、ELの子どもたちへのサポートも充実しているとも、考えられます。
逆に、「まったくELの子どもたちがいなくて、点数に反映されていない」という可能性も考えられます。あるいは「ELの子どもたちは同じテストを受けさせてもらっていない」という可能性もゼロではありません。
それくらい、この数字は驚異的なので、教師としても何でだろう?と思ってしまいます。
3) SchoolDigger
最後に、SchoolDiggerです。
このサイトはまず最初に学校の説明が文章で長々と書いてあります。
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Skinner North Elementary Schoolは、イリノイ州シカゴにある高く評価されている公立学校で、幼稚園から8年生までの490人の生徒が通っています。この素晴らしい学校は、過去数年間にわたりSchoolDiggerから5つ星の評価を受け、州内のトップの小学校の一つとして一貫してランクインしています。・・・以下略。
その下にDetailが書いてあります。
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ここでびっくりするのが、Racial breakdownのところです。なんと生徒の半分がアジア人です。
ここでハタと気づきました。
この学校、やっぱり普通じゃない・・・。
4) 脱線します
で、脱線しますが、この学校を調べたところ、Selective Enrollment Elementary Schoolsの一つであることがわかりました。
このシカゴ独特のシステムは、学業に優れた生徒向けの挑戦的なカリキュラムを提供することを目的とし、入学するには特定の学業基準を満たす必要があり、テストが必要です。
勉強不足で知りませんでした。ごめんなさい。
公立といいつつ、私立みたいな選抜システム・教育システムを持っていました。
だから、貧困家庭の子どもたちのテストの点数も高いのに納得です。選抜を受けて入ってきた優秀な子どもたちなのでしょう。
そして、100%competitiveなのもうなずけます。
私の住んでいる州では、私立以外はこういったシステムはなく、完全に居住地で学区が決まり、そこにある学校に通います。
アメリカは州ごとにまったく教育システムが異なります。
日本でよく聞くギフテッドという天才児教育のシステムを、私の住んでいる州では廃止しました。
これは、Equityの観点から公平性に欠けるということでした。つまり、マイノリティや低所得層の子どもたちが、このプログラムに参加できる割合が少ないという事実、またこのギフテッド教育に割く予算を、他の教育プログラムに再分配した方が、公平なのではないか、という観点からです。
すみません、すっかり脱線しました。
5)学校評価サイトから考えてみること
こういった、学校ごとのデータをみていると、その学校がどういう環境なのか、だんだん分かってきます。
半分アジア人の生徒ということは、おそらくですが、中国人がメインになるでしょう。次にインド人、韓国人あたりが来るかもしれません。日本人もいるかもしれませんが、恐らく少数派でしょう。中国人は教育熱心な家庭が非常に多いです。
自分の子どもを熾烈な競争の環境に放り込むか。そのような環境下で、どんな友達ができるのか、先生はどんな人たちなのか、勉強の進み具合はどんなものなのか。そもそも、選抜テストに合格するのか。どうやって勉強したら良いのか。
そういう環境におかれた自分のお子さんを想像してみて、楽しんでやっていけそうか、それとも大変な思いをするか。それをどれだけ親の立場で手助けできそうか。
この学校評価サイトをみて、候補の学校について考えてみてください。
長くなりましたので、学校の選び方は、また次回に続きます!