「とらきちのトラキッチン」開発者インタビュー
Nintendo Switchで2021年5月発売の「とらきちのトラキッチン」。この記事では、ゲームデザインとディレクション、UIアニメーションを担当したオインクゲームズの新藤へのインタビューをまとめました。
新藤愛大 / YOSHIHIRO SHINDO
プログラマー・テクニカルアーティスト。オインクゲームズの全てのデジタルゲームに携わる。「とらきちのトラキッチン」では、開発だけでなく、企画立案・ゲームデザイン・ディレクションも担当。
「プログラミング」×「あみだくじ」のひらめき。
-「とらきちのトラキッチン」は、どのように生まれたのでしょう?
もともとオインクゲームズで、「子ども向けのプログラミング的思考を鍛えるゲーム」を考えるというプロジェクトがありました。2人の子どもをもつプログラマーとして、子どもがプログラミングを学ぶときに何を学んでほしいかという思いは、以前からもやもやとありました。世の中にプログラミングパズルみたいなものはいくつかありますが、いまいちモチベーションがわかなかったり、覚えなきゃいけないことが多かったりして、とっつきにくいんですよね。
アイデア出しで、「りんご工場」というのが出ていて。工場のレーンがあって、りんごが流れてきて、分岐させたり足したり引いたりするという内容でした。ただ、そのままだと、やはり動きがイメージしづらく、目的も少しわかりにくい・・・。そのとき、あみだくじと組み合わせるというのを思いつきました。
上から下へ、お皿がコンベアの上を流れてくる、
あみだくじのようなステージ。
-「プログラミング」と「あみだくじ」、これまでにない組み合わせですよね。
あみだくじにすることで、ビジュアルでわかりやすくなりました。あみだくじの動きはみなさんご存知なので、説明のハードルもグッと下がりました。プログラミングって、命令が並んでいるだけだとどういう動きをするのか想像しにくくて、動かしてみて初めてわかる部分が大きいのです。しかし、「とらきちのトラキッチン」では、見たままの動きをしてくれます。小学一年生でもすぐに理解できるものになりました。
それでいて、「簡単すぎない」というのも大きな特徴です。最初は本当にあみだくじと同じ動きをしますが、分岐や計算を組み合わせることで、想像以上に色々な動きをさせることが出来ます。頭の中で動きをシミュレーションしてみて、実際に動かしてみた時に、「あっ、思ってたのと違う動きになった!」という経験が、プログラミングではとても大事です。このバランスが非常によく出来ていると思います。パズルとしても面白いものになりました。
作者さえ知らない、解き方のバリエーション。
テストプレイしてみると、人によって解き方が違ったりして。こんな解き方があったんだ、パーツがもっと少なくできるんだ、という驚きが次々と生まれました。そこで、このパズルの「深み」みたいなものを感じ、かなり手応えを覚えました。問題は全て自分が制作したのですが、想定を超える解答がいくつも発見されました(笑)。
例えば次のステージを小学一年生の娘にテストプレイしてもらったことがあります。自分の想定は、9パーツの解答だったのですが、気が付くと8パーツの解答を作り出されていて、びっくりしました(笑)。皆さんもぜひチャレンジしてみてください。
現実の世界では、問題に対する解き方が、複数存在することがほとんどです。唯一の正解というのは存在せず、何を重要視するのかによって、ベストな答えが変わってきます。プログラミングでは特にそうです。そういうことが体験できるように、問題を構成しました。中には、パーツ数の少なさを目指すのではなく、お皿の移動回数を少なくすることを目指すステージもあったりします。
可愛さが、トライアンドエラーを楽しくする。
-可愛いキャクターや世界観も、話題になっていますね。
プロトタイプを遊んでいて、実行中のプログラムを眺めている時間が長いので、そこがビジュアル的に面白くないと、ゲームとしては興味が持続しないだろうなと思っていました。そこに出水田さん・Jonさんのアートが入って、「いつまでも眺めてられる」ものに生まれ変わりました。アートの力は偉大です。
「お寿司」というスキンも非常に良かったです。お皿の存在や、注文通りに届けるという目的など、全てがうまくハマっていて、説明がほとんど不要になりました。魔法の薬を作るなど、ファンタジー系のスキンのアイデアもあったのですが、やはり寿司が強かったです。
可愛いキャラクターたち。詳しくはキャラクター紹介で!
UIの工夫として、失敗したときにあまりネガティブな印象にならないようにすることを、強く意識しています。なぜなら、一度失敗するところこそスタートラインだからです。現実のプログラミングも、最初からうまく動くことはほぼありません。いきなり正解を目指すのではなく、考えて、試してみて、修正していく。このサイクルがとても大事です。そういうのが当たり前で、そういう力を育んでほしいという思いがありました。なので、気軽に「もう一回」が出来るUIを目指しました。
-遊んでいるうちに「プログラミング的思考」が身についちゃうんですね。
元々の着想がそうだったので、「プログラミング的思考」はかなり意識したルールになっています。これまでにも出た通り、「シミュレーション」や「複数の正解」、「トライ&エラー」など、プログラミングとして大事な要素が体験できるようにしました。・・・とは言ったものの、最終的に「パズルゲーム」という形でまとめることになったので、「パズルとしての面白さ」をかなり意識した構成になっています。パズル特有の、ひらめきであったり、そうすればいいのか!という快感がたくさん得られるようにしました。
-遊んでくれる人にメッセージをお願いします。
「とらきちのトラキッチン」は、かなりハードルが低く、誰にでもオススメできるパズルゲームに仕上がったと思います。そして、とにかく、カワイイ!
込めた想いは色々とありますが、遊ぶときは難しいことは忘れて、かわいいキャラクターとパズルを楽しんで頂ければと思います。
全部で60ステージありますが、全てのステージで、新しいコンセプトや、発見があるように意識して問題を制作しました。最後まで飽きずに楽しんでいただけると思います。途中、難しいステージもあると思いますが、最後にはちょっとしたご褒美もあるので、ぜひ最後のワールドまで遊んでみてください。
小学生から大人まで、全ての人に、自信を持ってオススメできる作品です。
◆アナログで9ステージを遊べる「とらトラ遊べるポストカードセット」の無料配布もしています!(送料320円・おひとりさま3点まで・なくなり次第終了)