涼しい夏の夜は妹が欲しくなる
妹が欲しい。
確か小学校低学年ぐらいから兄弟に憧れていた。
厳密には妹が欲しかった。
きょうだいを予測変換したときにまず最初に兄弟が出てくるのが腹立たしいほどに
兄妹で出てこいよ。
この前知り合いの作家さんに僕が妹が欲しい件について話を聞いてもらった。
その人はいつも僕が『なぜ妹が欲しいのか』という事について真剣に話し合ってくれる。
僕はカウンセリングって呼んでる。
その日も3時間ぐらい妹の話をした末に「お前は絆が欲しくてたまらないんだな」という結論に至った。
やっぱりカウンセリングなだけあって心にすっと落とし込まれて、意味わからないけど謎の満足感があった。
妹が欲しいと各所で言っているおかげで、最近では「まあお前は妹が欲しいもんな」と言われることが増えてきたのだけど
実はこれを言われるたびにどこか嬉しい気持ちになる。
本来、妹が欲しいと思っていても、結局大人になってしまうともうどうあがいても無理で
漫画を読んだりアニメをみたり自分で想像したりぐらいしかこの発作を和らげる方法はないんだけど
「妹が欲しい」と言い続けることで、本来僕の人生に絶対に存在することがなかった妹が少しだけ、ほんのわずかでも存在しているような気持ちになるからだ。
だって、本当は妹がいなくても別に『妹がいない奴』という認識にはならない。
メガネかけてる奴とか
身長高い奴とか
歌がうまい奴とか
スカして女に興味ないですみたいな顔して本当はバリバリモテたい奴とか
そんな感じの認識になることはあっても『妹がいない奴』とはならない
それが本当の意味での妹がいない奴であって
わざわざ頭に『妹がいない』とつけられるということは、本当に『妹がいない奴』よりは『妹がいる』状態に近づけている気がするからだ。
いや近づいている確実に
言葉には言霊が宿るとかよく言うけど
それ以上に頭の中にあるものを外側に出した時点でそれはもうクリエイトだ。
僕は昔から架空の妹がいる設定を頭の中に広げていた。
今ではそれも固まってきて
ゆうか、ゆめ、うたの三姉妹がいることになっている。
ゆうかが長女でゆめとうたが双子の次女。
僕がその三姉妹のお兄ちゃん。
それもただ頭の中にあるだけではなく、口に出している。今みたいに。
そうすることで最近では観てくれている人に冗談でも「ゆうかちゃん元気ですか?」とか「ゆめちゃんとうたちゃんって似てるんですか?」とか聞いてもらえる。
その時点で、僕のことを何も知らない。完全に初見の人から見たら、僕はもうお兄ちゃんだ。
それだけじゃなく、僕とゆうかとゆめとうたが出てくる漫画を描いてくれる人まで現れた。
口にすることで僕は着実にお兄ちゃんに近づけているのだ。
頭の中から出した成果だと思っている。
まだ生まれてから28年しか経っていないけど、ここまでお兄ちゃんになれた。
「妹が欲しい」と思ってから20年ぐらいでここまでお兄ちゃんになれた。
だったらこれから先もっと口に出していけばもっとお兄ちゃんになれる。
楽しみで仕方がない。
だからみんなも、叶えたい夢は口に出していこう。
出さないより出した方が勝率はあがる。
びびんなくて良いよ。大丈夫。
一人っ子でもお兄ちゃんになれるんだ。
神様って奴がいたとして、そいつが絶対に無理なルールを俺につきつけてきたって構うもんか
ここまでお兄ちゃんになれたんだ。
もっとお兄ちゃんになってやる。
散々奪われたからな。ここからは全部奪い返してやるよ。
失った″絆″ってヤツを
一人っ子の逆襲といこうじゃないか。
人間を舐めるなよ。
最後に、たまにDMなどで『私が妹になりますよ』って言ってくる人がいて、再三注意していますが
やめてください。
理由はあなたは妹にはなれないからです。
こっちは遊びでやってないんで
『妹になりますよ』
「やったー!お願いします!」
で兄弟になれるんだったら、ハナからこんなに渇望してないんで
そんな簡単なものだったら、僕知り合いの先輩の作家さんに3時間妹の話しないんで
幼い頃の記憶の共有。血がつながっている。
この二つをどうやってもクリア出来ないじゃないですか。
何の努力もせずに、プロセスも踏まずに結果だけ得ることなんて出来ないんですよ。
あなたがやってるのは就活もせずにあまつさえ大学にも行かずに、いや高校にも中学にも通わずに
行きたい会社に電話して『そちらで働きますよー』って言ってるのと一緒です。
それよりタチが悪いです。
これを読んだ人はそんなふざけたDMを送ってこないでください。
兄弟ってそれぐらい固い″絆″で結ばれているので
よろしくお願いします。
きょうだいの予測変換なんとかしろ。
ありがとうございました。
面白く無ければいりません!!!!