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TRPG探索者ファイル②「トーマス・ブラウン」

こんにちは。おいもとです。
今回は半年ぶりのTRPG探索者ファイルです。(①はこちら↓)



前回と同じく、探索者を生みだす際に記載したキャラ背景を公開します。シナリオ通過前に記載しているものなので、ネタバレ要素はありません。

今回遊んだシナリオは餐題奇劇様がリリースされている『同居人』です。(R-18シナリオですので、遊ぶ際にはBOOTH概要に記載されている注意事項の確認をお願いします)



以下、BOOTHに記載されている本作品のあらすじです。

平穏な日常を過ごす探索者の下に、一件の依頼が入る。
「誘拐された娘を助けてほしい。」
そこから、すべてが崩れ始めるのだった。
【_____植えつけ、宿し、孕め。狂気を______】

クトゥルフ神話TRPGシナリオ「同居人」

もう不穏さしかないですね。
今回このシナリオに挑んだ探索者はトーマス・ブラウン探偵です。ブラウン先生はどんな背景を持って生まれたのか、その人生の一幕をどうぞお楽しみください。



◇◇◇


立ち絵:Picrew「巨漢親父メーカー」


わしはトーマス・ブラウン。日本で私立探偵をしているものだ。
英国人であるわしがなぜ極東の島国で探偵業を営んでいるか、疑問に思う方も多いだろう。

まあ、一言でまとめるのであれば「食っていく」ためだ。
というのも、わしは学校の教育というのがどうにも退屈で、所属していたスクールから逃げ出すように中退したのだよ。わしの家庭は伝統ある家柄でなかなか厳しい家庭でな。わしのようなはぐれものは一族の目の敵にされ、ついには勘当されたというわけだ。

それからというもの、どうにか日銭を稼がないといけなくなったわしは働き口を探した。そこで目をつけたのが探偵事務所だった、というわけだ。幸い、わしは幼少期から人間観察(というと少々大袈裟ではあるがな)が好きだったし、頭もなかなかキレるほうだった。事務所のボスからも気に入られて、たくさんの貴重な経験をさせてもらったよ。

数年の実務経験を経たわしは、独立して自分の探偵事務所を構えたいという気持ちが生じてきた。そう時間を経ることなく勤めていた事務所を退所し、ロンドンにてブラウン探偵事務所を開業したよ。だが、これは大失敗だった。わしは生まれも育ちもロンドン。ロンドンといえば某名探偵、シャーロックホームズの聖地だ。探偵業を営んでいるものも多く、競合が非常に多かったのだ。まあ、わしはこの通り見た目がいかついこともあり、なかなか顧客に恵まれなかったというわけだ。

このままでは廃業に追い込まれると感じたわしは、意を決して拠点を移すことにした。都会の喧騒にも疲れていたし、国内の田舎に拠点を移そうかと考えていた。そんなある日、わしがいつものように新聞を読んでいると、一風変わった見出しが目に入った。

「その名も『シャーロキアン』!極東の島国でシャーロックホームズが大人気!」

またくだらんゴシップ記事か。このような記事のせいでわしら探偵事務所に観光気分で訪れる客が増えるのだ。
わしは少々癪に感じながら読み飛ばそうとした。

…が、「極東の島国」というのには興味がある。どれ、市場調査も兼ねて少し読んでやるとしよう。

それからというもの、わしはこの極東の島国「日本」に興味を持つようになった。
なにやらこの国の人びとは「秘め事」というものが多いらしい。すべてを口に出さず、相手に「察して」もらう文化がこの現状を作っている、との論文も目にした。

なかなか興味深い。それがわしの率直な感想だった。
英国よりも探偵業が必要とされる土壌であると直感した。
加えて、わし個人としても日本の風土や日本人の精神性に興味があった。我が国の人びとはどうも率直にものを言いすぎる。

そんな出来事から、わしは拠点を日本に移すことを決意した。
知人の勧めで「ブラウン英国探偵事務所」として心機一転、開業することにした。

最初はわざわざ「英国」と入れるのはなんだか気恥ずかしい気もしたが、これが功を奏したか、日本での客足は途絶えなかった。
物珍しさから選んでくれた人もいるだろう。しかして、わしの予想通り日本での探偵業はなかなかやりがいのある仕事だった。

調査対象の情報がなかなか割れないのは当然のことだが、日本では依頼者に話を聞くところから探偵としての技量が問われる。
相手の信頼を得たうえで、話の中から相手の言いたいことをくみ取ってやる必要がある。
わしはこれになかなかのやりがいを感じた。英国での人間観察は、最初から答えが示されているクイズのようなものだった。なんせすぐに自分のことを述べてくるのだからな。

だが、日本での人間観察はまた違う。相手は自分の内面を見透かされまいと必死で隠してくるのだ。
依頼者は大切なクライアントだが、依頼者の素性について知ることもわしが探偵業をするうえでの楽しみになっていた。

そんなある日、探偵事務所には似つかわしくない少年が私の事務所を訪れた。
名前を尋ねると、都築(つづき)くんというらしい。

都築くんのような者が探偵に依頼に来るなんて珍しい。わしは不思議に思いつつ彼の話に耳を傾けた。

話によると、どうやら彼の家族が行方不明になっているらしい。
そんなわけで、わしがこの捜査に協力することになった。

ここでは事件の詳細は省くが、結果、彼は家族を失うこととなった。さすがのわしも不憫に思い、天涯孤独となった彼をしばらくのあいだ探偵事務所で養ってやることにした。

幸い、事務所には空き部屋もあったし、寝食には困らない環境だった。ひとつ問題だったのは、彼がわしの仕事に興味津々だったことだ。

彼は日中も事務所にいるため、わしが仕事をしている姿を眺めていた。薄々嫌な予感はしていたが、ついにその日はきてしまった。


「ブラウン先生、僕も探偵になりたい!」


わしは頭を抱えた。なんでったってこんな若造を助手に迎えなければいけないのだ。
しかし、彼のまなざしは極めて真剣だった。自身が体験した探偵業の苦労話を散々聞かせても、その眼の輝きは日に日に増すばかりだった。

わしは根負けして彼を助手にすることを許可した。
あれはもう何年前のことになるだろうか。

彼は今も変わることなく探偵業への飽くなき興味を示し、いつもわしの仕事に同伴している。
気づけばわしも54歳。異国の地で半ば天涯孤独であったわしがこうして日々を過ごしているのは、もしかしたら彼のおかげなのかもしれないな――。



◇◇◇



【補足】
周囲からはブラウンさん、ブラウン先生と呼ばれることが多い。

※背景にはフィクションが含まれています


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