キラキラしてないマネージャーの話


#部活の思い出

高校生の時バレー部のマネージャーをやっていた。きっかけは漫画「ハイキュー!」。キラキラと汗が混じった青春に憧れるとともにバレーボールにも興味を持った。ところが球技とは縁のない運動音痴だった私は選手として入っても途中でやめる未来が見える。だからマネージャーとして入部した。

活動自体はずっと楽しかった。ドリンクを作り、スコアを書き、ボールを渡したり拾ったりした。何度も何度もスパイクと激突したけど楽しかった。朝早く起きて他の部活と氷を奪い合った。最初は目で追うことすら苦戦していたのに段々余裕を持ってスコアをかけるようになった。

やっていくうちにもっと役に立ちたくなって、コーチや監督がいないときの代わりになるためにトスやサーブが打てるようにした。前にも書いたが私は本当に本当に球技ができない、ボールを蹴ったら真横に飛ぶかボールにつまずいて転んじゃうとかそのレベルだ。力もないから投げるのだって一苦労どころか重労働。でも毎日毎日練習して、旅行先でもボール(自分で買った)を持っていて母相手にサーブを打ちまくった。真っ直ぐ打てるようになったときはめちゃめちゃ嬉しくて、実際に部活でトスを出して褒められたときは帰りの電車でニヤニヤが止まらなかった。ほかにもテーピングを覚えたくて講習に行ったり、夜な夜な自分の足をグルグル巻きにした。余談だが毛がめっちゃ抜けてツルツルの足になった。


そんな私にも同期がいた。同い年のすっごく美人な女の子。

私と同じくバレー未経験者だったが、彼女には私にはない圧倒的な才能があった。


コミュニケーション能力


私は、今でもマネージャーに必要なのは運動神経でも気が利くことでも容姿でもなくてこれだと思っている。逆に、これがあったら他なんかいらない。

マネージャーはたくさん人と接す。部員・監督・コーチはもちろん練習相手の高校の顧問の先生。OBOG。他にも場合に応じて増えていく。しかもただ業務連絡を取れば言い訳ではなく、会話が必要だ。

今日暑いね。元気?体調大丈夫?テストどうだった?赤点撮っちゃだめだよ!てか最近ちょっと太ったでしょ(笑)

そうやって、会話を重ねて信頼関係を築いていく。

同期は本当に話すのが上手い。先輩後輩関係なく軽口を叩けるし、流行にも詳しいから話が盛り上がる。自分の好きなものは好き!とちゃんと言えて、人におすすめできたりする。あとすごく可愛いから、きっと話している方もより楽しい。


そして悲しいことに私は人と話すことが苦手だった。もっと詳細に言えば面白い話が一切できないツマラナイやつだった。話が硬いのだ。元気で明るい子に「体調大丈夫?」と聞かれれば「あー最近なんか体が重いんだよね」とか「マジ無理。最近ダルい」とか冗談だとしても自分の話もしてもらえる。
でも私みたいに真面目でガチガチのやつが聞くと気を使われて大丈夫だよ、としか言ってもらえない。それでも最後の方にはちゃんと信頼してもらえて(多分)自分の話をしてもらえるようになったが同期は入っても1.2ヶ月でこうなっていたので私とは雲泥の差がある。

努力はしたと思う。予備校終わりにネットでお笑いを調べたり流行りのものを学んだりした。部員が好きだと言っていたバラエティ番組を見て、内容をメモした。話の内容になるように。みんなと話せるように。

でもいざ話すとなると私の口から出る言葉は感想文みたいだった。「私もそれを見ました。〜がすごく面白かったです。また見ようかなと思います。」

全然可愛くなくて気持ちの伝わらない言葉。もはや会話にもなっていなくて、当然話は盛り上がらない。何が悪いのかはわかるのにどう直せばいいのか分からない、たとえ改善点を頭の中でシュミレーションしたとしても実際には上手くいかなくて辛くて辛くてたまらなかった。話せば話すほど、話すのが怖くなっていく。

だって、わからないよ。

私の言葉で誰か傷つけたらどうしようって怖いんだもん。私の感想なんか誰も求めてないもん。でも相手に話を振り過ぎたら自分の意見がないやつって思われそうだし。実際に言われたし。だったら話さないほうがいいんじゃないかって気持ちになるんだよ。でもそういうわけにはいかないんだもん。

私がどんなに他のことを頑張っても、部員と仲良くなって仲間の和に入っていくのは私じゃない。

ずっとずっと蚊帳の外みたいだった。部活の練習場所が変わったとき誰も教えてくれない。私以外は同じクラスだったから(文系と理系、国立と私立受験でクラスが別れていた)その日の学校の話を聞いてもなんの話かわかんない。知らない人の話で盛り上がって知らない先生にモノマネで笑って。通知表には「バレーボール部所属」って書いてあるのに、所属した気持ちになんか全然なれなかった。私だけ同じ学校の違うバレー部にいるみたいで、だからずっと見えないガラス越しに彼らと接してた。うまく話せない私が悪いのに、うまく話せる同期にずっと嫉妬してるのもかっこ悪くて死にそうだった。

そして、その関係はあまり変わることなく、私は所属していたらしいバレー部を引退した。


とっくに終わった話なのに、今でもたまに高校のときの夢を見る。みんなの輪に入って、私の言葉でみんなが笑う夢。みんなに信頼されて相談事される夢。過去の私が実際にやってた形だけのサポートじゃなくて、本当に心から支えられている夢。

私も仲良くなりたかったな。馴れ合いたいわけじゃないけど、でもやっぱりちゃんと所属したかったな。


ちょっと苦くて悲しい、私の楽しい部活の思い出です。

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