「ありのまま恋愛」(週刊少年マガジン原作大賞/企画書部門応募作品)

・キャッチコピー

周りが〝変わり者〟と断じても、それでも俺(私)達はありのままの自分で恋がしたい。

(40字/50字以内)

・あらすじ

生まれてこのかた自分を曲げたことがない彩瀬透真。皆と異なる考え方をするが故に、イジメや距離を置かれることもあったが、後悔はなかった。一度きりの人生。ありのままの自分でいられることの方が大事だったから。
しかし、大学生となって早一年。中々、素の自分を受け止めてくれる人に出会えずにいた。自分を変える必要性を感じていたところ、幼馴染の女子に飲みに誘われる。
愚痴を聞いてもらう中、自分らしくあろうとする幼馴染の姿に勇気づけられる透真。親友の恋を応援する幼馴染は新たな出会いの場として自分が働くカフェへと透真を誘うが……そこは、美男美女(変わり者)の巣窟だった⁉
癖のある男女が繰り広げる、濃密ラブコメディ開幕!

(300字/300字以内)

・第1話のストーリー

少し前、社会学の講義でこんな質問をされた。

――世間一般における普通の人とは?
一.他人に親切にする人
二.一流企業に就職する人
三.周りの空気を読む人

馬鹿馬鹿しい。そんなの誰が決めた、と思った。
答えは人それぞれ。だが大抵の人が周りに合わせて生きている。
その生き方は、俺には窮屈すぎる。
「おい……」
そんな俺、彩瀬透真は周囲からは〝変人〟に見えるらしい。皆の〝普通〟と違う俺は昔からイジメに遭ったり距離を置かれたりもした。かと言って、後悔も自分を曲げたいと思ったこともない。
ただ俺は、俺がありのままでいられる友人と……欲を言えば、恋人がいればそれでいい。
と思ってたんだが――、

「おい彩瀬!」
怒声に、意識が浮上する。
騒がしい店内。左に友人とその知人のイケメン。テーブルを挟んだ正面には笑う女子三人。
「すまん、ボーっとしてた。何の話だっけ?」
「もう、合コン中だよ彩瀬くん。恋人にはどんな条件を求めるかって話。職業や収入とか」
「んー。特に何も」
「え、何も?」
聞いてきたギャルが驚く。
「もう大学生だし現実的になるのも分かるけどさ。その人自身の魅力とは関係ない部分を求める時点で、それはもう恋愛じゃないと思うんだ」
皆がポカンする。まぁいつも通りだ。
「あえて条件を出すなら……俺の趣味や考え方、ありのままの俺を受け止めてくれる人だな」
「プッ、そんな人いないよ。それに、趣味がゲームだっけ? だいたい、女子はそんな子供っぽい遊びしないよ」
イケメンが俺の理想を否定する。
「えー、私バケ森とかしてるよ?」
「私はチビモン好きー」
「え……あ、いや! ゲーム面白いよね⁉ ウン!」
女子達の発言に、イケメンが慌てる。女子がジト目。
「それで、彩瀬くんのオススメは?」
「そうだなぁ、今はスダチソフトのエロゲが激熱だ!」
「え、エロゲ?」
「笑いあり感動あり、エロあ――モゴゴッ⁉」
突然、口を手で塞がれる。
「っぷは⁉ オイ殺す気か!」
「お前バカか‼ 彼女作る気ないだろ!」
焦る友人。ギャルはドン引き、残りの女子は苦笑していた。
「君さぁ、本当に好きでも素の自分は隠さなきゃ。彼女欲しいならさぁ」
イケメンに蔑まれ、カチンとくる。
「は? 自分隠して彼女作ろうとか馬鹿じゃねえの」
「ばっ……え⁉」
「ま、本性隠してる奴にはわからんだろうが――」
「バカ撤収‼ お騒がせしましたぁ~っ‼」
「ちょ⁉」
ドリンク代を置いた友人に拉致され、俺は居酒屋から退場した。

(998/1000字以内)

・第2話以降用ストーリー

「お前、なんでもっと普通にできないんだ!」
夜中。店から離れた街中で友人に怒鳴られた。周囲の人が一瞬ギョッとする。
「これが俺なりの普通なんだが」
友人が深く嘆息。
「最近大学じゃ、一緒にいる俺まで変人扱いされる。最初は面白い奴だと思ってた、けどもう限界だっ」
「お、おい。どうしたんだよ?」
意を決し踵を返す友人。そいつは振り返らず言った。
「もう俺とお前は友達じゃない。大学でも話しかけてくるな」
「え? あれ⁉ 俺、間違ってるか⁉」
「いや、むしろ正しい生き方だろうな」
「だったら!」
「でもそれは、あくまで理想だ! 社会全体から見れば、お前は間違ってる!」
「ッ……」
俺は酷くショックを受けた。
「彼女が欲しいなら、もっと賢く生きるんだな」
忠告され、理解者の一人だった友人が去った。
「お前も、か……」
街の喧騒の中、歩道で立ち尽くす。
俺の傍を、学生達や仕事帰りのサラリーマンが行き交う。まるで、俺だけが孤立したかのようで、酷く胸が痛んだ。
「普通ってなんだよ……周りと違うのが、そんなにいけないのか?」
一度きりの人生。自分を殺すくらいなら、ありのままの自分でいる方が大事と思って生きてきた。
その結果がこれか。大学二年生になっても恋人はいないし友達は減る。俺を本当に理解してくれたのは家族と幼馴染、その両親だけだ。
「本当にこのままで良いのか……? こんな痛みを抱え続けなきゃならないなら、俺はっ――」
プルルルル!
ズボンのポケットが震えた。スマホを取り出し着信画面に表示された名前を見て、俺は縋るように電話に出た。
『透真、今暇ー?』
陽気な声が耳に響く。胸の痛みが少し和らぎ、自虐気味に笑う。
「たった今友達が一人減って、合コンも途中棄権したから暇だぞ」
『なら一緒に飲まない? 場所はいつも店だからー!』
即、電話が切れる。
通話相手は俺の幼馴染で親友の女、立花朝陽だった――。

「はい乾杯!」
行きつけの居酒屋『ばぶりっ酒』に到着。テーブル席にいた朝陽と乾杯し、タピオカ入りビールを呷る。
「ぷっはぁ! 美味しいぃぃ!」
既に酔っているのか、屈託ない笑顔で叫ぶ朝陽。周りの男達の視線が朝陽に集中している。
俺は家族ぐるみの付き合いで昔からマヒしてるが、両親曰く「どれだけリセマラしても出ないSSR級の美人」らしい。長い黒髪に綺麗系の整った顔立ち。おまけにスタイルも抜群。
周りが気にするのも分かるが、家の中を――それも童貞の俺の目の前を、裸で平気でうろつくアホとは夢にも思うまい。
「それで、一体何があったのよ」
「いつも通りだ。今日は、普通じゃない俺といたら変人扱いされるからって友達に縁まで切られた」
「理解されないって、地味にショックよねー」
朝陽が苦笑してつまみをパクつく。
「でもあんた。中高と色んな奴に目を付けられてたけど、逆に撃退してた程じゃん。そんなに気にすること?」
「大学二年にもなって、俺を理解してくれる彼女ができないどころか、周りは俺を叩く敵だらけ。っ、もうお終いだ……」
「もう、泣かないの。私はあんたの味方よ。ありのままのあんたを好きになる娘もきっと現れるわよ」
「朝陽……ちゅき」
「はいはい」
朝陽に頭を撫でられ心が安らぐ。
「というか、出会いなら私が――」
「やあ、相席良いかな?」
朝陽が何か言い掛けたところで、イケメンが割り込んできた。
「取り込み中」
「僕は運命を感じたんだ、君という一輪の花にね」
「シネ」
男は許可なく俺の隣に座り、朝陽の手を握る。朝陽は即座に手を振り払う。
「つれないね。そんな冴えない男といるより、僕と飲んだ方が遥かに有意義――」
バチン‼
「へ?」
朝陽が男の顔をぶっ叩いた音だった。店内の喧騒が止む。
「お生憎様。私はね……私の親友を貶すクソ共は、ゴキブリの次に絶滅させたいのよ‼」
「えっと……そ、そんな下品な言葉、君には似合わないよっ」
「は? これが私なの‼ ケーキよりスルメ好きだし男よりゲームだし、というか自分の時間大事だし無理! クソメンハウス!」
「う、うぅっ……うわぁあああああっマミィィィィ‼」
矢継ぎ早に喋る朝陽に心を折られ、男が泣きながら退散。同時に店内喝采。それに応える朝陽。
「俺の為に、怒ってくれたのか?」
「自分の為でもあるけどねー。誰になんと言われようと、私は今の自分が好き。ついでに、素のあんたもね♪」
「……ふ、っはは」
馬鹿馬鹿しい。
俺以上に素の自分が好きで、自由に生きている朝陽。こいつを見てたら、俺の悩みがちっぽけなものに思えて、妙に笑えた。
「じゃ、話戻そっか。出会いが欲しいなら、私が働くカフェでバイトしない? 今バイトしてないでしょ」
「あ、ああ。てか、なんで俺?」
「丁度、接客と料理もできる人を探しててね。透真なら即戦力間違いなし。更に、あんたが浮くような心配はございませーん」
朝陽がカバンから名刺を取り出し俺の前に差し出す。
「コンセプトカフェ『リバティ』? 素の自分を解放できる空間を提供します……?」
意味が分からん。あ、裏に地図が。
「絶対あんたも気に入るから、ね?」
笑顔の朝陽に断言され、俺は信じて名刺を受け取った。

「ここか……」
翌日の午前九時。朝陽に開店前に来いと言われ、名刺片手に店に。見た感じ、小洒落た今時のカフェといった印象だ。
「失礼しまーす」
ドアを開けるとベルが鳴る。
店内は明るい雰囲気。テーブルにカウンター、後ソファまである。
「夜はバーにもなるのか。お……」
テーブル拭きの美少女発見。可愛い制服も着てるし店員だろう。
「あの、バイトの面接に来たんだけど店長は――」
「あぁん⁉ 今テーブル拭いてんだよ! 邪魔すんな‼」
「ひぃっ! まさかの不良系⁉」
罵声にビビる俺。
「ぁっ……ああああっ⁉」
「へ?」
美少女が突然慌てふためく。
「すみませんすみません! 昨日の配信からキャラが抜けてなくて……! まだ開店前なんです許してくだひゃい‼」
「ウンキニシナイデ」
混乱して後ずさると、何かにぶつかる。後ろには爽やかイケメンが。
「アラ、可愛いお尻」
「ピッ⁈」
尻を触られ悪寒が走る。オネェ⁉ 掘られる⁉
「俺遁走!」
「あ、逃げた。一体何事?」
「えと、あのあの、面接に来た人みたいで」
「あぁ、アサヒちゃんの……」

事務所っぽい所に隠れる俺。暗闇の中、背後でカチャカチャと音が鳴る。振り返れば、ゲームするジャージ姿の眼鏡女が。
「チッ、また死んだ! アタシの失敗はお前等の所為だぞッ!」
「ニ、ニート美女⁉」
眼鏡美女がゲーム機を放り出す。と同時に照明が点く。入り口を見れば、したり顔の朝陽と先程の二人が立っていた。
「フッフッフ、洗礼を受けたようね」
「オイここどうなってんだ⁉ 俺と同じ、いや俺以上に変人の巣窟だぞ!」
「そ、だから誰もあんたを否定しない。素の自分のまま出会いを作れる」
「なっ、確かに⁉」
変わり者だらけのこの店なら、出会いの一つくらい……!
「個性は武器。ようこそ、コンセプトカフェ『リバティ』へ。ここは、素の自分のまま接客ができる特殊なカフェです」
微笑む朝陽が店の紹介を。その時、俺は密かに期待したんだ。
ここで過ごす、濃い日常を――。
そしてありのままの俺を受け入れてくれる、恋人との出会いを――。
「フッ、M大学社会学部二年の彩瀬透真だ。皆よろしくな!」
俺の新たな日常の幕開けが今――!
「は? なに受かった気でいるんだ? まずは面接試験だ‼」
――眼鏡美女によって水を差された。
イヤン恥ずかしい‼

(2998/3000字以内)

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