CO2パイプラインがつなぐ未来

エクソンモービルがデンベリーを買収すると発表したため、デンベリーのCO2パイプラインに注目が集まっていると思われる。

以下のnoteでも取り上げましたのでご一読ください。

Energy Intelligenceの記事も紹介。

Exxon Cements CCS Lead With Denbury Deal
(エクソン、デンベリー社との取引でCCSのリードを固める)

このパイプライン資産は、エクソンにとってCCSのバリューチェーンに欠けている主要な部分を埋めるものである。

https://energyintel.com/00000189-511d-d10f-adfd-51bd8bca0000…


目次

1.これでCCUSにとって大事な3要素がそろった

2.デンベリー及びエクソンはCCUSの経験が長く、CO2貯留地も持っている

3.ブルー水素、ブルーアンモニアプロジェクトを後押しするだろう

4.CCUの実現可能性も高まるだろう

5.二酸化炭素を大量に排出する事業者を助けるだろう

6.まとめ

まず、エクソンモービルが手に入れることになるデンベリーのCO2パイプラインをマップで確認する。

出典:Denbury 資料


1.これでCCUSにとって大事な3要素がそろった


【回収(分離)】二酸化炭素がないと始まらない
メキシコ湾近くに産業が集積している
➡二酸化炭素発生源が多い(上のマップ)

【輸送】二酸化炭素を運ぶのが難しい
デンベリーのパイプラインがある(上のマップ)

【貯留】二酸化炭素を埋める場所が必要
メキシコ湾にCCSの適地があるといわれている
#813 メキシコ湾最高の「CCS適地」を「エクソン」が押さえた! | 岩瀬昇のエネルギーブログ (ameblo.jp)


2.デンベリー及びエクソンはCCUSの経験が長く、CO2貯留地も持っている


3.ブルー水素、ブルーアンモニアプロジェクトを後押しするだろう

ブルー水素やブルーアンモニアは天然ガスを改質して水素を製造することから始まる。その工程で生じる二酸化炭素を分離回収貯留することが必要になる。
二酸化炭素を貯留するまでのコストが下がれば、トータルのコストが下がるだろう。

さらにメキシコ湾での製造が有利なのは、シェールガスが近くで産出されることである。


『シェールガス、水素アンモニア製造工場、CCSがパイプラインがつながる。』


三菱商事のプレスリリース
燃料アンモニア製造に向けた米国Denbury(デンベリー)社との二酸化炭素輸送、貯留に係る合意について

三菱商事は、2020年代後半に、米国メキシコ湾岸で年間100万トンの燃料アンモニアを製造し、日本市場へ輸出することを目指します。同アンモニア製造設備から回収される二酸化炭素は年間で最大180万トンを想定し、回収された二酸化炭素は、今回の合意書に基づき、デンバリーによってEOR、もしくは今後同社が開発するCCSにて地下貯留される計画です。

4.CCUの実現可能性も高まるだろう

メタネーションや合成ディーゼル・ガソリンの製造のためには二酸化炭素が必要になるが、再生可能エネルギーや水素がある地域と、二酸化炭素の発生源を近づけないといけない。

CO2パイプラインがあれば、二酸化炭素を輸送することができる。


5.二酸化炭素を大量に排出する事業者を助けるだろう

火力発電所はもとより、製鉄、化学、セメントなどの産業は二酸化炭素を減らすことに苦労している(欧州は外部からの輸入に炭素税をかける)。
これらの産業は水素やアンモニアの利用など様々な解決策を探しているところだが、排ガス等から二酸化炭素を回収してパイプラインに注入するだけで済むなら、水素やアンモニアを使う必要はないのかもしれない。


6.まとめ

上でみてきたように、二酸化炭素の処理に困る企業と二酸化炭素を使いたい企業が、パイプラインによってマッチングされる世界が浮かんでくる。

今でもデンベリーは二酸化炭素の輸送料金を回収しているようだが、エクソンとデンベリーは「CCS as a Service」を提供することで、さらなる収益を得るかもしれない。

https://s201.q4cdn.com/317576541/files/doc_financials/2023/q1/DEN-1Q23-Earnings-Release-FINAL-1.pdf

エクソンモービルとデンベリーのパイプラインとCCUSをこれからもウォッチしていく。


以上


【参考】
米デンバリー、CCUSに関する新規契約と2023年目標値を発表(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

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