男と女 / 短編小説その12
あたなはいつも、私を求める。
私のその日のあったことや、気分、感情を見てみぬふり。
いや、見ようともせずに私を求める。
「かわいいね」
あなたから言われた褒め言葉は
この半年で、これだけ。
何かにつけて
かわいいね。としか言わないあなた。
買ったばかりの服を着ても
髪型を変えても
化粧を落としてすっぴんになっても
あたなはインコのように
「かわいいね」しか言わない。
私は、
そのかわいいねの言葉の中に感情を探す。
声のトーン、
彼の表情、
私の目を見て言っているのか。
私はあなたの
「かわいいね」の5文字を
一つ一つ紐解いていく。
あたなは私に恋してるのかしら?
あなたの「かわいいね」で
感情がこもってるのは
私を求め、抱いてる時。
あたなは私を抱くことで
人間という実感を
体と心で確認してるの?
そこまで深くはない。
私はあなたに抱かれながら
あなたのうしろにある
5文字の言葉を見つめてるの。
そう
男は目で恋をして
女は耳で恋をするから。
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