ピーナッツバターオンザストロベリートースト / 短編小説その2
漫画のように朝食のトーストを咥えながら
自転車で高校に登校するのは世の中で私、鷹見春香ぐらいだろう。
9月10日の秋生まれなのに、名前の漢字に「春」がつく。
特に両親に理由を聞いたことはない。
いつも、自転車でヘッドフォンを付けながら「ELLEGARDEN 」を爆音で聞いている。
この自転車の後部座席に便乗していつも学校まで乗せてやってるのが、幼なじみの岩井孝弘。
私がヘッドフォンで爆音で「ELLEGARDEN 」を聞いてるのに、いつも後ろで喋ってる。孝弘は会話のつもりだろうが、私からしたら独り言もいいところだ。
私と孝弘は、同じ高校に通い始めてもう2年経つ。
2年分の自転車タクシー代は、こいつが社会人になったらボーナスで払ってもらおう。私が勝手に決めてる一つ。
まあ、孝弘を乗せてることで足腰鍛えれて、部活の朝練みたいなもんだし、お互いWINWINだね!!
今朝も太陽が出て、小鳥が鳴いてる。
サザエさんの一場面のような朝だ。
幼なじみとなると、顔や雰囲気で相手の気持ちがわかる部分もある。
今日の孝弘はちょっとおかしい。
いつも能天気で独り言を言ってるやつで、日頃からおかしいが、いつもと違うおかしさがある。
私は特にそこに触れず、今日もヘッドフォンをして孝弘を自転車にのせる。
「春香さ、今年俺ら大学受験やんか」
「…」
「春香は大学にいくんだっけ??」
「俺、頭悪しめっちゃ勉強しないとあかんねんなー。でもいくら勉強しても頭に入らへんねん」
「…」
「なんでだと思う??」
「…」
「春香、お前のことが好きだからだー!!」
こいつは朝から何を言ってるのだろうか。
音が流れてないヘッドフォン越に孝弘の告白を受けた。
こいつは、私がいつも通り音楽聞いてて、聞こえてないと思ってるんだろう。
私はたちこぎをしながら、振り返った。
「秋だけど、それ!! 春だね!!」
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