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【第3期_第3回講義】未来を洞察し、 イノベーションの種を見つける

OITAイノベーターズ・コレジオ第3期の竹下菜々子です。

2021年8月21日(土)にオンラインで第3回講義が開催されました。
今回は株式会社博報堂の根本かおり氏と経済産業省の梶川文博氏を講師に招き、未来洞察と呼ばれるアイデアの創発方法を学びました。その様子をレポートします。

1.講師紹介

根本かおり氏(株式会社博報堂)
広告づくりの現場で自動車、化粧品、家庭用品など多岐に渡る業界のマーケティングやブランディングに携わる。その経験を活かし、フィールドを未来の生活者発想に軸足を置いた事業アイデア開発、プラットフォームづくりにうつして活動中。
今回は、未来洞察の手法を受講生に伝授していただく。

梶川文博氏(経済産業省)
経済産業省入省後、中小企業金融、IT政策、経済成長戦略の策定、人材育成・雇用政策、ヘルスケア産業育成、マクロ経済の調査分析等を様々な分野を担当。環境と経済成長の両立のための施策に携わる。
今回は気候変動をテーマに世界の動向を解説していただく。

2.未来洞察とは

昨今、新型コロナウイルスにより、業務のリモート化や大型イベントの中止など想定し得なかった現実が次々起こっている。このような不透明・不確実が前提となるこれからの時代において、想定できる未来だけでなく、非連続な未来についても検討することが重要とされる。その上で多角的な生活者視点のアプローチを通じて外部環境変化に対する見立てをつくり、イノベーションの起点となる新しい生活機会を創発する方法論のことを「未来洞察」と呼ぶ。

第3回図1

図1. 「未来予測」と「未来洞察」の違い

今回は不確実性、非連続性に注目して未来の仮説を作っていくワークショップを行う。

基本フレームは以下の通りである。

(内部視点の未来事象) × (外部視点の未来兆し) = (未来シナリオの創発)

このとき自分がどうしたいのか、という意志を持つことが重要である。

3.環境分野における世界の動向

続いて、未来洞察のワークショップを実施して作成したビジョンの活用事例として、経済産業省について紹介があった。具体的には、環境分野における世界や日本の動きについて説明いただいた。

昨今記録的大雨や日照不足などの異常気象が発生し、地球の気候変動に注目が集まっている。2015年にはCOP21でパリ協定が採択された。パリ協定とは、協定締結国の全てが、温室効果ガスの削減目標を作る。世界の平均気温を、産業革命以前に比べ2℃より十分低く保ちつつ、1.5℃抑える努力を追求する。そのためにも今世紀後半に世界の脱炭素(カーボンニュートラル)を実現することを目標にしている。日本は、2014年以降6年連続で排出量を削減しており、2013年度比で14%削減している。ちなみにイギリスは洋上風力の活用により21.5%削減している。
このように、2050年に向けたカーボンニュートラルに対する国際的な機運の高まりは大きい。同時に世界の投資家たちは、2050年のカーボンニュートラルを重要視しているため、企業もCO2削減のための取り組みが必要不可欠になっている。
2050年のカーボンニュートラルに向けて日本政府はグリーン成長戦略(2021年6月18日制定)として、以下のような内容を提示している。

温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、「成長の機会」と捉える時代に突入。イノベーションを実現し、革新的技術を社会実装する。これを通じ、2015年カーボンニュートラルだけでなく、CO2排出削減に止まらない「国民生活のメリット」も実現する。

以上の事実を踏まえ、大分に特化したソリューションを「未来洞察」を用いて考案した。

4.グループディスカッションの様子

今回は実現可能性よりも、個人の想いや直感を大切にしている。また、受講生全体からのフィードバックや感想も掲載する。

チーム1:“自分も健康、環境も健康” Oita湯〜園地
エンタメは環境分野の敵とみなされることが多いが必要不可欠。ゆえに、エンタメ施設内でエネルギーの自給自足を行う。地熱、温泉による水力発電、人の移動、音力発電。
全体の感想:
大分に温泉エンタメ施設が必要なことは間違いない。
長期滞在してもらうための仕組みがあればなお良い。(e. x. ワーケーション etc.)

チーム2:ファッションは自由だ。
将来居住空間が宇宙へと移り変わるにあたって、宇宙ごみの問題の解決を行いたい。そのゴミを再利用して服を作成、梱包は大分の工芸を利用。楽しめば楽しむほど環境問題が改善させていく。今までは地球にあるものを再利用、これからは宇宙にあるものを再利用。
全体の感想:
宇宙空間のゴミは希少金属が含まれているため、需要ありそう。

チーム3:大分スペースヴィレッジ
宇宙港がある国東で100%再生可能エネルギーを用いて安定的な食糧生産、廃校を農場に変換するなど、環境に優しい取り組みを行う。また、宇宙で食べられる食糧やものを生産。
全体の感想:
論理的で感情に訴えかけるものに欠ける。宇宙が体験できるビジネスビレッジなどインパクトが必要。

チーム4:100%“地獄”で運営している蒸し料理屋「天国と地獄」
大分の地熱、海流の激しい豊後海流などの自然エネルギーを利用して、完全自給自足の蒸し料理屋を開店する。大分は再生可能エネルギー自給率全国No.1であり、食材の種類も豊かなため実現性が高い。
全体の感想:
本当の地獄体験を付属として提供する、地獄と天国のキャップを提示するとユーモアでインパクトがある。健康面でもアプローチすると可能性は広がる。

チーム5:山奥ニート、募集!!これであなたも自由人
廃校の土地を活用し二酸化炭素削減につなげる。また少子高齢化、過疎化によって人の繋がりが希薄化し、かつ物、知恵の継承が困難になりつつある。そこに一種の村のような場所を作り移住者を増やす。管理維持を誰が担うのかが問題。
全体の感想:
アートの要素を取り入れればもっと面白くなりそう。

チーム6:B-OITA / BASEMENT CAMP OITA
移民の獲得方法として地下都市を作り、生活環境を作る。そして日本の災害から身を守る。地上では森林を増やし、CO2削減につなげる。大分の地熱や温泉水を活用。クラウドファウンディング等で資金調達、実現する。
全体の感想:
企業とコラボすれば面白い取り組みなる。ターゲットをより深掘ると、輪郭がはっきりするのではないか。

5.まとめ・感想

今回グループディスカッションの内容を通して、地球の地下から宇宙までフィールドが幅広く、今後さらに発想が広がっていく可能性があり、とてもワクワクした。また、具体的なターゲットや施策を練ることで、実現へ向けて動き出せそうだと感じた。しかし、気候変動の問題は経済の問題と表裏一体であり、解決にはコストが大きくかかる。これをいかに解決するかが実現可能性をさらに高める鍵になると考える。

根本氏は、このようなアイデアの創出を続けて、自分の思いを強制的に組み合わせることで、思考の枠が筋トレ的に広がる、とおっしゃっていた。私自身、普段自分がやりたいことをあまり考えることがないので、ワクワクするものを日々感じ取っていきたい。

次回は9月4日(土)

法政大学大学院の石山恒貴氏を講師に招き、地方発のイノベーション事例を軸に学術的理論を解説いただく。


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