イベントレポート:あなたが望む世界の変化にあなた自身がなりなさい
大分大学 経済学部 1年 渡辺康也
8月24日の土曜日に、九州電力大分支店で大分イノベーターズコレジオの第3回講義が開催された。今回のテーマは「仕事人生を後悔しないための越境学習」であり、元電通でクリエイティブジャーニー代表の酒井章氏をお迎えして基調講演が行われた 。
“越境学習”って何?
「越境学習」とは、ビジネスパーソンが所属する組織の枠を自発的に越境し、自分の職場以外で学びを得ることである。酒井氏が電通に所属されていた時にシンガポールを拠点とした新しいビジネスを立ちあげた経験を例にあげて、越境学習について解説があった。事例紹介では、重要な概念として「ブリッジ・パーソン」が紹介された。 ブリッジ・パーソンとは、異なる文化をつなげる人である。幕末に、アメリカに漂流して薩摩で活躍したジョン万次郎がいい例だ。このブリッジ・パーソンになることが今の時代に必要であると酒井氏は語る。ブリッジ・パーソンが異なる文化を繋げ、異なる文化を繋げることが、イノベーションを生み出すことのベースとなる。越境学習は、ブリッジ・パーソンとなるために有効な手段である。 また、ブリッジ・パーソンに なるには異文化へのリスペクトを持つことが最も大切とも語られた。
日本人のキャリア
「キャリア」の本質は、一般にあまり知られていないように思われる。酒井氏は日本人にはまだまだ理解していない人が多いと語る。そこで、 ドナルド・E・スーパーの理論であるライフ・ステージ論とライフロール論が紹介された。ライフ・ステージ論とは下図のように人生を5つの発達段階に整理し、段階ごとの発達課題に取り組むことを通じて人間的な成長を遂げるという考え方である。
また、ライフロール論とは自分なりの価値観、興味関心、性格などは、学生、市民、労働者、親、余暇を楽しむ人などの複数の役割を並行して果たす中で確立されるという考え方である。この2つを合わせることでキャリアを理解できると語る。そしてこの2つを合わせて、視覚的に明瞭にしたものが下図の「キャリアレインボー」である。
また、酒井氏は外的キャリアと内的キャリアについても語った。簡単に説明すると、外的キャリアが地位や年収であり、内的キャリアがやりがいや生きがいである。現在、世の中では「働き方改革」についての報道などが増え、自分も自然と耳にする事が多くなった。そこでは「私にとって、働き方改革は量ではなく働き甲斐です。」と語っている人が多いと感じる。そのように、キャリアにおいて内的キャリアであるやりがいは大切であることを改めて学んだ。
大学生が選ぶ、知っておくべきポイント4選
ここからは、酒井氏が話した中で筆者がお勧めしたいポイントをまとめて紹介する。是非、読んでほしい。
① “2枚目”の名刺を持つ
2枚目の名刺は単にお金を得ることを目的とした副業の名刺ではない。「スキルを活かしたい」、「幼いころからの夢を実現させたい」、「課題を解決したい」などのポジティブな動機があるライフワークを示すものである。これを実際行うことで、自分の価値観を見つめ直すことができる。
② ダイバーシティの必要性
大学生になり、「ダイバーシティ」について聞くことが多くなった。特に、この大分イノベーターズコレジオでは毎回のように出題される。今回の講演では、「日本の企業は、上司や偉い人がこの本がおすすめというと、食いついて全員が読み、実際にその本と同じ状況になったときに、全員がその本を読んでいるため、選択の幅が一つしかなくなる。もし、その本にあったことを実行してうまくいかなかった場合、なにもできない企業になってしまう。だから、企業のなかでダイバーシティが必要」と酒井氏は語った。ダイバーシティというとLGBTなどの外から見てわかる違いを考えてしまう人が多いだろう。よって、この考え方を取り入れることで「ダイバーシティ」の概念を見つめ直す人は多いのではないだろうか。
③ 現在、低所得国に暮らす女子の何割が初等教育を修了する? 20%、40%、60%?
基調講演の中で、「FACTFULNESS~賢い人ほど世界の真実を知らない~」という本の冒頭部分にあるクイズをいくつか行った。その一つが上にある質問である。ちなみに答えは60%だ。このように書くと、疑って60%と答える人が多いと思う。しかし、自信をもって60%と答える人はほとんどいないと思う。その理由は、日本のマスメディアがたくさんの人に見てもらおうと悪い部分を多く流すからである。また教育においても、そのような悪い問題を多く取り扱う傾向も強いからだ。そして、人間はネガティブなものに関しての印象が強いからだ。このクイズを通して、マスメディアとの関係を見つめ直すべきである。
④ 酒井氏が重要と考える人間性
酒井氏は、「好奇心」、「持続性」、「柔軟性」、「楽観性」、「冒険心」の5つがこれから活躍するひとに欠かせない条件であると語った。また、酒井氏は「キャリアの7割は運。その運をつかむためにはとにかく行動することが大切」とも語った。これは、大分イノベーターズコレジオにお迎えした人、全員が言っている事でもある。この5つと、とにかく行動することは、心に留めておきたい。
最後に
今回の講演は、越境学習を軸としてキャリアについて再認識する回となった。大学一年の私にとっては社会に出る前に話を聞くことができ、有益な講演となった。またこの講演を契機にして、受講者はこれまで、そしてこれからの「キャリア」を見つめ直し、行動し始めるだろう。