Call you if I lost
大晦日も、元日も、堀江にいた。
もちろんガクヤバーガーを食べるためだ。
12/31は、初めてガクヤに行く友達と。
焼きリンゴもオニオンもトッピングした。
こんな贅沢盛りをしたのは初めてかもしれない。
1/1は、一人で。
元々行くつもりは無かったが、正月限定メニューに惹かれてしまった。
無論めちゃくちゃ美味しかった。
西海岸にあるチャイニーズバーガーショップで愛される、ミカン果肉と陳皮のソースを使った肉夾僕(ロージャーモー)。
これが旨すぎる。サクッと香ばしいブリオッシュ生地に、手の込んだチリソースが絶妙なアクセントだ。残ったソースをポテトにつけて食べ、サンセットを眺めながら海辺のチルタイムを楽しむ所まで容易に想像できる。
ちなみにこのバーガーの設定は、全て妄想らしい。
訳がわからないが、やはり面白すぎるこの店。
それより私が思ったのは、正月だというのに
"西海岸のチャイニーズバーガー"なるバーガーを何故に限定として用意したのかという事だ。
確かにもう一つの限定バーガーは揚げ餅を基調としたものであったが、にしても謎すぎる。
などと思いつつもお会計と新年の挨拶を済ませて、なんとなく堀江公園の方まで歩きたくなった。
年末に帰省して以来、一人で大阪の街を歩くことがなかった。
友達と難波からガクヤに行くとき、よく通った道を逆走してみる。
ガクヤ前の道 『ハッピーストリート』を6ブロック南下し、LIVING HOUSEのある道へ左折する。
行くときはこの角を右に曲がるわけだが、難波からはそこそこ遠いので『まだ着かんの?』とよく友達に聞かれたものだ。
決まって角を曲がる時に「もうすぐやで!」と言っ
ていたが、6ブロックも先だから少し無理がある距離だったな、などと思ったりする。
細い道を真っ直ぐ歩くと、オレンジストリートの看板がどんどんと増えてくる。
オレンジだ。
さっきも食べたな、とか思いながら歩く、歩く。
普段と比べてグンッと人の減ったオレンジストリート。
ふと民家やビルに目をやると、エントランスにしめ縄飾りが飾ってある。そうか、元日だった。
街の仮死状態が、ノスタルジーにバフをかけて増幅させる。
どの道をどう切り取っても、いつかの思い出が存在する街。
「あの時の自分、めちゃくちゃ元気だった…」
無造作に散りばめられた過去の記憶から、勝手にやる気を受け取る。
今年も頑張らねば、年始だし都合よくそんな事を考えていた。
セブンのコーヒーを片手に堀江公園へ向かっている途中、ビルにかけられたしめ縄飾り。
ミカンだ…。
偶然とは思えない。
さてはガクヤバーガーの店長、街が柑橘類だらけなのを分かってあのバーガーを?
ニヤリと笑う顔が浮かんだ気もするし、全くの検討外れで『まだまだやな』と呆れた様子が浮かんできた、どんどん濃くなっていく…。
近所の子供が走り回る堀江公園。
明らかに新しくなったベンチに座り、ぼうっとしながらコーヒーを飲む。
「もしやこの材木はミカンの木で出来ているのでは」と思うほどに、近辺のミカン探しに躍起になっている割には、ゆったりとした時の流れを楽しむ。
久しぶりにこんな贅沢な時間を過ごしたかもしれない。半ば、みかんパラノイアになりながらも自分らしくて良い元日だ。
今年は東京で何をしようか。
少し余裕を持てた年始休暇、2025年をこの調子で走り切れるとは到底思えない。ただこのペース感を忘れずに歩いていければかなりいいんじゃないか、と思うほどには気持ちのいいこの頃だ。
ちなみにだが、しめ縄のみかんはみかんではなく、橙(だいだい)である。
熟しても実が枝からなかなか落ちないことから、代々家族が繁栄するようにと、その名を与えられた果物。
オレンジも橙も、みかんではない。
みかんっぽさにほだされていた時間を返してくれよ、ロージャーモー。