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嫌われリヴァイアさん と こども達

11月1日のニュース。
ハロウィーンの夜は、昨年比20%増の人々が大騒ぎ、との事。


リヴァイアさんのこども達は同じ頃、片田舎の秋祭りにそれぞれが参加していた。彼等は、ニュースに映し出されるハロウィーンの狂喜乱舞の如く、祭りパフォーマンスに興じるらしい。


兄緑君は、5日間連続。その後9日間連続。
弟桃君は 「祭だけが楽しみだから」 とリヴァイアさんに告げ、5日間と8日間。連日連夜ハロウィーンの夜の様な祭の喧噪に身を投じるようだ。
リヴァイアサン1 からは姿を消す。


5日間と9日間。祭に熱狂した兄緑君の10日目の朝。酩酊半狂乱の同伴者を介抱しているため音信不通。11日目。現れた緑君にリヴァイアさんが、昨日の行方不明について尋ねいてみた。彼は 「ふつうに熱」(昨日私は発熱だった)とうそぶいた。


兄と弟は、リヴァイアさんの元のこども達の中でいちばん、自分の思いを 言語化する事が不得意。そんな2人は、延々と繰り返す祭囃子の反復暗唱という行為は大好きだ。彼等の誰よりも熱中し続けている。


気持ちを言語化できない彼等に、現実社会では様々な困難が訪れる。


たとえば去年6月9日緑君。警察官がリヴァイアさんに  「緑君が事情聴取に真面目に答えてくれない」 と訴えた。リヴァイアさんは  「彼は言葉で相手に伝えるのが苦手なんだよね」 とお願いをしなければならなかった。


さあ、祭が終わった。


リヴァイアさんのこども達ほとんどが元気に、生き抜くエネルギーを回復させたよ!! という表情で戻って来た。


緑君ひとり、SNSから流れて来る祭動画から離れられずにいる。人間の安全保障2 の脅かされたこども達は、アルゴリズム(なるべく長くSNSの世界に留まらせる)に対して、途轍もなく脆弱だ。緑君は自らの強い意志で祭囃子を反復する。一方、SNSの祭動画のレコメンドは、緑君の意志とは無関係に繰り返し流れて来る。彼はその動画から離れられなくなる。そして祭終演後も、緑君の現実世界を侵食してくる。


彼ひとり。言葉を発しない。ゆらゆら彷徨っている。

1ホッブス角田安正訳「リヴァイアサン1」光文社古典新訳文庫
2国際連合広報センターHP 人間の安全保障

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