「道灌山虫聞」−ひっくり返ったら蛍が星のよう−『江戸名所道戯尽』
実は先週の木曜日に太田記念美術館に行きました。そこでは当時展示中の『北斎とライバルたち』展を見てきました。
ギリギリに行ったのでもう開催期間は過ぎてしまったのですが、非常に良い展示でした。
何が良かったって、広景の作品を初めて生で見れたこと。
順路的に一番最後に配置されていたのでまさかそんなサプライズが待ち受けているなんて思いもしませんでした。
あとは北斎の富嶽三十六景を数作品見ることができたことは非常に嬉しかったです。作品リストを確認していかなかったので何が展示されているかは知らなかったので、数点もあると流石に時間がかかってしょうがなかったです。笑
やはり本物を間近で見ると、デジタル画像で見るよりも、絵師がどこに力を入れてこだわったのかがわかる気がします。
いかにリアルに見せるか、違和感を持たせないかをどのように試行を凝らしたのか、伝わってくる気がします。本当はそんなところ気にしてないわい!と言われちゃうかも知れませんが、絵師の集中力が感じ取れるんですよね。
やっぱり本物を見ている時間が一番の癒しです、、。
そんな展示に癒しを委ねている今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「二十 道灌山虫聞」です。
◼️ファーストインプレッション
道灌山?という山があるのでしょうか、そこでは蛍が有名なのでしょうね。
それを見にちょっとした丘で場所を取って、夜の宴を開催しています。
しかし一人の男性は酔っ払ってか、後ろにすってんころりん。
お酒も一緒にひっくり返っています。
転がっている彼の目はなぜか冷静。転がっているというよりかは、ズズズズ、、と滑り落ちているかのよう。
周りの人は彼のこの様子に驚き、何もできていない様子。
動揺していますね。
いや、よく見るとひっくり返っているお酒の瓶の右に蛇がいる。
これに驚いたんだ、、。
そりゃひっくり返る。
最初は縄に火でも点けたのかと思いましたが、しっかり目も描かれていました。
それに対して、蛍は我関せず。自由に飛び回っています。
当時も蛍を鑑賞するという習慣があったことは他の浮世絵で見たことはありましたが、ちょっと集めてみたいと思います。
◼️道灌山
忘れているだけなのか、知らないのかがわからないので調べておこうと思います。
道灌山はこの辺り、日暮里のエリアということで山手線の中でも遊びに降りることはない駅のあたりです。
いつもこのGoogleマップに頼っているのでちょっと気分転換。
昨日のTOEICの帰りに一つ先の駅まで歩いて帰っていたら、道の途中で古本屋を見つけたので寄って見いました。江戸時代についての本がたくさんあって、その奥に古地図が。
1500円で『武蔵国全図』を買ってしまいました。
この図は江戸時代後期の名所絵出版ブームとともに諸国巡りが流行った時に製作の要望があったために作られたみたいです。
安政3年、1856年に歌川貞秀によって作図された江戸期最後の武蔵国全図です。
影が笑
今回の舞台である日暮里辺りを見つけ出しましたが、道灌山は書いてありませんでした。
二畳分くらいある大きさの地図から見つけ出すのは大変だしたが、自分の地元も見つけられたし、何より、江戸時代当時のものではないにしても復刻版を手に入れられたことに歓喜です。
室町時代の武将である太田道灌の出城があったことからその名がついたそうですね。
ここはまさに蛍の名所であるために、調べたところ、蛍はセットで描かれがちでした。
見ていきましょう。
◼️蛍×浮世絵
広重、豊国の『江戸自慢三十六興』「道灌やま虫聞」です。
いいとこの坊ちゃんがお母さんかお姉さんに連れてもらって蛍を捕まえることが出来ましたね。いい色の着物を着て、刀を携えているので武士の子供かな?
丘の上には御座を敷いて宴会中です。
いろんな階級の人がこの時期を楽しみにしていることがわかりますね。
歌川芳虎の『雪月花之内』「秋の月」です。
こちらは舞台は定かではありませんが、蛍を楽しむ人々の姿。3枚続き物の一番左の絵です。
蛍は光だけでなく、しっかり胴体も描かれていますね。
この光がないと、この絵はとても暗くて何かの儀式かのように感じてしまいますね。
歌川国貞、広重二代の『江戸自慢三十六興』「落合ほたる」です。
場所は道灌山ではなく、新宿の落合辺りです。
蛍を捕まえる気満々の女の子は母親と思われる女性に呼ばれているように見えますが、気にも留めず、一心不乱に追いかけています。
当時は新宿あたりでも蛍が見られたんですね。
今日は『武蔵国全図』を開けてみましたが、道灌山はなかったことと、蛍を描いた絵を見ていきました。
今日はここまで!
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