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「藤沢 遊行寺」–視線の動きと立体感の巧妙さ–『東海道五十三次』

最近はお笑い芸人の蛙亭のYouTubeでコントを見ます。
中毒性があり、見るたびにこんな変な動きしてたんだとか、よく聞けば変な言葉だよなと思うことがあり、飽きないコントです。
大爆笑するネタもいくつかありますが、寒気がするものもあります。
こればっかりは見てもらうしかないのでリンクを貼ります。笑


狂人を演じるのも、普通の人を演じるのも上手な2人のコントが最近の癒しです。
「マッチングアプリ」と「喫煙所」「復讐」が一押しです。笑

そんな蛙亭にどはまりの今日も広重。今回は『東海道五十三次』「藤沢 遊行寺」です。

◼️ファーストインプレッション

今回も調べるには情報がたくさんある絵ですね。手前の鳥居がこの近くに神社があることを示していて、題名の通り遊行寺というお寺のものなのでしょう。

その向かい側にある橋の対岸に宿場があるのでしょう。たくさんの建物が立ち並んでいます。
そしてそのもっと奥の山の上にも軒が並んでいます。
階段がしっかり青色で刷られているので上には何か公的な建物が建っているということでしょう。
神社か何かかな?

宿場はなぜか橋を越えたところに位置しがちですね。
ポケモンのゲームのように〇〇タウンが橋を渡った先にあるみたいな構図になっていますね。
今回は視線が鳥居から橋に、そこから宿場町、山の上へとS字に湾曲していて画面全体に視線が届くようになっています。
そして河岸が坂にもなっていて、手前から奥に向かって土地が登っているようで、3Dに感じられる立体感も感じられる絵ですね。
今回は構図が非常に巧妙だなと思います。

人物に目を向けると、鳥居をくぐろうとしている人々3人はきっと盲目の人です。
彼らが一緒になって一種の修行をしているものかと思われます。

橋の上では女性2人が顔を見合わせて渡ろうとしています。その先に見えるのがかなり長い刀を背負った人。それに驚いているのかな?

歩いている人々の職業が特定できそうな気もしますね。

今日はこの場所の特定と描かれている人々について見ていきたいと思います。

◼️藤沢 遊行寺

実は手前の鳥居があるからといって、こちら側に遊行寺があったわけではないそう。
場所を確認してみましょう。

上の赤ピンが遊行寺。その右を通る大通りが遊行寺坂という通りなのでまさにこの遊行寺が坂の上にあったことがわかると思います。
そこから下って川を挟んで旧東海道まで至ると、下の赤ピンの江ノ島弁財天道標という通りに繋がります。
上の地図ではどうしても江ノ島弁財天道標と遊行寺を一緒に入れたかったので橋の名前も出ていません。
もう少しクローズアップしてみます。

橋は遊行寺橋
一つ下の藤沢橋かとも思いましたが、旧東海道には該当しないので遊行寺橋と判断しました。
そうすると、今回描かれている場所は「エコノミー湘南藤沢橋支店」というあたりからでしょう。


絵の手前の道は江ノ島道とされています。
江ノ島弁財天につながる参道であるそう。

遊行寺から南下したところに江ノ島があるので川沿いにしばらくいくと江ノ島道にならうことができますね。

上サイトより


今回の絵では遊行寺をモチーフに描いたのではなく、奥の遠景として描いているのですね。
手前の鳥居はどこかの神社のではなく、江ノ島参道のものだったのですね。


◼️座頭たち

この参道の鳥居をくぐろうとしている盲目の人たちは座頭と言われています。
座頭というと、座頭市という言葉が浮かびますが、座頭市すらいまいちピンときていません、、。

(4)盲人で剃髪(ていはつ)して僧体となり、琵琶、箏、三味線、胡弓などを弾いて歌を歌い、語り物を語り、また、あんま、はり、金貸しなどを業とした者の総称。座頭の坊。ざとのぼう。ざっつの坊。ざっとの坊。
(5)目の見えない人。盲人。

日本国語大辞典

耳なし芳一も同じような人だったのでしょうか。
音曲を生業としていて、そこから金銭をもらって生活していたのですね。
しかし今回の絵の座頭達は楽器を持っている様子が見られませんが、おそらく背負っている風呂敷の中に潜ませているのかもしれません。


なぜ彼らはこの参道を歩いているのかというと、江ノ島弁財天が盲人の逸話と関係しているそう。

江戸時代の鍼師、杉山検校の墓で、一周忌の命日、元禄8年(1695)5月18日に建立されたものです。墓碑の形は笠塔婆型で市指定史跡となっています。杉山検校は本名を杉山和一といい、慶長15年(1610)、伊勢の国に誕生しました。幼少の頃に失明し、有名な鍼医のもとで学びましたが実らず、江の島弁財天に21日間籠もって礼拝を続けた結果、管鍼術という療法を創案し、大成したと伝えられます。

杉山検校江ノ島弁財天に籠ったことで獲得できなかった療法を得ることができたという逸話から盲目の人々の信仰の対象になったそう。
だからこの座頭3人組と、後ろの小坊主くんは参道を通って弁財天に向かっているのですね。


なかなか情報がたくさん詰まった絵ですが、触れられたのは場所と座頭について。
構図の巧みさが非常に見応えある作品でした。北斎に匹敵するくらいかとも思っています。

今日はここまで!
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