「府中 安倍川」−名物を描くことだけが名所絵ではない、、、!−『東海道五十三次』
最近忘れかけていた読書をしました。
専門書みたいなものは普段読んでいても小説は久しく読んでいなかったので久しぶりの一冊を大事にするべくちょっと重めで有名なものをチョイスしました。
大学卒業するまでに小説を狂ったように読み漁ったりしてみたいなあと妄想しています。
大学に意外と小説が少ないので地元の図書館やBOOKOFFにお世話になりそうです。
場面ごとの人の感情や行動パターン、例えの引き出し方などを知って、自分の経験に重ねることができることはやはり体力を要しますが、「面白い!」の一言に尽きます。
そんな一歩小説の沼に足を浸した今日も広重。今回は『東海道五十三次』の「府中 安倍川」です。
◼️ファーストインプレッション
数日前に見た『東海道名所図会』の安倍川がまさにここなのですね。
渡し場にいた人々が一気に川を渡り始めています。
手前の集団は駕籠の中に女性がいて、おぶったり屋根なしの台に乗っていたり、結構きわきわのバランスで運ばれています。
運ばれる女性たちの中にもランクというか、格の違いがあるのでしょうね。
駕籠というか屋根付きの箱に入っている女性や台の上に乗っている女性がのる目次が男性たちの肩に食い込むほど重みがあるというか、バランスが難しいのでしょうね。
胸の高さまで川に浸かってしまって川の流れ次第では一気に乱れてしまうような力仕事ですね。
向かい側からは二組の集団が来ています。
右側は全員が単体で行動していて、とりあえずバランスを崩さないようにじっくり歩いているように見えますね。
その隣の集団では馬に荷物を乗せて渡っています。
馬の労働量が人間に対して重すぎますけれど、これが江戸時代では普通だったのでしょう。
それでもちゃんと人間は馬のバランスが崩れないように後ろで支えてあげていたり導いてあげていたり、一緒に旅をする一員として寄り添っているようにも見えます。
後ろの大きな山の名前は何かはわかりませんが、地図を見て確認してみます。
今回は安倍川の他の作品とか探してみることにします!
◼️安倍川
安倍川は以前『東海道名所図会』でみてみましたが、場所として確認したわけではないのでどんな性質の川なのかを知る必要がありますね。
安倍川はこのような位置にあります。前回の江尻が東のしゃくれた湾ですね。
そこから安倍川を渡っているということ。
おそらく川の向こうに見える山は地図の北にある光岳、、?
この光岳の近辺は他にも赤石岳や荒川岳、北岳といった連峰があるのでその一部を描いているのでしょう。
今回の絵の様子からすると、川の幅は、、広そうかな?
手前の集団が胸あたりまでの深さということはそこが真ん中だとして、描かれている倍の広さがあるということですね。
なので推測としては、難しいけれど東海道新幹線が走っているあたりか、その上の高速道路が通っているあたりの川幅に該当しそうですね。
◼️安倍川
『東海道名所図会』ではどんな場面が描かれていたっけ、、?
あー確かに川の徒行渡しの様子は必須のようですね。
まさに今担がれようとしている人の様子も描かれていて、何か特別な訓練をされているとか、技を使っているというわけでもなく原始的な方法で運んでいたことがわかります。
ちょっと気になるのが、川の中にいる人で台に乗せられている二人。向かい合っている、、?笑
こうして向かい合っているのには何か意味があるのかな、、?それとも作者の遊び心かな?笑
広重の『東海道風景図会』「府中」です。
こちらでは安倍川を俯瞰せずに低視線で眺めています。人がおらず、ここが安倍川かも少し怪しく感じます。
人が人を運ぶ必要がないくらい浅そうだし、流れも強くなることはなさそうな小川ですね。
これは『名所江戸百景』の高輪牛町の絵に似ている。
低視線で眺めつつ、農作道具のような木材の道具が放置している様子を描いている点で似ているとも言えそう。
『東海道風景図会』で「あべ川」と記載があるのにも関わらず渡しの様子を描かなかった理由が何か、きっと詞書をしっかり読めばわかったかもしれません。
三代豊国・二代広重・河鍋暁斎ら16人の絵師により制作された『東海道名所風景』の「府中」です。
こんなオールスターで製作された作品群があったことを初めて知りました。
富士山を背景にどんと大きく描き、その下で大名行列をしている様子が描かれています。
他の作品も見てみると、違う場所でも大名行列の様子が多く描かれています。
テーマとしてそうした幕府礼賛のようなものがあったのでしょうか。
ということでした。逆ですね、将軍の上洛の様子でした。
だから、安倍川の中でヒヤヒヤしながら運ばれている将軍の絵よりも、富士山のもとで迫力ある列を成して闊歩している様子の方が都合がいいですよね。
安倍川にも描く作品によっては渡しの様子を描かない方がいいこともあるのでしょうね。
名所だからと言ってその名物を描くことが全てではないということを学びました。
今日はここまで!
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