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「御蔵前の雪」−達磨すぎる雪だるまと犬は準レギュラー–『江戸名所道戯尽』
暑すぎてシンプルにダウンしていました。
視界と頭で把握することが追いついていないので、物を見てからするべき行動を起こすまで2秒かかってしまいます。
キーボードやスマホのフリックを打つ指も力が弱くなって打ちミスが増えます。
この夏を生き延びられるか、本当に不安になってきました。
部屋に閉じこもってものを読み漁り三昧な夏になるべきですね。
そんな暑さにやられた今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「二十二 御蔵前の雪」です。
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◼️ファーストインプレッション
今まさに私が欲してる景色。
ドカ雪降ってくれないかなあ。
大きな達磨のような雪だるま。何だろう、雪だるまは名前は達磨でも、実際達磨を意識して作っていないよねってことです。
こんな大きさで表情もしっかり描きこまれている雪だるまは札幌雪まつり並みのクオリティーですね。
大きな黒い目に太い眉毛、横広い鼻のリアルさ、魚を置けるほど丸みのある胴体は実際にこの雪道に現れたら結構びびります。
下駄の鼻緒が切れてしまった男性が屈んでそれを直している間におそらく男性が置いたであろうネギと魚のセットが犬によって盗まれそうな瞬間です。
男性はここなら安全だと思って置いたに違いないのに、気の毒ですね。
雪だるまが大きすぎるせいか、奥の傘をさして歩いている人たちとの遠近感に違和感は残りますが、なかなかインパクトのある絵ですね。
今回は逃避のためにも雪景色を眺めていきたいと思います。
◼️雪あそび
雪景色を描く浮世絵はあっても、雪で遊んだ跡のある景色を描いたものを見た経験は少ない気がします。
今回は雪景色の中でも、そこで江戸の人たちが遊んだことがわかる景色を見ていきたいと思います。
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北斎の『富嶽百景』「 雪の旦の不二 」です。
遊んでいるのは人間ではなく、犬であるようですね。
雪の景色には犬が描かれがちです。
実際にこんな鋭角に雪を積むことは難しいでしょうけれど、『富嶽百景』ですので、この高さを富士に見立てていることがわかりますね。
犬が転げながら追いかけっこしている様子が、人間の完全防備の姿と正反対で面白味のある絵ですね。
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菊川英山の『雪遊び』です。
子供三人、赤子一人で見張るのが大変そうなお母さんもとても楽しそうな表情をしていますね。
奥の雪だるまは眉毛と髭がゲジゲジになって、目の向きも外向きになって、あまりに不恰好な表情をしています。
まるで雪だるまも寒さで着込んでいるかのような様子です。
この大きさの雪だるまを果たしてこの子たちが作ったのでしょうか?
この大きさなら大人が数人で頑張って作った気がしますね。そしてら、それを真似て三人で協力して作っている様子だと思えます。
江戸時代の雪だるまは可愛くないですね。
インパクトならあります。
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鈴木晴信の『風俗四季哥仙』「庭の雪」です。
ここでは小さなオブジェを作った坊主くんがそのオブジェに命の息を吹きかけているところです。
「あとつけぬ 程をも見せん 庭の雪 人もとふまで 消ずもあらなん」
という新後撰和歌集の歌を引用しているらしいです。
「人の足跡がつく様子もないほど降りしきっている庭の雪、恋しい人がまた訪れるまで消えないでほしい。」
という意味でしょうか。
恋しい人が訪れてきた時にできた足跡が降りしきる雪で消えてしまわないでくれという感じ?
この絵と意味としては全く一致しませんが、深い雪が降っていた様子は伝わってきますね。
坊主くんが作っているのは犬なのでしょうか、、、?
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歌川国芳の『新板子供遊び之内 雪あそび』です。
お、この雪だるまはかなり今回の絵に似ている。
目がまだ描かれていないのであと少し。囲う二人が協力して眉毛と目を加えるのでしょう。
後ろの方にある狛犬が、一体本物なのか、作り物なのか、わからなくなりますね。
このクオリティなら作れそうな気がする、、。
さっきから雪をヨーヨーのように吊るして遊んでいる様子を目にしますが、何なのでしょう。
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歌川貞重の『雪ころがし』です。
腕を出して遊んでいる子供たちの姿は非常に逞しいですね。
いくら何でも寒いんじゃないかな?
やはりここでも犬は登場。
犬は雪遊びが好きなのかもしれません。
右にいる子供が一個前の作品同様にヨーヨー風雪吊るしをして遊んでいます。
マジでどこにも乗っていない、、。何をして楽しんでいるんだ彼は、、。
左上の少年は大きな雪の塊を精一杯振り上げて落とそうとしていますが、視線はお母さんの背中に背負われた子供。
お願いだから当てないでくれ、、と願うばかりです。
雪の絵に出演率の高い犬について特集しても楽しそうですね。
でも多分既に太田記念美術館さんが特集していそうです。
今日はここまで!
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