「砂村せんき稲荷」−おじさんだけでなくこっちも気まずいよ、、−『江戸名所道戯尽』
今日もなお暑いです。
ちょっと前の猛暑と違い、湿度があるのでイライラが募りますね。
なんか三日に一回はこの話している、、。笑
そんな、、今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「三十一 砂村せんき稲荷」です。
◼️ファーストインプレッション
でたまたこういうシリーズ。。。
なんとなく触れにくいけれど触れないわけにいかないタイプのものを、広景はよくもまあ何枚も描くこと。
今回は男性の陰部が猪くらい大きくなって、それを隠しながらどこかに運ぼうとしています。
なんでそうなった?と聞きたいのも山々ですが、ここまでにしましょう。
それを運ぶのを手伝う前の先導の男性は気にもしておらず、軽い足取り。
行く方を見ながら口笛でも吹いていそう。
流石に後ろの男性は気まずそうな顔をしていますね。正解の顔。
それを見かけた女性たちは物珍しそうにしっかり見ている。
「やばああ笑」くらいのノリでヒソヒソ話をしていますね。
この土地はかなり広大な草原が広がっている様子ですが、突然の鳥居を構えた神社が現れているみたい。
「大智稲荷大明神」と幟にありますので調べれば何か出てくるかな。
今回はこの神社にのみ触れていきます。笑
◼️大智稲荷大明神
このまま調べたらこのような神社がヒットしました。
こちらのページに載っている、境内掲示の表記です。
疝気というのが何なのでしょうか。
角川古語大辞典からの引用です。
ここで見ていただきたいのが、太文字のところ。
まさに今回の男性が腫れているところに該当する箇所が挙げられています。
またこれもしっかりと男性に限る病気とされていますね。現在では私は初めて聞いた言葉でしたので当時、なんらかの流行り病的なもので疝気というものがあったのでしょうか。
で、そのような病気を治すことにご利益のあるのが今回の大智稲荷大明神であるわけです。
この神社のある土地は17世紀からいくつかの藩のお抱え屋敷の一部になるのを繰り返している歴史があるようですね。
そのようなことはまた歴史に詳しくないと言及しにくいですね。。
しかしこの神社の御由緒が意外と尖っていなくて
”村の五穀豊穣を祀って”という旨があるのみでした。
そういう由緒からなぜ、ご利益が特殊なものになったのでしょうね。
読んでいくと、『遊暦雑記』や『武江年表』には何故かという部分はすっ飛ばしてこういうご利益があるという旨が書かれているのみ。
何か特殊な由来譚があるはずですよね。
けれども今は深掘りできる余裕がないので、ここまでとします。
◼️北斎漫画の典拠
実はこの気まずい男性、広景のオリジナルの奇形ではなく『北斎漫画』にすでに掲載されているイメージであるそう。
『北斎漫画』「十二編 大蓑」です。
上の絵がまさにそれで、広景の絵の左右反転されているものです。
意外と気まずそうではなく、余裕そうな表情を浮かべていることに違和感しかないですね。
ただ、前の人の足取りの軽さや、それの運び方は広景は丸々トレースしたみたいですね。
広景は『北斎漫画』から引用をしてはいますが、いつも十二編からばかりなので、十二編だけは愛読していたのかな、、?
そのところは深掘りのしがいがありそうですね。
今日はここまで!
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