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「上野中堂二ツ堂の花見」−このポーズは逃げ足早いやつの動き−『江戸名所道戯尽』
夏は外に出れば頭が痛くなるし、目も開かなくなる。
タンクトップと短パンで出歩いていいならそうしたいです。
世間の目的に日本人として好ましくないのが残念でしょうがないです。
大学図書館行きたくても家から1時間半かかりますからね、2ヶ月だけ近くで部屋を借りたいとか思っちゃいます。。
そんな甘ったれたことをほざいている今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「二十一 上野中堂二ツ堂の花見」です。
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◼️ファーストインプレッション
一番右の女性の体はどうなっているのでしょうか?
同じポーズを部屋で誰にも見られないように取ってみましたが、軸足に相当負荷がかかっている。
ただ今から逃げようとしているポーズではなく、全力疾走をしていて振り返ったところの瞬間だという確証は感じました。
多分女性がすっ転んでいる男性を、何かの拍子で倒してしまったのでしょう。
目隠しもしているのでかなり危険な遊びです。
市松模様の着物を着ている女性は逃げる女性を見て「え?逃げる?」みたいな表情さえしています。
花見の場でこんなに大騒ぎしたら、近くのおじさんに怒鳴られそうですがちゃんと人のいない場所を選んでいるようなところもおかしな場面ですね。
奥には青い傘を差したグループが練り歩いていますね。
上野ということで寛永寺の近くでしょうか。真っ赤なお堂が桜の景色をより華やかにしています。
◼️上野二ツ堂
この上野二ツ堂は寛永寺の法華堂と常行堂をつなぐ回廊のある場所のこと。
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広重の『絵本江戸土産』に掲載されていました。
「山門を入りて正面に橋掛りあり その奥の方に中堂あり いずれも金銀珠玉を鏤め その結構いはん方なし この橋掛りの左右なるを法華堂 常行堂といふ 俗に二ツ堂と唱うる是なり」
ということで、今回の絵の右奥に立っている廊下がこの↑回廊に該当するのでしょう。
『絵本江戸土産』では上に描かれている桜が植えられている草エリアが、今回の絵の駆けっこ舞台でしょう。
『絵本江戸土産』でも桜が描かれているということは、桜の名所として栄えていたことがわかりますね。
◼️上野二ツ堂×浮世絵
これまで上野といえば寛永寺や不忍池、清水観音堂といった主要スポットばかりを見てきましたが、二ツ堂も意外と描かれがちということがわかりました。
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広重の『江戸名所』「上野中堂二ツ堂」です。
女性三人組が桜がある草原を闊歩しています。
流石に駆けっこはしてない様子。笑
やはりここでも奥には青い傘を差した集団が見られますね。参考書にはお稽古のグループが花見をしにきたということです。
青い傘を差した集団が花見の季節に毎日現れるというよりかは、広景が広重の絵を模倣した可能性の方が高いですね。
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北斎の『浮絵』「東叡山中堂之図」です。
以外にもここでは桜は描かれていませんね。
北斎の春朗期の作品ですのでまだシンボルの藍は見られず、紅摺です。
どっちがどっちだろう。。。現存しないので判別が難しいですね。
他の作品を見たら書いてたりするかな?
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広重の『江戸名所』「上野東叡山境内」です。
どっちがどっち堂かは書いてありませんが、青い傘を差しているのがわかります。
このように小さな集団が集まってあの大きな集団が出来上がっているのかな?
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錦江斎の『東都名所』「東都八勝 上野晩鐘」です。
右奥に長い回廊に繋がれた二つのお堂があるのが、二ツ堂です。
桜の名所になっているのは手前の小高い丘のことで、ここって人々をハイにさせる場所なのか?右の階段から降りてくる二人の女性も追いかけっこしています。
多分、右手前のお堂が清水観音堂な気がするので秋色桜もその景観の一部になっていたりしたのでしょう。
広景は思ったよりも写実的に景色を描くのですね。
人々を遊ばせすぎなところがよくわかります。
にしても右の女性のポーズは実際に全力疾走している人を見ていないと描きにくい形だと思います。
観察眼が非常に優れていることもわかりますね。
今日はここまで!
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