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夏の海は江戸ガールたちの出会いスポット~歌川広重『東海道五十三次』「品川」
直に太陽光に当たることが危険な暑さが続いていますね。
サングラスと日傘を駆使しても汗が体を包んでしまうくらいで、ハンカチが一枚では足りません。
1日で水を2リットル飲み干すことを日課としていますが、割とそれでも足りない。
もうこれから毎夏こんな暑さになるのでしょうか。
オリンピックが行われているパリでも26度というのを昨日テレビで見ました。
フランス語孟勉強しようかな。
そんな暑さに嘆く今日も広重。
今日は歌川広重『東海道五十三次』(人物東海道)の「品川」です。
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ファーストインプレッション!
これは既視感のある構図と要素が詰め込まれていますね。
品川の多くの船が停泊している点、牛車のような運搬車が置かれている点、ワンコロ。
女性たちが楽しそうな顔ですれ違っています。近くの茶屋でイケメンでもいたのでしょうか?笑
また今回も女性たちの着物の柄が特徴的。
海に近いということから夏を感じる風景ですが、女性たちの服装もまるで夏を感じさせる花火や花のような柄ですね。
品川の典型的な構図と要素がたっぷり含まれている作品ですので、他の品川の作品も見てみましょう。
品川の要素
停泊する船
先にも述べましたが、品川を描く時に必要な要素となるのが船ですね。
いくつもの船が並んでいる様子が他の作品からも見受けられます。
例えば有名な『保永堂版東海道五十三次』「品川」↓
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港として栄えていた品川港。
多くの食料や生活物資が主に上方から運ばれてきました。
まさにその様子が描かれています。
海と宿場が対角線を境に、それぞれ栄えていることがわかります。
宿場町では大名行列でしょうか、一行が通行している様子がわかります。
画面右下の街道脇に腰を低くして頭を下げている人々がいる様子が描かれていますね。
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歌川広重『江戸名所之内』「品川の駅海上」(嘉永6年)です。
上下で画面を切り分けており、非常に幾何学的な印象を与える作品ですね。
下部の街道では人々の生活が細かく描かれており、街道を往来する人々の様子、店の2階から顔を出す人の様子、店の奥で待機している人の様子などそれぞれが生活しております。
上部の港では相変わらず船がいくつも並んでいます。
品川の風景として非常に特徴的なのが、このように船がまとまって停泊している様子かと思います。
特にそれを強調しているのがこちらの絵↓
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歌川広重『東海道風景図会』「品川」(嘉永4年)です。
船がいくつも並んでいる様子をメインに描いています。
むしろ、街道はそっちのけですね。
『東海道風景図会』は絵本作品ですので、錦絵である『東海道五十三次』ほど色は摺られていません。
上部には詞書が添えられており、詩歌が書き込まれています。
芝の名の文献上の初出は1486年(文明18)の《廻国雑記》にみる〈やかぬよりもしほの煙名にも立つ船にこりつむ芝の浦人〉である。
太線で記した詩が右のページ左側に記されています。
15世紀で既に品川(芝付近)は運搬関係で船がよくみられる場所であったことがわかりますね。
今回の絵は船の圧力がピカイチです。
大八車とワンコロ
今回の絵に既視感があるのは、船の存在感だけではありません。
以前にも解読した『名所江戸百景』の「高輪うしまち」(安政4年)でしょう。
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既視感だらけの要素がたっぷりですね。
こちらの『名所江戸百景』の方が『東海道五十三次』(人物東海道)よりも後の作品なので、こちらは人物東海道での好評により再現したのでしょうか笑。
ワンコロは草履の鼻緒を噛みながら海の方を見つめています。
隣にあるスイカに背を向けているワンコロもいるので、欠片を少し食べた後なのかもしれません。
手前に大きく描かれる牛車らしきものは大八車。
牛車は牛が引きますが、大八車は4.5人の人で引いていくそう。
近世、江戸で造られた大型の二輪の荷車。四人あるいは五人がかりで使用し、「ゑんほん〳〵〳〵」と掛け声を掛けて引いた。『本朝世事談綺・二』によれば、「寛文年中、江戸にてこれを造る。人八人の代をするといふを以て、代八と名付。今大八と書く」とし、『異説まちまち・二』では、明暦三年(一六五七)の江戸大火事ののち案出されたと、前説と同じ時期を示しながら、名の由来については、「広沢の大八録の序に、大八といふものゝ作れるとあり」とする。代八(だいはち)とも。
由来はいくつかあるみたいです。車そのものの特徴ではなく、どのように使われていたか、どのような資料に載っていたかということが由来になっていますね。
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『江戸名所図会』第1巻「今川橋」です。
2人が体の重心を前に全振りして、後ろも1人が顔をすぼめながら全力で推しています。可愛い髪型ですね。笑
三人の女性は誰?
品川にいる人
前回の日本橋で描かれる女性たちは芸妓さんたちかな?と言いましたが、今回はどうでしょうか。
まずは品川にいるとされる人々の特徴を探りましょう。
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『江戸名所図会』第4巻 「品川駅」です。
読みやすそう。
「江府の喉口ゆきて東海道五十三駅の始めなり。日本橋より二里南北と分つ(東海寺の南に傍て貴船の社の側を流て川を堺とす。或人云く是則品川と称する所の水流とりと云う)旅舎数百戸軒端を連ね常に賑はしく往来の旅客絡駅として絶ず」
でしょうか。
旅人で溢れかえる駅だったとのこと。
ほぼ全ての街道を網羅する日本橋の隣の駅だから色々なところから訪れる人々がいたのでしょう。
着物の柄
前回活用させていただいた日本の模様一覧が非常にわかりやすかったので再度使用させていただきます。
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右の女性から。
(いい意味で)ウニのようにトゲトゲ薄緑がいくつも重なっているような模様です。むしろ白抜きされている箇所を注目すると、花弁の多い花がいくつも重なっているようにも見えますね。
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かれこれ15分ネットサーフィンしてますが、全然該当の柄が見つからない。
「着物 柄」「日本の伝統模様」「着物 柄 トゲトゲ」「日本模様 とげ」
とかで色々調べましたが、見つからない。
これはもうオリジナルということにさせてもらいます。
悔しい!
真ん中の女性はわかりやすいですが、朝顔の柄。
朝顔がびっしりと描き込まれています。
柄からだけですが、ここの風景は夏の景色を描いているとも言えそうですね。
左の女性ももしや朝顔?!
そしたら右の女性もそしたら朝顔なのでしょうか!
そう言われたらそう見えてきた。
大柄の朝顔がいくつも重なっているのが右の女性。
小さな朝顔がいくつもびっしりと描かれているのが真ん中の女性。
一つ一つの朝顔を重ならないように描いているのが左の女性。
上記のように言えるのではないでしょうか。
なおさらここの場面が夏の海辺であることが強調される要素ですね。
そして近くの茶屋にイケメンが居たかについてですが、それはわかりません。笑
ただ、女性2人はニヤニヤして目を合わせているので、おそらく汗も滴るいい男を見つけたのかもしれない、、笑
海辺は出会いが多いなんて、江戸時代も変わらないのかもしれませんね。
今日はここまで!
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