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第9回|ビルススタジオ 塩田大成さんインタビュー【後編】

こんにちは、OHYA BASE管理人です。
ここのところ曇りや雨の日が多かった大谷町。
そんなときはゆったり読書するのも良い過ごし方。
旅・歴史・地域文化など多様なジャンルの本が並ぶOHYA BASEライブラリーは、図書館のようにきっちり分類されていないからこそ、意外な本との思いがけない出会いがあるかも。

今回のnoteは株式会社ビルススタジオ塩田大成シオダタイセイさんのインタビュー【後編】です。
【前編】を読んでいない方は、まずこちらから。

では早速【後編】いってみましょう!


自分の居場所がない状態になってほしい。

そんな塩田さん、OHYA BASEについては何をしている人ですか?

OHYA BASEの運営者ですね。
で、OHYA UNDERGROUNDというプロジェクトを始めた人のうちの1人

みんなに秀逸だと褒められる「大谷でできることを増やす場所」ってキャッチコピーを書いたご本人でもありますね。
敢えて別の言葉で表現するならOHYA BASEってどんな場所、ですか?

散々こねくり回してこれになってるからね、キャッチコピー。
別の言い方をすれば、自分の居場所がなくなる状態になってほしい場所、笑。
ここに出入りしてるメンバーで、繋がって、コトが動いて、自分の入る余地がない、ってなるような。
お。邪魔かな?って思っちゃうぐらい、勝手に動き出してほしいです。


「意図せずできちゃった」地下空間の強さに憧れている。

OHYA UNDERGROUNDについては既にいろんなインタビューで語ってるので今回は聞きませんが、もともと地下が好きなんですよね?
なぜ惹かれるんだと思います?

地下っていうか、大谷の地下空間が好き。
幼少期から大谷資料館に行ってて、そこからずーっと気になっちゃってる。
結果、県外でも国外でも地下空間をいくつも見てまわったり。
そんな中で、やっぱり大谷の地下空間がとびきり格好良い、という確信があった。
大谷は人の手が入った、けど、自然な状態。
意図せずできちゃった空間っていうところに惹かれてるんだろうな、というのは間違いない。
かっこよくしようと意図してかっこいいわけじゃない。
そういう「結果的な空間の強さ」みたいなのが、他のどこにもないし、それが自分にいちばんしっくりくる。

建築系の人には大谷好きが多いですよね。

好きよ、やっぱね。
あの空間を見ると、学校教育とか建築雑誌で見る建築家たちの言葉とかが、全てなんなんだろうって思えてくる。
「そんなこと言ったって、この圧倒的空間に勝ててないじゃん」て。
大谷の地下空間には建築の力を凌駕する力が既にあるから。
もう、やってらんない気持ちになる、苦笑。
きっとそれは常に抱えているジレンマみたいなところ。
設計やってるとどこもかしこも意図だらけの空間に囲まれてるわけで。
それがない力強さというかね、そこに憧れもあるだろうし。


必要性を感じて拠点を構えた。退けなくなった結果、とも言う、笑。

そもそもOHYA BASE、どうして作ろうと思ったんですか?

なんだろうね。
大谷町に拠点がないと地域の人から理解されないだろうな、というのがまず第一歩目。
BASE作るより先にOHYA UNDERGROUNDの活動があって。

誰がどこでやってるのかもわからないけど「OHYA UNDERGROUND」ってニュースで流れてくる、そのニュースを見て外から人が来てる、けど本人たちがどこにもいない、っていう状態になってて。
それをいつまでも続けてると活動が収縮してっちゃうなぁ、と思った。

OHYA UNDERGROUND立ち上げメンバーの定例mtgでこの先の課題とかを話し合ってる時にも「場所」っていうのが出てきた。
無理してでも拠点を構えて、場があって、人がいて、っていう状態を作らなきゃ、ツアーにしてもフィールドが増えないし、来た人も気持ちを解消できないし、2回目訪れてくれなくなっちゃうだろうし。
そういう場所の必要性を感じた。

そんな中で宇都宮大学で講師やることになって。
課題の立地を大谷にしたの、大学の課題をってことでいろいろ話を聞ければな、と思って。
で、大谷に物件や土地を持っている大家さん数人に「学生の課題に物件として協力してもらえないか」って相談をして。
何を考えてるか大家さんに知ってもらわないと関われないな、ちゃんと仲良くならないと、と思って。
と同時に、大家さん側の想いなんかも含めてヒアリングさせてください、って。
そしたら熱い思いみたいなのも聞かせてもらえたりして。

今の大谷にあるいろんなお店がまだほとんどなかったような時期だけどOHYA FUN TABLE 大友さんとか、Punto大谷町食堂 高橋さんとかは、大谷(=共に奥さんの地元)でレストランをやりたいんだ、って言いはじめてて。
でも場所がない、店舗を作れない、って状況だった。
で、これは気運的なところもあって。
「なんでできないんですか?」とかって大学の課題の中で学生から役所に素朴な疑問をぶつけたりとかして、笑。
最後の発表会は、当時の大谷振興室のメンバー全員、大家さんたち、銀行の人たちも呼んで、稲荷山借りて、学生にプレゼンしてもらって。

その場でも「よくないですか?」「なんでできないんですか?」みたいなのを地元の人も含めてやってもらって。
大家さんにも行政の人にもコメントをもらって。
それが2017年。
それ以降、大家さんたちともよく話すようになって。
で、うちも拠点探してるんです、って。
こんな奥まってるとこなんて考えてなかったし、こんなにでかい必要もなかったんだけど、笑、ありがたく貸してくれることになった。
…という、ちょっと外堀を埋めたのち実現した、という感じ、笑。

最初からコワーキングスペースを作ろうと?

そんなのはなかった。
あくまでここはOHYA UNDERGROUNDを運営する、LLPチイキカチ計画の拠点。

なぜ今の機能に落ち着いたんですか?

いや、まだ落ち着いてないよね、何すべきかまだ模索中だよね。
大谷エリアに可能性があるって、大なり小なり事業を起こそうとしてる企業が当時5社ぐらいあって、大谷の資源を使った事業や研究がたくさん起こってきてオフィスが必要なんだ、っていう時期になってきてた。
で、オフィスでそういう人たちが出会って新しいことが生まれたらさらにいい、って。

そう言ってて退けなくなっちゃった結果、できたとも言う、笑。
大谷で色々蠢いてる状況があったから、大谷にオフィスが必要になった、ということ。

みんなが同じタイミングでざわざわ…ってなってきたってことは、これから大谷おもしろくなるぞ、みたいなムードがなんとなく全体に起こり始めた時期だったんですかね。

あとは、ワークスペースみたいな場所がないと、大谷が消費の場所になってしまって資源を食い潰されて終わる、となる可能性も防ぎたかった。
研究の後、不法投棄して帰るとか、実際に過去あったから。
街の人とかとコミュニケーションを取ってたら、顔を合わせてたら、そんなことは起こらなかったかもしれないな、と。

大谷のワークスペース=OHYA BASEができたことで変わったなぁ、って思うことあったら。

OHYA BASEができたから何か、っていうか、それ以上に大谷町の周りのスピードがすごい。
お店が増えて、人が来るようになって。
かつての湿度の高いダークなイメージがほぼ完全になくなった。

アングラな大谷…と言っても悪い感じのダークじゃなくてパワーのあるダークさが、ぐるぐる渦巻いてる時代があったの。
大谷のこの湿気のある暗い空気にぴったりのムーブメントみたいな。

見た目上は消えたけど、たぶん今大谷で事業をやっている人たちは、大谷はそういうのも抱えてここまできた、っていう共通の認識を持った上でここにいると思っていて。
今までの大谷に関わる人たちに強さが出ちゃうというのは、自然とそうなっちゃうんだよね、本当に強い気持ちを持って、覚悟を持って動かないと動けない場所でもあるから。

なんとなく、今の時点でバラバラな状態に見えているけど、でもそれはポジティブに受け止めていて、僕は。
いろんな人がいていろんなことをやっている、いろんな人を受け止められるのが街として自然な在り方。
来る人がセレクトできればいいじゃない?って思ってる。
生き生きとした「街らしい状況」になってきたことが素晴らしい。


でもみんなどす黒い部分を知ったその上に立脚して事業を起こしてる、っていう一体感はある。
根底の部分は共有している、というか。
だからアウトプットの仕方が違って目に見えるものはバラバラに見えてもいいのかな、と。

で、さらにこれからこの明るくなっちゃった状態にポーンて入ってくる人たちが来たら、さぁ、何が起こるかな、っていうのは興味がある。
敬遠されてた時代を経て、今の大谷で何かやりたい人たちが増えている。
それがいいな大谷って思ってる。
ここからの数年でまた変わりそう、面白くなりそう。


遠くない距離に、豊かな時間を過ごせる場所がほしい。

じゃあ、インタビューの最後に。
これからやりたいなぁ、生み出したいなぁ、ということがあれば教えてください。

定住する意欲がないので家も持っていませんが、笑、近い別荘が欲しい。
あんまり遠くない方がいいなぁ、と思ってて。
移動だけでツラくなるから、笑。
普段は街に住んでた方が便利だし快適だけど、ちょっと思い立った時に足伸ばして、森の中とかでのびのびできて、気持ちいい景色のなかで朝メシ食って、出勤する。…っていうのができる場所が欲しいです。
そういう場所があれば、そういう生活をしたい人たちが集まってくるじゃん。
そしたら、朝メシの時とかなんども会うようになってきたりして。
そんなメンバー、絶対、話が合うでしょ?
1泊2泊で遠くに泊まるだけの旅だとそういうのは起こりにくいから、そんなに遠くない距離に、そういう豊かな時間を過ごせる場所があったらいいな、と。

すごくいい。
わたしも利用させてほしいです…!
そんな場所ができる未来を期待してOHYA BASEで頑張ります。


〜インタビュー後記〜

株式会社ビルススタジオ代表にして、OHYA BASEの運営者、塩田さんのインタビューでした。
ギャグを飛ばしてドッカーンと笑わす!みたいなことはしないけど、いつも面白いことを考えてて、それをぼそっと独り言みたいに言う。
そんな感じがこのnoteで伝わってるといいです。

大学生時代半年間だけヨット部に在籍してた(地下が好きって聞いてたのにまさかの太陽と海!)とか、出版社でバイトしててブライダル雑誌の編集部でウェディングドレスの画像を切り抜いてたとか、そんな「らしくない」話も聞けたんですが、
文字数が足りません。
お蔵入りはもったいないから、いつか出しましょう。

最後にいつものヤツ。
インタビュアー管理人による、ビルススタジオ塩田さんを知るための3つのキーワード!

illustrated by 森冨 優衣

1. ずらして、アピールして、真ん中っ子気質
2. 冗談と本気の境目(が、わからない)
3. 寡黙に見えて、実は人なつこい

この編集後記は管理人の独断ですが、きっと塩田さんを直接知る人たちは「わーかーるー!」と言ってくれるのでは?
そして日々これを目の当たりにして、尊敬の念を抱いたり、笑ったり、うなったり(?)しているとも思います。

そうそう。
こんな代表のいるビルススタジオ、スタッフ募集しています。

ついでに言うと、OHYA BASEも利用者随時受付中ですよ。

どちらもお気軽にお問合わせください。

次回はOHYA BASEのリーフレットイラストでもおなじみ、作家・たまねぎ図書さんのインタビューを、5月末に。
6/4(土)からは、たまねぎ図書 個展「くらしのゑ」も控えてますよ。
楽しみ楽しみ。
ではではまた!

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