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20070818 ミッドタウン、スティーリー・ダン

東京2日目。東京ミッドタウンにオープンした「ビルボードライブ東京」に出かける。その、こけら落とし公演は何とスティーリー・ダン。初日のファーストステージを鑑賞してきた。高校時代から今まで、音楽の中心軸にブレる事なく立ち続けている彼らを、このような小さめのハコで観る事が出来る幸せ・・・。これまでの日本公演は全て大きなホールが中心であっただけに喜びもひとしおであった。1993年の初来日の時、僕はかなり落ち込んでいた時期で、自分を再確認する意味も含め、東京〜名古屋〜大阪〜福岡と彼らを狂った様に追いかけたのだった。最終日、会場の外で偶然見かけたピーター・アースキンにドナルド・フェイゲン宛の手紙を渡した事が、昨日の様に思い出される。今回の公演も・・洋楽に目覚めた高校時代や社会人として中途半端だった自分、この25年ほどがフラッシュバックする瞬間が演奏中に何度もあり、泣き出しそうになってしまった。客層は、彼らのサウンドが時代の最先端を突き進んでいた現象を実体験している50代が中心だったと思う。当時、スティーリー・ダンがどれだけ特殊な存在であったか、今となって語るのは実に難しいのだが・・・。FMやレコードを真剣に聴き、ハイファイなサウンドに憧れていた音楽ファンの理想郷に佇んでいた事は確かである。周辺の音楽を聴けば聴くほど、彼らの技術とひねくれたセンスの絡み具合は更に際だち、「もうこれ以上は望めない」という(この種の)音楽の到達点を知る事が出来たのだ。自分は彼らのハイエンド的美意識にどれだけ支えられてきたことだろう、今の若い人が聴けば、クラシックとして認識されてしまう音楽なのかも知れないが・・・。ドナルド・フェイゲンが昨年発表したソロアルバム最終章「Morph The Cat」は、そんな時代を邂逅するかの様な(古いミュージカル映画を観ているかの様な)アルバムであったが、今回の内容も、まさに時代を背負ってきた風格に充ち満ちていた。ステージに登場した時の彼らは聖者が行進している様に見えた。

20201231 追記

スティーリー・ダン・・・!その後もずっと情報を摂取するように努めていますが、ウォルター・ベッカーが2017年に他界してしまったため、もうライブ観ることは出来ないですね。ただ、所謂スティーリー・ダン・マナーを継承しているフォロワーの成長も凄まじく「彼らの遺伝子を楽しむ」ということで、音楽的好奇心を満たしている人も多いのでは?身近なところでは冨田恵一さん(冨田ラボ)の洗練されたサウンドに、文脈を感じることが出来ますね。冨田氏は2014年に「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」という著書も出版されており、ドナルド・フェイゲンの何が素晴らしいのか?一曲ずつ丁寧に解説しています。

2020年9月に発行された「AOR AGE」(シンコーミュージックエンタテイメント)ではなんと「ガウチョ」のジャケットが表紙で、「80年代の到来を告げた野心作を徹底解剖」という特集が組まれていました。フォロワー達のインタビュー記事も興味深く拝読しました。

また、ウォルター・ベッカーを追悼して聖編集されたブライアン・スウィート著の「スティーリー・ダン・ストーリー」(DU  BOOKS)も2017年12月に発行された他、ダンを再結成に導いた立役者アンソニー・ロブステリ自らが編纂した「スティーリー・ダン大事典」は今年2月に発行されています。

優れたミュージシャンは、活動が終わっても、長い間作品について語り続けられることが多いですね。

ドナルド・フェイゲンの活動は(ライブを除く)2012年のソロ・アルバム「Sunken Condos」を最後に止まっています。そろそろ「新作を聴きたい!」と思っているのは僕だけではないでしょう。2021年に期待したい・・・


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