販売時の説明で他社商品との混同を防止できるか
[令和4(ネ)10095、令和4(ネ)10112/不正競争防止法/損害賠償請求控訴事件/知的財産高等裁判所]
①商品の形態を周知の商品等表示とする不正競争行為
②商品の説明及び試用を経て販売した場合の不正競争行為該当性
③商品の説明及び試用を経て販売した場合の損害額の推定の覆滅
(1)事案の説明
本件は、商品の現物等を示した説明と試用を経た後に発注されるという販売経路による販売行為について、不競法2条1項1号の不正競争に当たるとして、損害賠償を求められた事案である。
なお、本件とは別件の訴訟において、原告商品の形態が周知の商品等表示に当たり、被告商品の販売行為が不競法2条1項1号の不正競争に当たるとして、その販売差止め等を認める判決が確定している。
(2)不正競争行為該当性について
需要者は、実物を用いた説明などによって被告商品が原告商品と同一形態であると認識し、原告商品の形態に化体した信用により、被告商品の購入動機を形成していたと推認され、被告商品を原告商品と混同するおそれや、原告と被告の間に何らかの緊密な営業上の関係が存すると誤信するおそれが具体的に存在していた。
いかなる販売経路であったとしても、周知の商品等表示である原告商品の形態と酷似した被告商品の形態を認識することができるから、混同のおそれが存することは、販売経路によって異なるとはいえない。
差止請求される場合と損害請求される場合において、不正競争行為の成立する範囲を別異に理解すべき理由はない。
(3)損害額の推定の覆滅について
不競法5条1項ただし書きの「販売することができないとする事情」とは、不正競争行為と販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいうものと解される。
需要者が現実に誤認混同しなかったとしても、原告商品と被告商品が強い競合関係にあり、被告が被告商品への切り替えを促すという方法により販売していたことからすれば、被告商品の販売が行われなければ、同数量の原告商品が販売されたものと推認するのが相当であり、誤認混同の不存在は、「販売することができないとする事情」に当たらない。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/955/091955_point.pdf