204 二次小説『アオのハコ』㉟ 第十話「良くないこと」、その1(18禁になりました)
私の指は大喜くんの唇に触れることはなかった。さすがに私も自重した。一気に恋人関係になる勇気、蛮勇がなかった。そんな気持ちも少なからずあったけど常に居候させてもらっている理由を考えてしまうのが私だ。結局私の左手が触れたのは大喜くんのおでこだった。
「冷えピタ剝がれてる」
私はベッドから降りて大喜くんのおでこに貼りなおした後、今度こそ大喜くんの部屋を後にしたのです。
「そのまま寝てなさい」
それがその日の私の大喜くんへの最後の挨拶だった。
でも隣の部屋に引きさがった後、むしろ私の拍動は激しくなっていた。というより大喜くんを押し倒す形になってしまった時から続いていたけど、その時はその状況に夢中になって自分の肉体的な変化を自覚できなかっただけかも知れない。しかし一人の状況になれた今、改めてたった今起こった大喜くんとの出来事を反芻してみる。
大喜くんを励ましたい、元気づけたいという気持ちで大喜くんの傍にいたかった気持ちに嘘があるはずがない。ミサンガの仲、まだ恋人ではないけど好きな男の子を純粋に心配してした行動だった。
でももう一つ、大喜くんを摂取したい気持ちも強烈にあったのです。お互いのインターハイへの予選が終わって早朝練習では顔を合わせていたけど、大喜くんから積極的に話しかけてくれることはなかった。私から話しかけようにも何かバリアを貼っているような感じで、気軽に話が出来る機会がなかなかなかったのです。
まして私はインターハイ、大喜くんは蝶野さんや匡くんとテスト勉強で忙しくしていた状況では、なかなか私は大喜くんと一緒にいられる状況を作れなかった。しかしそんな状況で私は徐々に気づいていったのです。何か得体の知れない心のモヤモヤが蓄積していくような感じを。それは本当に心理的なもので、バスケの練習では相変わらず万全に動けてた。しかし心理的なものは良くも悪くも肉体的な影響をもたらすものだから、過度に気にする必要はないけど原因は何かと思いめぐらすようにはしていたのです。
そして私は水族館での大喜くんとハコフグの写真にほっこりしたり、ミサンガを結んであげた思い出、「大喜くんなら、大丈夫だよ」と、大喜くんの未来を無邪気に応援した頃を思い出して心が温かくなり、大喜くんの摂取不足が原因と気づいたのです。
原因がわかれば私は頑張れる。そんな機会を逃さないと私は決めていたのです。だから今日、大喜くんが体調を崩して早々に家に帰ったと匡くんからのLINEが来たとき、久々に大喜くんを摂取できる機会と嬉しくなったとともに、大喜くんも私の摂取不足で体調を崩したと思うことが出来、二重に嬉しくなったのです。
そしてついさっき大喜くんと久しぶりにたくさんお喋りができ、次からのインターハイのための練習に邁進するため、十分なエネルギーを補給できたと思えたのです。
だから最後に大喜くんに覆いかぶさってしまったのは私にとって想定外のご褒美だった。その心の準備をしていなかった恋人しか許されない距離、私は全然いやではなかった。私がほんのちょっと性的に貪欲だったら、すでに恋人同士だったら、後先考えないでいられたら。大喜くんを最初は優しく、次第にしっかりと抱きしめていたはずだった。私の大喜くんへの想いはそれほど成長していることを自覚していた。
それを確かめるため、私は右手を自分の左胸に乗せる。もちろん大喜くんの手と妄想して。これまでも大喜くんをおかずに自分を慰めたことはある。しかし大喜くんを摂取できなかった最近はそれこそ慰めに相応しい作業だった。
インターハイに向けた練習が本当に実のあるものなのか、確かに部内での切磋琢磨があり、監督の要求に応えることが出来つつあると自信を持つことが出来た。しかし全中の一昨年と最初のインターハイの昨年、二年続けて挑戦に失敗した身として、今回インターハイ出場を果たしても容易に自分を信じることが出来なかった。
こんな時大喜くんとお話しできれば気持ちを落ちつかせることが出来たけど、すれ違いが多くなったこの時期、フラストレーション解消のために自分の身体を悪戯していたのです。
でも大喜くんを看病して大喜くんを十分摂取した後、大喜くんを押し倒したという最大のご褒美を体験して、私の左胸に置いた「大喜くん」の右手からの感触は歓喜だった。そっと置くだけで大喜くんの私への想いが感じられた。それは憧憬や尊敬とともに、どうしようもない劣情も確かにあった。実際の大喜くんの私への接し方、眼差しから考えても私を性的に見ている、見てくれているのは明らかだった。
だから私は想像の大喜くんに私の胸を揉ませてあげる。最初はそっと、そしてゆっくり、私の胸をその掌に確かめるように、堪能するように。それに私は荒い息を吐く。そして歯を食いしばる。それは歓喜の反応だった。私の上半身は簡単に火照り、熱を発散しなければ耐えられない状況になった。
前が空いていたパーカーから腕を抜き、Tシャツを胸が出るまで裾を上げる。そして交差した手でそれぞれの胸を慈しんだのです。ブラの上から掌全体をつけてゆっくり推しつぶしたり、肌が露になっている場所に唾を付けた指先でなぞったり。そして布の上から急所を擦る。
私はたまらず背中を上げ、すぐに沈ませる。でもそれだけで私の大喜くんが満足するはずがない。ブラを上げて私の左胸に吸い付く一方、右手は縦横無尽に私の身体をいじくり倒す。私は自分の乳首を赤ん坊に与えるように大喜くんに吸い付かせながら、大喜くんの手触りによって身体全体から大喜くんの愛情を貪る。
そして大喜くんは両方の乳首を片方ずつ舌で舐った後、指先でそれぞれにいらう、擦る、押しつぶす。私は歓喜の悲鳴を迸らせたかったけど、もちろん現実にはそんなことは出来ない。だから私は蹲ってハンカチを噛んで声を押し殺し、歓喜と情欲を自分の内側に籠らせたのです。
手は引き続き交互に宛がって、下を向いて形がよりはっきりした、汗ばんで熱がこもったふくらみを悪戯する。掴んだり形を確かめるように輪郭をなぞったり、ふくらみを下からなぞったり。そして私は大喜くんに両方のふくらみをつぶしてもらい、妄想の大喜くんとの性愛を終えたのです。
現実だったら大喜くんはこれだけで満足するはずはない。でも私はこれで大喜くんへの愛を確認でき、大喜くんの私への愛を確信することが出来た。だから私は下半身の粗相を簡単に処理し、気持ちよく床に就くことが出来たのです。