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056『ぼっち・ざ・ろっく!』、そして『ガールズバンドクライ』!② ぼざろとガルクラ、それぞれのロック

 比較の意味でももう一回、今度はメタでなく登場人物の想い/思いから、ぼっちちゃんが喜多ちゃんを引き留めた場面について。その前に虹夏ちゃん、ぼっちちゃんと一緒の喜多ちゃんに悪態の一言を言った後、何故ライブハウス、スターリーに招いたか、不審がるブロガーがいたのを覚えています。
 でも当時から虹夏ちゃんの菩薩対応はそれほど不自然でないと思っていました。何故ってバンドマンの人口、特定の生まれ年での推移を見て行けば最初は供給過多でもある年齢を境にガクッと人数が減り、需要を満たすことが出来なくなるのは必定だから。最初バンドマンが振り落とされるのは楽器や歌唱の技術的な壁と思うけど、二番目として一人ひとりの外的環境が意外に障害になると思ってて。
 山田リョウが以前いたバンドを離脱したのはバンドが売れ線を意識し過ぎたらしいけど、典型的には親や親戚からの圧力、あるいは仕事が忙しいとか面白くなってバンド活動がおろそかになるとか。スタジオミュージシャンだって何の保証もないから続けるには勇気がいるはずだから、楽器が出来る人間は常に求められてるのが音楽系の芸能界の傾向かと。
 さらに虹夏ちゃんはお姉ちゃんが経営するライブハウス「スターリー」での実体験、そして出演してくれてるバンドマンからの話として、バンド活動のごたごたは呆れるほど知ってるはず。だから一回悪態をついて喜多ちゃんを落とした後は、喜多ちゃん自身は合わせる顔がないだろうと察してはいても、平気に菩薩対応できたのだと思う。いちいち気にしてたらバンドなんてやってられないと。
 そしてぼっちちゃん、何故この時醜態を晒してまで喜多ちゃんを引き留めることが出来たのか。それは出会いが奇跡と知ってるから、醜態なんてそれまで何度となく晒してきたから。ギターを教室に持ってきても誰も声をかけてくれなかったり、放送でデスメタルをリクエストして教室のみんなに引かれたり。
 そんな後藤ひとり、児童公園で佇んでいた時に声をかけられたのが虹夏ちゃん。その理由がギターを持ってたこと、そしてバンドメンバーの欠員。その最初のライブ出演は段ボールの中での演奏になるんだけど、それが僥倖であることはぼっちちゃんは気づいたはず。そして今度は喜多ちゃんとの出会い。
 ぼっちちゃんはスターリーで一緒にドリンク出しなどのバイトをし、その陽キャに自分にないものを見たはずで。そして虹夏ちゃんの菩薩対応で、喜多ちゃんと一緒に結束バンドが出来ると思ったはずで。だから喜多ちゃんの帰り際のこれっきりという言葉に、即座に反応できた。それを虹夏ちゃんが翻訳してくれ、ぼっちちゃんの思いを喜多ちゃんに的確に伝えることが出来た。それが『ぼっち・ざ・ろっく!』のロック、仲間と泥臭い行動だと、アニメを観た当時、思うことが出来たのです。それまでの関係性で虹夏ちゃんがぼっちちゃんの行動を翻訳できる理由も納得できたし。
 漸くガルクラです。何故仁菜ちゃんは見えない桃香さんに対して、負け犬の遠吠えに終えるかも知れないのに「中指立てて下さい!」と吠えることが出来たのか。簡単に言えば多分、本音が言えた他人だったから。仁菜ちゃん、多分お姉さんとは関係悪くないと察するけど熊本にい続ける理由にはならなかった。
 しかし仁菜ちゃんが実家を出ることになった事情をくまなく知ってる熊本の人間より、幸運でお近づきになれた憧れの人の方がよっぽど自分に寄り添ってくれた。桃香さんにしてみれば自分も同じように都会に出て来たし、世間知らずさとそれでも単身で都会に出たこと、そこに深い/重い理由があると容易に察せられたはず。だからプレゼントとして置いて行ったエレキに「中指立ててけ!」と殴り書きしたと。
 でも仁菜ちゃんはそんな贈り物は卑怯と思ったはず。「空の箱」を歌う桃香さんに憧れたんであって、現実の桃香さんが故郷に帰るなんて、それはないでしょうと。ファンの勝手な思いと仁菜ちゃんも自覚してるけど、桃香さんはずっと憧れの存在でいて下さいと、ずっと自分の先を歩いて下さいと、そうでなければ「中指立ててけ!」というメッセージは受け取れないと、それが「一緒に中指立てて下さい!」の意味と思うのです。
 その雌叫びに感銘したから、多分ダイダスの桃香と知って縄張り争いしてたはずのバンドマン二人も、意気に感じて演説した女の子、そしてドラマのように現れた桃香のためにセッションしてくれたのだと思う。それが『ガールズバンドクライ』のロックで、お話しとしても美しい場面と思う。そして既に何人か言及してるけど、セッションした四人の一体感は半端ないけど、立ち止まって聞き入る人間がないのもいい。それを確かに画にしたことがロックそのものと思うのです。

参考:山田リョウ - やまだりょう - ピクシブ百科事典 - Pixiv


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