170 輪島行き中止。『アオのハコ』と『タッチ』②
予定ではノート型を持っていないので次のnoteの更新は早くても土曜日だったのですが、昨日の能登の余震が意外に響いたらしく、今日になって金沢から輪島に行くボラバス中止のeメールが来ました。なのでいきなり二次小説の続きを更新するわけにいかず、こうして連続更新が止まらなかった言い訳を書いているのです。
さて『アオのハコ』、能登に行く直前になってどうしようかと思いましたが、結局今週の月曜日、第10巻を買いました。アニメでここまで描くか不明だからぼかして書くと、千夏先輩の過去話。今放送中の部分が懐かしくなるくらい重い話になってます。多分これが『アオのハコ』の柏葉英二郎かと。ということは『アオのハコ』、学生の身分という箱庭の中で物語を展開させると推察でき。
そして『アオのハコ』、今さらながら熱血マンガと思える巻でした。『タッチ』で上杉達也が熱血した最初は高二で初めて臨んだ夏の東東京地区戦、二回戦の対勢南戦だと思う。しかしこの時は観衆とナイン、明青ベンチの雰囲気にのまれ、知らずに死力を尽くしてしまった結果。実際、上杉達也、高二の夏が終わってからはコメディ寄りの揺れ戻しがあったし。
しかし『アオのハコ』、特に主人公の鹿野千夏と猪股大喜、「カッちゃんはいつでも全力投球」のカッちゃんタイプ。それは上杉和也同様、小さいと言える頃からその競技に夢中になったから、なれたからと思われる。
その点が上杉達也とは違う。達也はやればできるけど、がんばる弟の和也に譲ってしまう優柔不断さを持つ。それは物事を俯瞰的に観れることだけど、考えすぎてしまうことでもある。南がくれたファーストキスを「忘れろ」と言ったり、須見工とやる前にノーヒットノーランをやってしまったり。特に後者、原田から「あれはタッちゃんじゃねえ。ましてやカッちゃんでもねえ」と言われた。
しかし鹿野千夏に猪股大喜、針生健吾や笠原匡にはそんな達也のような屈折は見受けられない。いや、例えば千夏ちゃんは蝶野さんの大喜くんへの思いを知って猪股家に居候している自分を客観視する場面がある。しかし千夏ちゃんはインターハイのため、蝶野さんの想いを知りながら度外視する。つまり考えないようにする。
大喜くんも似たところがあり、千夏先輩と針生先輩の仲に動揺しても、ことバドに関しては「いつも一生懸命」。だから針生先輩は大喜に目をかけ、ダブルスのペアとして鍛えようと思ったのだと思う。
上杉達也と似たような鬱屈が明示されているのが蝶野雛ちゃん。大喜と千夏先輩の仲を最初は応援しようと思ったのに、自分の大喜への想いに気づいてのっぴきならなくなる。その一端が表れたのが第6話「がんばれって言って」で、上で書いた通り千夏先輩も蝶野さんの想いに気づく。
『アオのハコ』と『タッチ』を比較して他に面白いと思ったのは作劇の点。「ボケの美学」ともいわれるあだちマンガの特徴については『アオのハコ』では鹿野千夏で有効に働いていると思う。しかしもう一つ、落語ファンのあだち充がクスッと笑える劇を目指しているのに対し、『アオのハコ』のコメディは基本の顔から崩れるので、コメディより(表現として)ギャグ寄りになる。それが『アオのハコ』が(やはり貶しているわけではないですが)ライト感覚のマンガでない特徴と思うのです。(大塩高志)