「送りますよ」男子発言ノート13
これまでに何度、
一緒に飲んだ男性がタクシーに乗って帰っていく姿を見届けただろう?
そしてなぜ誰も私を、
タクシーに乗るまで見届けてくれないんだろう?
「……だから、見送ってくれる男性がいたらキュンとしますね〜」と飲みの席で話したら、前に居た男性がニコニコしながら言った。
「じゃ、今日は僕が送りますよ」
ッカー! なんて調子のいいことを!!
そう社交辞令を苦笑いしているうちにその話題は流れ、自宅まで2時間かかるところをタクシーで2万円掛けて帰るわけもなく、一次会終わりでその人が「2次会行く人こっちー!」と手を振っているのを輪の外から見届けたところで、ひっそり終電で帰宅の途に就いた。
*
こうしてその日も見送られることなく終わったわけだけど、なぜこれまで私はいつも男性が先にタクシーで帰ってしまうのを見届けることになるのだろう? ホステスさんか私は。
いつものパターンはというと、
①逃す
終電を逃しても飲みつづける。
→②出る
深夜〜明け方、閉店とともに店を出る。
→③拾う
タクシーを拾う感じになる。
→④促す
たいていの男性は「先にどうぞ」とタクシーをあてがおうとしてくれるのだが、あいにく私が乗って行く方向は反対車線だったり、タクシー代を節約したくて(でもそうとは言わずに)、「もうちょっと大通りまで行ってから乗ります」とか言って、男性に先にタクシー乗車を促してしまう。
→⑤ブーン
男性「そ、そうですか?」とあっさりブーンと行ってしまう。
決まってこんな感じ。だけど……
深夜や明け方の不穏な街の片隅で一人、タクシーを探しやっとつかまえて乗って帰るのは、実はちょっと怖いし、そしてやはり、さみしい。
私を置き去りにして帰ったのが、それがたとえ意中の男性であってもなくても。
女性として心配されてないんだな。大切にされてないんだね。そう思ってしまってこれが実に、さみしいのだ。
期待なんかしてないけどさ。
言ってしまえば①の時点で、
「あれ? 今夜どうにかなったりするかな私たち。んなワケないか」
とか頭のどこかに多少あるし、
②と③の間なんか特に、
「あれあれ? この後いよいよ私たち、どうにかなるかね。なワケないか」
なんて思いながら男性がタクシー乗って去ってく瞬間まで一応ちょっと緊張するし、なんなら振り返って歩き出した私にキーーーッてタクシーがUターンしてきて、
「やっぱこのまま帰れない、俺」
とか言われたらどうしよう! とか心配してるし、そう完全にドラマの見過ぎなんだけど、まぁ、全然一人で帰れるんだけどさ……!
そういえば以前。異国の地で男友達のクラブ遊びに付き合った時は途中で私もう帰りたくなってでもあっちが「そう? じゃ、バイバイ」ってなりそうだったので、その時はさすがに「危ないんだからタクシー乗る所まで送って!」って頼んで見送ってもらったなぁ。
頼まれなくても、一度は断られても、あきらかに襲われなさそうな年齢&容姿でも、女性の帰り道は一応は心配してほしいもの。その気があってもなくても。こちらも、ちゃんと帰れるよう自己責任で努めてはおります、が。
それと忘れずに、少しでも男性側へ嫌疑をかけた“送りオオカミ”化の妄想も、非礼を詫びつつ毎度きれいさっぱり消去しておりますので、どうぞご容赦いただけましたら幸いです。
-----
✒マンガ版も併せてぜひ!
漫画『男子発言ノート』第10回「送りますよ」(漫画:つきはなこ/原作:大島智衣『男子発言ノート』)
💬 Twitter お気軽にフォローなど。