「晴れ男だから」男子発言ノート11
「焼き肉が食べたい」と男友だちから連絡がきた。
「久しぶりの焼き肉を一緒においしく食べられるのは……?」って考えたら私だったという。光栄なんだか、なんだかな。
「日本の? 韓国の?」と訊くと、「どう違うのかよく分からない。どっちでもいい」と云うので、前から行ってみたかった韓国料理屋に招聘した。そうして、うまいうまいね言いながら肉を焼いては葉っぱで包んで二人で食べた。
彼に好意がないわけではないけど、なんなら実は元カレだけど、今さらまた付き合うという感じでもなく色っぽい接触もない。だからって恨めしく思ったりもない。
そういう相手なら、こうやってたまにうまいものを一緒においしく食べる、それだけの関係もなかなか良いかもしれない。お互いに実に気楽。少しでも好きな相手だと、食後の胃もたれ感ハンパないからね。
しかし、食後のデザートを、と入ったカフェで気楽なお喋りを楽しみながらも、私には気がかりなことがあった。雨が降り出したのだ。
(どうしよう、原付バイクで来たのに。雨合羽を持ってきてないよ。濡れて帰ると風邪をひきそうだし、どうしよう。今さら置いてくなんてヤだぜ……そのために「焼き肉×ビール」も「チヂミ×マッコリ」も我慢してアルコール摂取していないってのに。結構ザーザーいってる。)と心中もザーザー。
そうするうち、閉店時間になってしまった。会計を済ませ、店先で雨の様子を窺うと、彼がほがらかに言った。
「大丈夫。俺、晴れ男だから」
ほがらかなんだ、この人は。どこまでも、ほがらか。それは付き合っていた頃から変わらない。んなもんあるかい! とか言う気も起きない。
確かに、雨足が弱まってもいる。この人と一緒に居る間は雨に濡れずにいられるなら、それもまた実にイイ友だちだ。
駅の改札まで見送ってバイバイし、原付を停めている場所にたどり着くまで雨は殆ど止んでいた。
原付に乗ってどんどん走った。走っているうちにでも、またポツポツと雨が降ってきた。
あゝ電車に乗って彼は、原付に乗って私は、どんどん二人は離れていっているんだな。
遠ざかっていく晴れ男を思ってすこし、さびしく感じた。
………
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漫画『男子発言ノート』第12回「晴れ男だから」(漫画:つきはなこ/原作:大島智衣『男子発言ノート』)
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