「才能に惚れた」男子発言ノート26
「好きになってしまった。完全に」
男友だちがとあるクリエーター系女子を好きになってしまったらしい。完全に。
「Xmasイブに告白しようかと思ってる」と言うので、そら良かったねー羨ましいこって。と、イブは完全にバイトの予定しかない私は、ひどくつまらない心地で恋するその男子の葛藤を聞いていた。
だって、女子はいつだって男子にはじぶんだけに気があってほしいのだ。勝手に。
それがたとえ男友だちであっても。身勝手に。
で、彼女のどこに惚れたの? と尋ねてみた。すると、
「才能」
……ウソだね。
そんなのウソだね、完全に!!!
一瞬、ひと筋の光が差してゾクゾクとしたけれど、半信半疑で、でもそんなワケないじゃないかと、続けて訊いた。
才能だけで、男性が女性を異性として好きになる?
外見も好きでしょう?
「うん」
ほらね!! ほおらね、やっぱり外見でしょう!?
なぜなら私は知っていた。その女の子が可愛いことを……。
どこかで一瞬写真を見ただけだけど、完全に可愛かった。スタイルも良かった。その上、才女なのも知っていた。
何が才能だよう! まずその可愛さに惚れたと言いなさいよ認めなさいよ、外見あっての才能でしたと! 中身重視のデキた男ぶるんじゃないわよーう!!
……なぜこんな苦虫を噛んだか。
もはや外見ではなく、才能で勝負しようと括っている私を、長い友だち付き合いの彼はそんなことは知っているはずで、それなのに、それなのに……ここに来て新規の女子の「才能に惚れた」だ? 私には、外見ばかりか私の才能には、これまで一瞬たりとも惚れなかったよねぇええ!!! 身内といえども甘くない正直な評価、痛み入るーぅ!涙
と、勝手に悔しくて、ふがいなくて。惚れられる才能がなければせめて「可愛い」とか下心とかでも、異性として見られることがいっときでもあったんなら浮かばれるようなもの。でもそんなこと、ないんだ。これまでも、これからも。
わかってる。
友近のモノ真似じゃないけど "バカ言ってる" 。
じぶんにそこまで言えるほどの才能があるとは言い切れないもの。
本気でモテたいならまず外見を磨け、も承知。でもしないもの。
だけどホントの本当に、
「才能に惚れた」
なんて、女性の才能のみに勃つ男性が本当にいるとしたら、それは才能でやってこうとしている女子たちにとってのそれこそシンデレラストーリーだ。
そんな逸話、あったら収集して全集にしたい。そうして大切に蔵書して、死ぬ前には地元の図書館に寄贈したい。おーしま文庫つくれたらなおいい。
でもなんていうか、やっぱり……人としてまずは好かれたいかなぁ。完全に。
そして何より。この男友だちの恋、実りますように。ふん!
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