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【大澤・早矢仕研ルポ 号外2】ISSMD2022参加報告|東京大学工学系研究科 大澤・早矢仕研究室
ISSMD2022が開催されました!
号外でお知らせしていた通り、ISSMD2022(International Symposium on Socionetwork Strategies in the Market of Data)が関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構(RISS)と東京大学オープンイノベーション機構の主催により、2月12日、13日の2日間にわたって、和歌山県白浜町にあるホテルシーモア/オンラインにてハイブリッド開催されました。
その様子を報告していきます。
1日目(2/12)
基調講演
主催である東京大学 国際オープンイノベーション機構、関西大学 ソシオネットワーク戦略研究機構から開会の挨拶をいただいたのち、まずはKES International 設立者であるLakhmi C. Jain先生より「パンデミック時の社会貢献について」と題して、基調講演がありました。
KESが作り上げてきたコミュニティが、ヘルスケアや教育といった分野と工学を融合させながら社会にいかに貢献してきたか、そしてコロナウイルスが世界を席巻する中でも、そのコミュニティが、研究者が立ち止まることなく前に進んでいくための足掛かりとなってきたことを強調されました。
パネルディスカッション
コーヒーブレイクののち、株式会社良品計画社長 堂前宣夫氏、東京大学教授 大澤幸生先生、和歌山県庁 桐明祐治氏、三重大学准教授 近藤早映先生、先述したJain先生をお迎えし、それぞれの方からのミニトークののち、早矢仕先生をモデレーターとして、計2時間にわたるパネルディスカッションが行われました。
ミニトークでは、堂前氏は良品計画が経営する無印良品店舗がどのようにして地域に根差し、地域で先細りしつつある産業を再び加速させていく触媒となりうるかについてお話されました。
大澤先生は、人間がいかにつながりを求めているかを強調され、つながりをDJ (Data Jacket) などを用いてデータの中に発見し、発展させていける可能性について語られました。
桐明氏は、和歌山県で行われているワーケーション推進の取り組みとその成果について紹介され、地域と都市が混ざり合いながら発展していく様子についてお話されました。
近藤先生は、独自のコンセプトであるRegion’s DNA(地域の独自性の根源となっているDNAのような特性のこと。地域のDNAを探りながらアノテーションすることで包括的な町おこしが可能となる)を紹介しつつ、東京大学先端科学技術研究センターでの秋田県南陽高校の探究学習支援の取り組みについて紹介されました。
パネルディスカッションのテーマは、今回のシンポジウムのテーマでもある、「楽しさとファンの融合による地域コミュニティイノベーション」でした。英語では、"Fun/fan Involvability for Community Innovation"として、"involve"をもとにした造語 "involvability"が用いられています。「巻き込み力/人を巻き込む力」といった意味になります。ディスカッションの中では巻き込む力だけでなく、巻き込まれる力も重要であり、なんにでも巻き込まれることのできる人こそ、地域のハブとなり変化の中心となるのではないかといった議論がありました。
さらに、都市と地域をまたいで人が巻き込み、巻き込まれる際にはお互いがWin-Winの関係性になるように、地域が消費されないように、往々にして異なる場合が多い「都市のロジック」と「地域のロジック」をしっかり照らし合わせていくことが重要だというコメントもありました。
東京を中心とした都市部では、行政のルールとマーケットメカニズムが日常生活を支配しており、つながりやコミュニティといったあたたかでソフトな人間の一面が薄れているのではないかという指摘を発端に、不安でつながりあいたい人たちが、この一面を求めて白浜のような地域のファン(fan)になっていけるのではないかという意見も出されました。
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大澤先生講演
会場からのコメントもありながら、大いに盛り上がったパネルディスカッションを終えたのちは、大澤先生から
"Let us draw Feature Concepts for Data Federative Innovation Literacy" と題して講演がありました。データを組み合わせながらイノベーションを生み出していくための力である、データ連成イノベーションリテラシーをアカデミアだけでなく、世の中に広めていくことが重要であるという前提を共有されたのち、新たなキーワードである「フィーチャーコンセプト (Feature Concept)」についてお話されました。フィーチャーコンセプトは、データ活用の様子を簡単なイラストで表現することによって、アカデミックな背景を持っていない人でも、データとその活用方法についてのコミュニケーションを可能とするものです。これをさまざまなバックグラウンドを持つ方とワークショップを重ねながら描いていくことで、分類が可能になったり、新たな分析手法が生まれ得たりする可能性について触れ、講演を締めくくられました。
2日目(2/13)
企業講演
2日目は日本語のみでの開催となり、白浜や他地域でコミュニティイノベーションに携わられている企業の方々に、その取り組みについて講演いただきました。
株式会社ウフルの田中正宏氏には、「IoT時代における観光と
データ活用について」と題して、IoTを活用して例えば飲食店でデータドリブンな店舗運営を可能とするようなウフルの取り組みについて紹介いただきました。
アビームコンサルティング株式会社の橘知志氏は、「DX時代、
新たな顧客価値を提供するために求められる能力 ~カギは、未来型の学びの創造~」と題して、DXが推進される世の中では、デジタルを活用する能力と人材を育成する能力を兼ね備えた人が必要になってくること、そしてそのためにはその能力を持つ知的創造基盤を作り、学びをマネジメントしていくことが必要であるとのお話をされました。
共同印刷株式会社の遠藤美菜子氏は、地域でサステナビリティを推進していく可能性を提案するために、対談を実現させました。対談されたのは、白浜であかね材(虫食い跡のある木材)の価値を高めようと活動されている榎本家具店の榎本氏と、株式会社趣味ナビ エシカル消費推進部でSDGsを草の根から広げ、生活に根付かせるべく活動されている黒柳氏です。サステナビリティという視点でつながるおふたりの取り組みは、地域に根差した持続可能な社会を作るヒントになりうるものでした。
パネルディスカッション
2日目は、白浜町でご活躍されている南紀白浜エアポート社長 岡田信一郎氏、株式会社アワーズ社長 山本雅史氏、株式会社白浜館社長 中田力也氏、株式会社たがみ社長 田上雅人氏、秋津野ガルテン会長 玉井常貴氏をお迎えして、ウフルの高橋氏をモデレーターに「和歌山地域での取り組み及び全国における地域ビジネス事例紹介」というテーマでパネルディスカッションが行われました。
5名の方がそれぞれ、会社のビジョンや取り組みを紹介され、白浜のfun/fanを大きくしていくためにどんなことができるのかを中心に、盛んに情報交換・議論が行われました。
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終わりに
今回もお読みいただきありがとうございました!
前回に引き続き、地域に赴きシンポジウムを行うことによって、集う人びとの新たなコミュニケーション、そして価値が想像されていく可能性を感じ、わくわくするものでした。内容をすべてお伝えしきることはできなかったと思いますが、funの一片に触れていただけたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。今後も情報を受け取りたい方はフォローと通知オンをお願いします。次回もお楽しみに!
文責:森原ソフィア遥(東京大学工学部システム創成学科3年)