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「高報酬の仕事がとれる」とは何なのか考える 産業医スキル実践ホスト動画マスターコース

※無料です


はじめに

産業医の仕事のスキルを教えますという研修会や講座、セミナーは数多ある。そもそも認定産業医の単位を取るための研修会でも、たくさんのスキルや知識を教えている。
もちろんそれらの知識は産業医をやっていくにあたって役に立つのは言うまでもない。
ただし「産業医の仕事をとるスキル」について触れた情報はほとんどない。

最近、有名な産業医たちが話し、医師向け医療情報サイトが配信する予定の「高報酬の仕事がとれるセミナー」というものをTwitterで見かけた。

それなりの受講料をとるのは当然として、サブタイトルに高報酬の仕事がとれる、と掲げているもののそれは本当に仕事をとるスキルについて触れているのだろうか?という素朴な疑問を自分は持った。
なぜならそういったスキルは、自分の食い扶持にダイレクトに関わる可能性があるため、身内ではない他人にスッと教えられるようなものではないからだ。

そこで自分もそういったスキルについて考えて、このnoteに簡単にまとめることにした。

なお前提として現在の自分の状況を共有しておくと、産業医をメインの仕事にしている。一つの会社のみに関わる専属産業医ではなく、非常勤(嘱託)をかけ持ちしている、いわゆる独立系産業医といわれるスタイルとなる。

それは本当に「仕事がとれるスキル」なのか

仕事をとれるスキル、と聞いてどのようなものが思いつくだろうか?

ビジネスマナー?
各種面談対応?
衛生委員会の回し方?

確かにそれらは役に立つし、必須と言ってもいいだろう。
しかしこれらは、仕事が『できる』スキルではないか?
仕事ができるスキルは、仕事を続けていくにあたっての必要条件であって、仕事を『とれる』十分条件ではないと自分は思う。

人間は常に手を動かしていたいものである。特に、医師みたいな勤勉な人種なら尚更だ。
仕事をとれるスキルと、仕事ができるスキルを混同したまま、ひたすら『できる』ほうの勉強やセミナー、研修会、内輪の飲み会などへの参加を続けてしまう。それで楽になってしまう。手を動かしていると安心するからだ。

もちろん、仕事ができるスキルを身に付けなければ文字通り仕事ができないため、それらの修得は必須であるし常に努力しなければいけないと思う。
ただし、自分が今どちらを修得しようとしているのかについては常にはっきりとオリエンテーションをつけることを意識したほうがよい。

また、そもそも「産業医の仕事のとり方」という書籍とかは今のところない。
なので、他の職業での方法論などを参考に、自己流にアレンジしていくしかない。
他の職業といっても色々あるのだが、どうするか。

ホストに学ぶ

またホストかよ、お前最近ホスト動画にハマりすぎなんだよと思う方もいるかもしれない。
しかし、ホストから学ぶところなどないと感じるなら、フリーランス要素の強い独立系産業医なんてやめてしまった方がよいと思う。
自分は大真面目に言っている。

彼らは個人事業主として自分の価値を売ることに関し究極の存在だと自分は思っている。
我々と違い、何ら法律の後ろ盾もない状態で、個々の価値を想像もつかないような高額で売り続けている。当然、資格による参入障壁もない弱肉強食の世界であることも想像に難くない。
産業医に限らず世の中全ての個人事業主やフリーランスが参考にするべき存在なのではないかと真剣に考えている。

ホストの場合もまずは固定客から仕事をもらえるようになる(=指名をとる)ところに重点がおかれているようである。
指名をとる事、指名客を来店させ続けてできるだけアップセルしていく事、が二大テーマのようだ(動画を見た限りの知識)。

産業医の場合は安衛法という法律に守られていることもあり、一旦もらえた仕事を維持すること自体は、あまりにも仕事をしないとか酷い事をしない限りはそこまで難しくはないと思われる。ホストでいうなら、月に1回お客さんが来店しなければいけないと法律で決まっているような状態とも言え、反則に近い。
※もちろん、単価を上げていくことを想定するならその後の努力がさらに求められるが

当然ながら、ホスト業界と産業医業界ではそのような事をはじめとした無数の違いがあるため、先程述べたように各自で取り入れるべき部分と取り入れるべきでない部分を取捨選択していかなければならないのは言うまでもない。
先ほど言ったように、産業医業界では他の業界を参考にして個々がアレンジしていくしかない。なのでいずれにしても、こういったことはそのうち必要な作業になってくるはず。

そもそも、あらゆる仕事や業界に興味を持つことは、根本的に産業医に必要とされる資質だとは思いませんか。

ここからは「産業医の仕事のとり方」について示唆に富むと個人的に感じたホスト動画を紹介しつつ、その内容に自分なりの考えを加えていきたいと思う。自分も永遠に発展途上であり、産業医の仕事のとり方等になんら「答え」を持っているわけではない。そのため、答えを示すことはしない。というより、できないというのが正直なところである。読んだ方々が各々の自由な解釈をしてほしい。
そしてぜひ感想や思いついた方法論を自分に教えてほしい。ある意味、自分はそのためにこれを書いている。

※それぞれの動画はキーとなる部分から始まるようにリンクを貼っているが、できるだけ後で時間のある時に最初から最後まで全部見ていただきたい。

誰が本当の顧客なのか

教えて!いつき先生

この動画では「従業員は誰か?」という問いに対し、「■」という凄まじい解が示されている。
当然ホストクラブとは全く構造が異なるためそのまま流用するのは無理があるが、産業医としては反対の概念「誰が顧客なのか」、すなわち誰に価値を提供しなければいけないのか、は常に考えていないといけないと思っている。これはおそらく産業医としてのスタンスによって答えが変わってくる部分で、単純にお金の流れで考えるのも一つの方法だし、どれが正解というのはない。ただ、自分の中ではこう考えている、というものは持っておいたほうが良いだろう。
とにかく、誰が顧客なのか?がブレてしまうと、仕事をもらうまで・もらった後に関わらず常にやることがブレてしまう。逆に誰が顧客か定まれば、MVVも自ずと決まってくる。

担当社数について

ホスジマくん【ゆぐどらしるちゃんねる】

この動画の中では、指名本数(つまり産業医で言うと担当社数に近い)があった方が不確定要素を吸収できるという風に説明されている。
もちろん産業医の場合は月による収入の変動はそこまでないが、雇用契約ではない限り、急に仕事が終了になるかも、などの不確定さは存在する。高報酬で時間数の多い企業1~2件で全ての空き時間を固めてしまうやり方もあるし、たくさんの企業に行く方法もある。それぞれのメリットデメリットは表裏の関係であり、少し考えて頂ければすぐにわかると思う。

当然高報酬の仕事でギチギチに詰めるのが最も攻撃力が高くなるけれども、ある程度産業医をやっている人ならばそれでは回しづらくなってくるということも知っていると思う(超越すると逆に問題にならなくなる説もあるが)。

どれがいいかは本当に人それぞれで、個々のスタイルにあった埋め方をするのが一番いいと思うが、特にスタイルとか考えずに考えなしにどんどん入れていくとクオリティが落ちがちになる。結果としてそれが自分の価値を落とすことにつながる可能性が高いので、自分のスタイルのイメージは明確に定めておくことが大事かもしれない。

そもそも医師がたくさん面接するような案件に行く時点で勝ち目が薄い

たとえば仲介会社の場合でも産業医の募集の仕方がいろいろあって、そのうちの一つに、こういう案件がありますよっていうメールが登録している産業医たちに一斉送信され、応募した医師の履歴書を大量にクライアントに見せてまず書類審査的な事を行い、通った産業医たちで面接するというものがある。

最近はわざわざご丁寧に応募予想人数なんかを書く仲介業者もおり(なんのため?)、そうするとどういう状況かっていうと、20人とか30人とかで採用を争うことになる。
ここまで来ると正直、もはやスキルとかじゃなくて最終的には単純に向こうのフィーリングとかそういう要素が大きく関わってくることになる。
30人の中から5人採るとかならまだしも、産業医は普通1人しか採らない。
30人で争って確実に取れる方法なんてないし、闇雲に応募しては落ちまくるという経験を繰り返すことになるかもしれない。

否定されるのは悪循環に繋がる

エルコレ〜歌舞伎超TV〜

ホストの場合は初回といって、初めてその店に来店したお客さんにはホストが短時間ずつ何人もつき、そのうち一人がお客さんを外に送り出す役割に選ばれたり、その後の指名に繋がったりするというシステムになっている。あたかも面接のようである。
そしてこの動画で明快に説明して頂いているように、最終的に選ばれるのは一人なので、残りは全員否定されることになると。1日に何度も否定され続けてメンタルがやられると。

つまり産業医でもこれと同じことが起きてくる可能性がある。毎週のように就活みたいに面接を受けて繰り返し落ち続けるどうなるか?
自信がなくなってくる。自分にはあまり価値がないと思うようになる。高報酬の仕事なんて自分には無理だって思うようになり、余計にドツボにはまるかもしれない。

一方で全然産業医のスキルもない未経験の医者にいきなり声がかかったりすることもある。
明らかに自分よりアホで産業保健の知識もない、面談もちゃんとできないっぽい、なのに仕事ばっかりたくさん持ってる、そういうやつにムカついたことがある人も多いと思う。もちろん自分もムカつくことがある。

ムカつくで終わるか、そこを越えて行くか?

分母を減らす

Mio Yashiro TV

この動画では、初回は競合が多いので取りにいかず、競合の分母を少なくした状態での戦いを意識せよ、という内容が出てきている(はず)。
もちろんシステムが違うのでこのまま流用することはできないが。

20人とか30人を相手にするのはあまりにも分が良くない。
もうちょっと少ない人数で争うなら勝ち目が出てくる。30人相手にするのと3~4人相手にするのでは単純に確率が全然違う。
さらに言えばそもそも競合がいない、自分しか候補がいない、そういう状況に持ち込めばほぼ勝ち確ではないか。

持ち込む方法は様々な方向性にたくさんあると思うので、各々で考えてください。

一つ確実に言えるのは、募集のメールを口を開けて待っていて、それにお返事し応募してみる、というのは誰にでもできる最もイージーな方法ということである。

単価について

BLUE DRAGON TV

これはもはや動画のままで答えそのものかもしれない。

ただ自分の値段をいくらに設定するかが問題、というか永遠のテーマになりうる。臆面もなく高報酬を提示するという方法もあるけれど、あまり仕事がない状態でそれをしてもそもそも成り立たない可能性がある。
軌道に乗るまでは、取れない高報酬より取れる低報酬じゃないかと自分は考えている。そうしなきゃそもそも始まらない。

どうしてもそれじゃ嫌だという場合は、まずは今の自分に適正な価格からはじめて、信頼関係を築いてから色々考えたほうがいいんじゃないかと思う。

仲介や鵜匠にとって都合が良い産業医

鵜匠というのは、自分で取ってきた仕事を業務委託等で他の産業医にほぼ丸投げし、中抜きしている産業医のことを指す。自分の周りとかで使われているスラングみたいなものである。

仲介や鵜匠の元で働く場合、あなた方は従順かつ優秀な従業員=鵜であることが求められている。
パートナーサクセスとか言っていても、基本パートナーとは思ってない仲介が多いだろう。働いてきてくれてお金を献上してくれるのだから、さっきの「従業員は誰か?」の図式で考えても間違いなく従業員である。

産業医は基本時給で動いていることが多く、出来高歩合制とかではないので、貢献するほど手取りが増えるわけではない。
仲介会社や鵜匠が産業医に求めることは、波風立てずに仕事を無難にやり、中抜き分を献上し続けること、つまり、鵜として魚を無難に運び続けることである。

自分が仲介や鵜匠だったら、という仮定で想像してみて欲しい。
鵜の産業医が値上げしてくれって言ってきてそれに応じる場合、顧客に値上げしてもらって今までと同じだけ抜くか、顧客からもらう値段はそのままで中抜き分を少なくするかしかない。
どちらにしても、仲介側には損こそあれ得はない話である。

よほど特殊な関係じゃない限り、仲介・鵜匠からすれば代わりはいくらでもいて、別にあなたである必要もないので、「給料もっと増やせ」とか面倒なことを言い出すお行儀の悪い鵜はクビにするか無視し、他の鵜を使うだけです。

つまり仲介が入ってる限り、単価云々とかそういう話をするにあたってものすごいビハインドから始まっているというか、めちゃくちゃ効率が悪い。

すでに気づいた人もいると思うけど、仲介とか鵜匠にとってトラブルや顧客からのクレームなく実直に鵜が仕事をこなしてくれることが一番楽なんで、仕事が『できる』スキルを鵜にしっかり教え込むことにはインセンティブが働く。仕事を『とれる』スキルは教えても基本いいことない。独立されたり爆弾(後述)されるリスクが上がるだけである。

簡単に言うと、仕事が『できる』スキルで喜ぶのは仲介や鵜匠である。

冒頭に出てきた「高報酬の仕事がとれるセミナー」に戻って考えてみよう。
配信しているのは?

「爆弾は人殺すのと変わらない」

エルコレ〜歌舞伎超TV〜

産業医業界では、仲介業者が入っていると上記のように単価が上げにくいなどの理由により、じゃあ切り替えてしまおうということで、自分が仲介を介して行っている顧客の企業と話をつけて企業と産業医の間の直接契約に変えてしまうという行為が存在する。

これはもちろん構造は違うものの、ホスト業界で言うところの、同じお店の別のホストがお客さんにモーション等をかけてしまう行為「爆弾」に似ている。
上記の動画でも説明されているように爆弾とはホスト業界において最大級に罪深いこととされており、動画では爆弾は人殺すのと同じとまで言われている。これはつまり、顧客を奪ってしまうということは奪われたホストの収入はもちろん、お店の信頼や店全体の収入も落としてしまい、結局みんなのお金を奪う、ひいては業界全体にとってマイナスとなる行為と考えられているからのようである。

しかしホストと異なり産業医の場合は仲介業者に搾取されているという気持ちが強いためか、この行為は成功失敗に関わらずしばしば耳にすることがあるし、場合によっては産業医が直接契約を結ぶメジャーな方法の一つとして考えられてしまっているかもしれないほどである。

先に断っておくと自分はもちろん産業医でも爆弾は否定派である。理由としては、あまりにも業界が狭いためこういった評判やネガティブな話題はすぐに広まってしまうから、というのが大きい。
やはり信頼で成り立っている部分が多い業界のため、一度こういう行為をしたという人には自分はあまり仕事を頼みたくはないし、あまり心から信頼することもできない、というのが正直なところである。

狭い業界で評判はすぐに回る。実際に自分も、別の産業医のいろいろな評判は聞くことがある。Twitterではいい感じのこと言っている産業医の、実際の仕事ぶりでの悪評を聞くこともある。誰だろうね。
当然、自分も言われているかもしれない。

さて、中抜きがキツすぎると言っても彼らは彼らでもともと営業をかけて顧客の企業を持ってきたのであり、その顧客の企業を何の営業努力もせずに奪い取ろうというのはあまりにも虫が良すぎるかもしれない。
仲介側にとってみれば爆弾によって売り上げや収入そのものを落とされたということになり、確かに人殺しと言われてしまっても仕方がないかもしれない。ちゃんと事業として仕事をやったことがあれば、その気持ちも少しわかると思う。

また自分が爆弾を基本的に否定する理由は他にもあって、結局爆弾で顧客を集めている限り自分の力で仕事を取る力は身につかないと思うからというのもある。それでとった仕事が今はたくさんあったとしても、それが長く続くとはあまり思えない。

殺す人間の世界は広がらない 必ず閉じていく

福本伸行 / 銀と金

関係3方が合意している直接契約への切り替えというものも、稀にだが存在する。そういった場合であれば当然差し支えはないと思うしそれを爆弾とは言わないと思うが、産業医と顧客との間に強い信頼関係があることが当然前提となる。
いずれにしても、仕事をもらって即爆弾というのは無理筋だし、本人の信頼を落とすだけの結果につながる。

このように、稀な条件を満たした時だけの裏技みたいな方法なのであって、直接契約をとるための方法の選択肢に最初から爆弾をあげているようでは、その先の未来はないと言ってよい。

固定観念を捨てる

右京遊戯 TV

この動画では「キャッシャー(会計)」という単語が出てくる。
キャッシャー会計とは、お客さんがホストクラブに来て、レジのところでお金だけ払って帰る事を指す。動画の中では、ホスト一人に対してキャッシャー会計ばかりで50本、つまり50人来たという尋常ではない事態が起きている。(レジだけで帰っても、払うお金は万単位)

当然ながら何もせずにこうなったわけではなく、それまで築いてきた関係性があるからこうなるのだと思うし、別にこうやってお金をとれと言うわけではなく、ここで大事なのはまず「固定観念を捨てること」だと思っている。

ホストクラブは卓についてお酒を飲んで接客して… という固定観念にとらわれていてはこの文化や発想は絶対に出てこないのではないか。

つまり、産業医で言うなら、産業医の仕事はこういう業務、と決めてしまってその枠から出ないうちはそこ止まりなんだと思う。

また、「ファンを作ることの重要性」も示されていると感じる。ファンといえる人が沢山いなければこのようには絶対ならない。普段からしっかりした顧客の関係まではいかなくても、業界内外を問わずファンがいることでなにかに繋がることは多いのではないかと思う。

これも是非見て欲しい(ツリーにシャンパン?コールの動画もあり)。
シャンパンの代わりに青チャートが入っている。3冊で100万円の売上になっている。傍から見れば正気の沙汰ではない。

しかし、「ホストクラブではお酒を入れるもの」という固定観念を捨てた先にこの輝きがある。世界観ごと推して共有してくれるファンがいれば、不可能は可能になる。

おわりに

自分は現状の産業医業界を取り巻く諸問題は決してこのままで良いとは思っていない。

このnoteについては人によって感想は色々あると思うし、拝金主義だという指摘も当然あるだろうしそれは構わない。各々の自由な解釈をしてほしい。

これは自分なりの問題提起であると同時に自らの考えの整理でもある。
なので繰り返しになるが、ぜひ感想や思いついた方法論を自分に教えてほしい。これは本当にお願いしたい。

質問箱なら匿名で意見が送れます。
https://querie.me/user/ohp_pho

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今までのnoteは、「ほぼ全文無料で読めるけれどもお金を払いたい人はどうぞ」ということで値段は付けている形式にすることが多かったけれども、今回は記事の性格上、完全無料に設定しています。

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ありがとうございました。

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