探偵になりたい
幼いころ、僕はコナン君に憧れていた。
それはつまり、工藤新一にも憧れていた。
将来の夢は江戸川コナンと言っていたはずだ。
幼稚園生の頃の話だ。
警察官になりたいと話す同級生が、ママさんたちから褒めちぎられていたころの話だ。
でも、そのころだけの話かと言ったらこれがそうでもない。
小学生のころにハマった物語がある。
そのうちの一つがアルセーヌ・ルパンシリーズだ。
ルパン3世じゃない。
今ではそんなことはないが、当時はルパン3世を偽物扱いしていた。
だって、アルセーヌ・ルパンの話をしてもいつもルパン3世と間違われたから。
純粋に悲しかった。
だから、ある種嫉妬的な感情から3世を嫌っていた。
とにかく全部読んだ。
毎週のように借りて、でも1週間じゃ読み終わらなくて延長したりしてとにかく読んだ。
ユニバに行くよりルパンを選んだ。
テレビから聞こえる楽しんごの「ドドスコスコスコ×3+ラブ注入♡」に身震いしながらも、めげずに読んだ。
彼は世界一の泥棒だ。
でも、探偵としてもやっていけるほどの明晰な頭脳の持ち主。
そしてブロンドの女性にはめっぽう弱い。
紳士の権化だ。
そう、あまりに強くて、美しくて、勇猛果敢な男だった。
ちゃんとライバル刑事さんもいるし、そのやりとりなんて最高以外の何物でもない。
義理と人情なんてものも、もしかしたら薫っていたのかもしれない。
ホームズにももちろん触れはした。
だけど、ルパンのあとに読んではのめりこめなかった。
悪いやつなんだけど、すげえいい奴。
ルパンの魅力には勝てなかった。
あれ?
そうすると黒羽快斗を好きにならんといけないのか?
でも、そこはやっぱりコナン君であり、新一なんだよな。
ここ数年はコナンに登場する人物それぞれの人気がえげつないことになっているから目移りしそうだけど、結局憧れるのは彼一択。
さて。
現実の探偵さんはこんなロマンチックな存在ではない。
浮気調査とかがメインらしい。
そんなものはやりたかない。
だから、探偵を目指すことを僕は諦めた。
でも。
心のどこかでまだ探偵に憧れている。
ススキノのBarに行ったらいるんじゃないかと思ったり(違うか)。
世の中の真実を伝えるという意味では、ジャーナリストは本当は探偵のようであるべきなのかもしれない。
でも、ジャーナリストの存在にそんな香りはしない。1ミリも漂っていない。だから、違う。
いや、知らないだけで気骨ある方は探偵のような存在なのかもしれないが…。雑音が多すぎてそういった方の存在が目に、耳に入って来ないだけかもしれない。
探偵的な職業。
心の持ち方一つで、どんな職業も探偵のようなものになるのかもしれない。
推理を重ね、証拠を集め、真実を導く。
研究者も似てるっちゃ似てる。
あんまり憧れはしないけれど。
(そうなのだ、福山雅治が好きでもガリレオの湯川先生になりたいとは思わないし、科捜研の女(榊マリコ)に憧れても、そうではないとも思ってしまうのだ。ニアミスなのだ。)
僕の中では、バイアスかかりまくっているが、ライブラリアンってのは結構探偵に近いんじゃないのって思ってる。
レファレンスなんてその最たるもの。
そう思うとワクワクしないか??
ただ、そうだとしたら探偵にあって、ライブラリアンにはないものが見えてくる。
冒険心と行動力だ。
これらを身につけていて、楽しんでいる人は、もう探偵だ。
23歳大学4年生。
声高に叫びます。
探偵になりたいです。