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そんなつもりではなかった

寝ぼけたまま着替えてしまい、うっかり上着とズボンの両方がデニムの状態で家を出てしまった。上下デニムのスタイルなど今となってはファッションとして珍しくないのかもしれないが、「上下デニムでいくぞ!」と思った上でそうするのとうっかりそうなってしまうのとでは訳が違う。こちとら心構えができていないのだ。そんなつもりではないのにとそわそわしてしまう。

他人からはきっと問答無用で「上下デニムで揃えてきた人」と判断されることだろう。「よ〜し!今日はあえての上下デニムで街に繰り出しちゃうぞ〜!」と、姿見の前で肩を回してきた人だと思われるのである。「服に無頓着な人」に見られるのはまだいいが、「服でちょっとかまそうとしている人」と見られるのは勘弁だ。かまそうとしているときならいいけどしてないときにそう思われるのは辛い。「違うんです!そんなつもりはなかったんです!」と弁明して回りたいが、「そんなつもりがなかった」ということを証明するのは不可能に近い。

覚悟なき上下デニムの出立ちは裸と同じ寒くないだけ

よかったことといえばこんな短歌ができたことくらいか。これがよかったことにカウントできるのはわからないが。とにかく上下デニム状態での時間の所在のなさといったらなかった。自意識過剰だとは思いつつも、「上下デニムでキメてきた人」の襷をかけているイメージから逃れられず、常に意識のどこかで人目を気にしてしまった。

幸い仕事と仕事の合間に帰宅するタイミングがあったのでそこで着替えることができたが、これが一日中だったらと思うとゾッとする。思えば、昨日寝る前に明日着る服をなんとなくでも決めておけばよかったのだ。眠くて「起きたときに考えればいいや」と丸投げしてしまった結果がこれである。「寝る前に明日の準備をしましょう」という、小学生のころに言われていたことの重要性を39歳で実感するとは思わなかった。先生や親だって伊達に長く生きてはいない。経験をもとにそれなりに有益なアドバイスをしてくれていたのだ。

この反省をもとに、今後は小学生の頃の大人からの助言をきちんと振り返ろうと思う。寝る前に明日の準備をしたり、夕飯の前におやつを食べないようにしたり、ウサギを持つときに耳を握らないようにしたりしながら生きていきたい。

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