明日のアー
「アー」という集団のコント公演「明日のアー」の最新回に脚本協力で入れてもらっている。「明日のアー」は短いネタを次々と繰り出していくスタイルのコント舞台を行っていて、不条理めの内容が好きで過去作をいくつか観ていたのだが、今回主宰の大北さんがSNSで僕の漫画を見つけてくれてお声がけいただいたのだ。
僕は不条理ギャグ漫画が好きなのだが、「明日のアー」にはそれらと通じる「理由のないボケ」が多く出てくる。特に好きなのは、バイカーファッションに身を包んだ姉御肌の女性が颯爽と登場し、目についた人に次々と「気に入った、乗りな!」と声をかけるというくだりである。「漫画やアニメにこういうタイプのキャラいるよね」というあるあるや「バイクがないのに乗っているかのように振る舞う」などのわかりやすく面白い部分もあるのだが、そもそもこの人は何がしたいのか、というところがまったく説明されなくて最高なのだ。「すぐ気に入る」というボケ。どうやったらこんなことが思いつくのかさっぱりわからない。それが好きだ。「すぐ気に入る」て。
他にも、「ドライブマイカーがやってくる」というボケも好きである。これは、張子の車を被った男女がサンルーフからタバコを掲げながら「ドライブマイカーの概念」として登場するというもので、「ドライブマイカーだ!」という周囲の人間の台詞が最高に面白い。「ドライブマイカーだ!」って何だよ。これも全く理由とかがなくて、とにかくひたすらに「何でだよ」でしかない感じがすごく好きなのである。
そんな大好きな舞台の脚本協力をやれるなんて僕からしたら夢みたいな話なので、二つ返事でやらせてもらうことにした。ただ、「脚本協力」というともっともらしいのだが、実際に僕がやったのは、大北さんに思いついた小ネタ(「マジックをやったあとに照れる照れ屋のマジシャン」など)を箇条書きにして投げる、ということのみである。一応脚本に協力はしているから嘘ではないけれど、ずいぶんいいように表現してもらえたものだ。天下り先の役職みたいな配慮。大物政治家でもないのにすみません。
提出した小ネタを元に、週一でリモート会議もした。と言ってもほとんど雑談みたいな感じで、「バネっていいですよね」とか言い合ったりして、楽しかったけど役に立てたかは微妙なところである。僕が思いつきで放り投げただけのネタを、大北さんが膨らませていくことですごく面白いコントになっていく様子を見ることができたのはよかった。僕は普段思いついた小ネタをそのまま1コマ漫画にしてSNSに投稿することが多いので、膨らませかた次第でこんなに面白くなるのには感動したし、仮にも「お笑い芸人」を名乗っているのならそこをやれよ、という気持ちにもなった。
そんなこんなで稽古が始まり、そこから先はどんな感じになっているのかはわからないのだが、明日のアー本公演vol.10『整理と整頓と』は10月24日に本番を迎える。きっと今回も面白いし好きなのだろうと思うが、いっちょ噛みさせてもらっている分今まで以上に内容が気になるところである。ラッキーなことに会場に観に行けそうなので今から楽しみだ。僕の思いつきがどんな感じで内容に組み込まれているのか、はたまた全く入っていないのか、密かにドキドキしながら、「いや純粋に好きだから観にきてるんですよ」みたいな顔をして観たいと思う。