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中華を食べながら

友人と中華料理店で食事していると、離れたテーブルから若者グループの騒ぎ声が聞こえてきた。比較的ざっくばらんな雰囲気の店内でも目立つくらいの声量。大学生の集団だろうか。若いんだし盛り上がるのは結構だが、さすがに気になってしまう。

「誕生日ほんこんと一緒なんだけど!嫌じゃない!?」一人の男が熱弁している。どうやら自身の誕生日がお笑い芸人のほんこん氏と同じ日であり、「誕生日が同じ有名人」を挙げる際に彼の名を出さなくてはならないのが嫌らしい。気持ちとしてはわからなくもないが、その声量でする話ではないよな、などと思いながらも、僕は密かに興奮していた。というのも、何を隠そう僕もほんこん氏と同じ6月16日生まれ。つまり、今遠くのテーブルで騒いでいる彼と僕は同じ誕生日なのである。なんという偶然!

度々分断を煽るような発言で物議を醸すほんこん氏だが、人知れずこんなところで赤の他人同士の知る由もなかった共通点を浮かび上がらせることもあるのである。だからと言ってどうということはないが、こんなこともあるんだなと思いながら餃子とか青菜炒めとかを食べた。食べながらスマホで6月16日生まれの有名人を調べる。ほんこん氏以外にもけっこういろんな人がいた。

席の向きの関係で、同じ誕生日の若者の顔を見ることはできなかった。おそらく今後会うことはないし、もし会っても気づく術はないだろう。ほんこん氏によって瞬間的に薄く繋がった彼と僕の人生は、今後交わることはないのだ。そんな彼にもし一言声をかけることができるとすれば、「元テレ東アナウンサーの森香澄さんも同じ誕生日だよ!」と言ってあげたい。

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