原石鼎のYO・YO
原石鼎の全句集は、なかなか手ごわい一冊なのである。
雑誌や新聞などに発表された全句がおさめられている。
その数およそ8000句。
名作、佳作、駄作、迷作の数々が詰まっている。
原石鼎 YO・YO
その中でも特に異彩を放つのはYO・YOを詠んだ一連の作品群であろう。
YO・YOに銀の二筋春近し
YO・YOの七色どつと春近し
二月のある夜YO・YOに戯れし
YO・YOや春待つ雪の降る日にも
ヨー・ヨー・テー春の情をつむぐらん
朧夜の机の下のYO・YO箱
念のために申し上げておくと、石鼎 in da houseしているわけでもなく、represent 出雲しているわけでもない。玩具のヨーヨーがモチーフである。
どうしてYO?
なぜ原石鼎はYO・YOの句を詠んだのか?
その明確な理由は杳として知れない。
しかしながら、当時昭和7年から8年にかけて日本でヨーヨーが爆発的な流行を見せていた。
裏通の角々にはヨウヨウとか呼ぶ玩具を売る小娘の姿を見ぬ事はなかった。
(「濹東綺譚」永井荷風より引用)
ちょうどこの句群が発表されたのが昭和8年なので、時期的には丁度なのである。
ちなみに
日本中で巻き起こったヨーヨーブームは昭和9年にはパッタリと止んだ。
無常である。