テレビアニメーション設定制作のこと(原作とは無関係)その4
アニメーター列伝:村田俊治
村田さんがタイラー#2の原画マンとしてやってきた。バイクにまたがり肩パットと鋲のついた服を着て。
ラジオ制作会社から転職したての24歳の大野には、村田さんの姿はどー見てもマッドマックスか北斗の拳の悪役にしか思えなかったのだが、聞けば機動警察パトレイバー劇場版の冒頭、富士の樹海での無人暴走レイバーと自衛隊の戦いを1人で描いたという。
村田さんは#7から作画監督も兼任することになった。
村田さんの作画監督回の演出はいつも澤井幸次さん。澤井さんでないと村田さんと合わないだろうという制作的判断だ。スタッフ同士の力関係は、細かく各セクションに渡って注意を払わなくてはならないデリケートなものだ。
クリエイティブの世界でも重要なのは、やはり人間関係だった。
アニメーター列伝:松本憲生
おそらくタイラーで一番多くのカット数を描いた原画マンが松本さんであろう。
第1話も多分3割は松本さんの原画ではないだろうか。ラアルゴンのシーンは全部松本さんだったように思う。
タイラーと面接官の会話シーンも松本さんだ。
二つのエンディングも両方松本さんが手がけている。エンディングの映像が2パターンになったのは、諸般の事情からである。
松本さんはタイラー制作時、国分寺の白馬スタジオまで、当時住んでいたアパートから毎日2時間歩いて通ってらしたという、すごい人だった。
アニメーター列伝:上妻晋作
正に鬼才としか言いようのない、アニメーターの中のアニメーター。
テレビ放送後に出たタイラーのミュージッククリップでは原画・演出・美術を担当しており、その出来栄えは、日本の商業アニメーションの一つの到達点と言える。
ある日、上妻さんが嬉しそうな顔をして、アザリンがそよかぜの廊下にうずくまってるレイアウトを僕に見せてこう言った。「大野くん、これ平田さん(タイラーキャラクターデザイナー)の絵にそっくりだろう」
そこには超個性的な生まれて初めて見るようなアザリンが描かれていたが、新人設定制作には「全然似てないですよう」などと軽口を叩けるはずもなく。何と言ってその場を切り抜けたか記憶は定かでない。
オープニングも上妻さんが原画を担当された。
綱渡りをするタイラーを真下から撮ったカットがあり、あんな難しいアングルの絵が描けるのは上妻さん以外いなかった。
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