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crypto crash=暗号通貨の暴落 | 教科書に出てこないニュース英語 《アルゼンチン》
イギリスの国営放送 BBCで2025年2月18日に配信された記事の見出しで使われていました。
Argentina president faces impeachment calls over crypto crash
アルゼンチンの大統領、暗号通貨の暴落に関わる弾劾要求に直面
まず、英単語から見てみましょう。
◾️crypto
この語はcryptocurrencyの省略です。
これは、currency(通貨)の前にcrypto-という語が付いてできています。
そこで、crypto-を辞書で引くと、
crypto-
[kríptou-]
[連結]「隠された」「秘密の」「ぼんやりした」「正体を隠した」
とあります。
さらに語源辞典には、
「秘密」または「明白ではなく明示されていない、隠れている」という意味を表します。少なくとも1760年以来、英語の単語を形成するために使用されています。この意味は、ギリシャ語のラテン語化した形の kryptos「隠れて、秘密にされた、秘密の」から来ています。
19世紀には、しばしば秘密の宗教的信仰に関連して使用され、1870年代からは科学的な用語で使用されるようになり、1945年からは通常、隠された政治的忠誠心を表すのに使われるようになりました。Crypto-fascist という語は、1937年に登場し、crypto-communist は1946年に登場しました。そのため、抽象的な名詞として、crypto という言葉は「政治的主張を隠す人」を表すようになりました。
…と説明されています。
crypto-がついてできた複合語は多く見つかります。
- cryptobiosis ある種の生物が極度な乾燥などに対し、無代謝の状態になること
- cryptomeria《植物》スギ属 <種子が構造物によって隠されていることから>
- cryptorchid《医》停留睾丸症の人
- cryptozoology 未確認動物学
- cryptozoic 《動物》暗い所に生息する
- cryptogam 隠花植物(花をつけないで胞子で繁殖する植物)⇔phanerogam
- cryptogenic〈病気などが〉原因不明の, 潜原性の.
- cryptonym 匿名
- cryptology 暗号学
- cryptogram 暗号文.
- cryptograph 暗号技術
生物学と医学関係、それに暗号関係が多いですね。
ちなみに「暗号資産」はcrypto assetsとされ、私が調べた限りでは複合語としては掲載されていませんでした。まだ新しい言葉だからでしょう。
また、「暗号化する」は、動詞化する語であるenを前につけたencrypt [ɪnkrɪ́pt]、「非暗号化する」は、否定の意味を表すunを付けたunencrypt、「暗号解読」は、分析という意味のanalysisを使ってcryptanalysis [krɪptənǽləsɪs]となります。
ついでにcurrency(通貨)の語源も調べてみました。
1650年代、「流れる状態」の意味で使われるが、これは現在では稀か廃れた意味である。ラテン語のcurrensから来ており、これはcurrere「走る」の現在分詞形である。人から人へ「流れる状態または事実」の考え方が、「公共の知識における継続性」(1722年)という意味や「交換の媒体として流通しているもの、すなわちお金」(1729年)という意味へと発展した。
「通貨」という訳語を考えた人のセンスの良さを感じます。
なお、
impeachment callsは、「弾劾の要求」
fraud [frɔːd]は、「詐欺、詐欺行為」という意味です。
◾️アルゼンチンの大統領が特定の暗号資産を推奨し乱高下
この記事の概要は、
・アルゼンチンのミレイ大統領が、先週の金曜日にX(旧Twitter)に$LIBRAコインについて投稿し、中小企業や新興企業への資金提供に役立つと述べた。
・彼はこの暗号通貨を購入するためのリンクを共有し、その価格が急上昇した。
・しかし、数時間以内に彼は投稿を削除し、暗号通貨の価値が急落し、投資した人々はお金のほとんどを失った。
・一部の野党議員は、ミライを弾劾する手続きを開始する計画だと言っている。一方、ある弁護士は、日曜日にアルゼンチンの刑事裁判所に詐欺の告発をした。
…ということでした。
表示された「関連ニュース」で知ったのですが、米国大統領トランプ氏とメラニア夫人も個人で仮想通貨を発行していて、仮想通貨に関するトランプ氏の発言により乱高下しているようです。そして、これに対して政策を決定できる人間が、政策により相場が上下する仮想通貨を発行することに対して利益相反が生じる可能性があるとの懸念が表明されています。
政策の私物化が目立つトランプ氏。「何でもあり」で開き直ってしまう人物は恐ろしい。そういう空恐ろしさを武器にしていると言えます。
補足 | 「仮想通貨」それとも「暗号資産」? 呼び名はまだ定着の途上であるようです。
金融庁はビットコインなどインターネット上で取引される仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に改める。日本円やドルなどの法定通貨と誤解される恐れがあるほか、20カ国・地域(G20)会議などの国際会議で暗号資産との表現が主流であるため日本でも統一する。
有識者で構成する「仮想通貨交換業等に関する研究会」で報告書案を示した。改称の時期は決まっていない。これまで日本は資金決済法を改正し、交換業者に登録制を導入。マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金対策を審査する国際組織の金融活動作業部会(FATF)にならい「仮想通貨=バーチャルカレンシー」との呼び名が定着してきた。
一方、G20会議の共同声明などでは「暗号資産=クリプトアセット」と表現している。送金や支払いなど決済手段として使う場合には「通貨」との呼び名がなじみやすいが、荒い値動きにだけ着目した投機的な売買も多いため法定通貨のような決済手段と区別すべきだとの指摘が出ていた。
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