<前編>での概要、<後編その1>での事例1につづき、<後編その2>では事例2の内容について紹介と私の感想をお伝えします。
これまでの記事はこちら↓から
◉事例2)「いのち」を大切にする社会を目指して―「いのち会議」と「いのち宣言」
発表者は、:堂目卓生(どうめ たくお) 大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)長です。
大阪大学 SSIってご存知でしたか?
私は初めて聞いたので調べてみました。
↓ 公式ページの説明です。
要は、社会課題の解決をめざすことをテーマにして、人文社会系の研究者を動かし、必要に応じて大阪大の他の部局とも連携して、外部とのハブともなって調査研究・提案発信をしかけていく組織といったところでしょうか。2018年に作られています。
パーパスは、
「持続可能な共生社会を「命を大切にし、一人一人が輝く社会」としてとらえ、その実現を目指」すこと
ミッションは、
「文明の原点に立ち返って『命』に注目し、命を『まもる』、『はぐくむ』、『つなぐ』という視点に立って社会課題の解決に取り組」むこと
…とされています。(「SSIの理念」)
さて、このSSIの長を務めておられる堂目先生の報告は、経済史の研究者らしく、近代社会の基本構造とそこからの脱却の話から始まりました。
お話の要点は、次の転換をめざそうということでした。
これに続いて、堂目先生が紹介されたのが、「いのち会議」事業でした。
この会議は、大阪大学と経済界(関西経済連合会・大阪商工会議所・関西経済同友会)が昨年、2023年3月に立ち上げた事業です。
大阪大学SSIとは別組織ですが、堂目先生がコーディネーターとして動かれているのではないかと思います。
設立の趣旨が、大阪大学の総長名で次のように書かれています。
具体的には、
・12のテーマについてアクションパネル(パネル=助言・討論を行う専門家集団; 委員会)が活動中。
・「いのちの声」(=自分が望むことや未来の社会に関して、世代や性差、民族や国籍等、あらゆる境を超えて、若者やこどもたちも含めた小さな声)の集積と分析を行っている。
…とのことでした。
アクションパネルの12のテーマをHPで見てみると、次のようになっています。
大半がSDGsに関するものです。
しかし、そこに「アート・文化・スポーツ」と「SDGsとその先」が加わっているというのが特徴と言えます。
「教育・こども」の実績例を具体的に見てみると、以前からある取り組みも含まれていました。例えば、★印は、勤務していた高校の生徒が10年以上前から参加していた事業です。
万博に向けた新しいイベントだけではなく、社会課題への取り組みを広く把握し、つなげようという意図が見えます。
🔷この「いのち会議」、活動の範囲は広くその主体もさまざまで、つかみどころがない程とも言えますが、
-「敵意のない世界を作る」という大きな目的を掲げていること、
- 関連する活動をまとめ、繋げようとしていること、
- 多様な立場の声・小さな声を拾い上げようともされていること、
- 万博以後に続く動きとしようとしていること
- 大きな影響力を持つ企業を巻き込んでいること、
…は、意義がある、
そして、万博を契機にしてこのような動きが起こるのなら、万博も悪くないと思った次第です。
<後編その2>はここまで。
事例3の「万博学という視座」については、<後編その3>にてご紹介します。
「万博学」をシンポジウムに「噛ませる」あたりが、「さすが民族学博物館!」と言わせるところなんです。お楽しみに。