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bailout=政府による私企業への救済措置 | 教科書に出てこないニュース英語 《スイス・製鉄所の電気料金一部免除》

スイス放送協会の国外向けWebサイト swissinfo.chで2024年12月17日に配信された記事の見出しで使われていました。

Electricity bills slashed to bailout struggling Swiss steelworks.
苦境にあえぐスイスの製鉄所を救済するため、電気代が削減される。

Swiss lawmakers have agreed to slash electricity bills at four struggling steel and aluminum plants in a rare bailout of a strategically important industry.
スイスの国会議員は、戦略的に重要な産業の一つを対象とした稀な救済措置として、経営難に陥っている4つの鉄鋼およびアルミニウムの工場の電気代を削減することに合意した。

日本でも電気代に対する補助が行われていますが、スイスのやり方は、対象や財源が異なっています。

まず、英単語から見てみましょう。


◾️bailoutを辞書でひくと

[名]
1 (パラシュートなどによる)緊急脱出;保釈
2 ((略式))(財政的な)緊急援助;債務棚上げ
3 代替方法

https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/bailout/#ej-6238

と、あっさりとした記述しかありません。bailとoutがひっついてできた語のようなので、bailを辞書でひくと、この語のもう少し詳しいプロフィールを知ることができます。

bail 1  [béil] 大学入試レベル
━━[動]他
1 〈被告を〉保釈してもらう(out);〔通例受身形で〕〈人を〉保釈する
2 〈被疑者を〉救済する
3 〈物品を〉委託[寄託]する

慣用句・イディオム
bail out
1 ⇒動1
2 他((略式))〈企業などを〉救済する,…の債務を棚上げする

https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/bail/#ej-6224

このニュース記事での意味は、文脈から、「(略式))〈企業などを〉救済する,…の債務を棚上げする」ですね。

また、語源辞典によると

As "federal help for private business in trouble," from 1968; it is unclear which sense of bail is meant there.
困難に陥った私企業への国家による救済という意味は1968年から。bailのどの意味合いで使われているかは明らかでない。

https://www.etymonline.com/search?q=bail

とあるので、第2次大戦後20年経った頃から、日本でいうと高度経済成長期の頃からの用法であることがわかります。

また、bailには「保釈する」「水を船から汲み出す」「パラシュートで脱出する」などの意味があるのですが、どこから来ているのかは定説がないようです。しかし、何となく、困っているものを救うという共通したイメージが感じ取れます。


なお、
見出しの冒頭は、Electricity bills slashed となっていますが、
通常であれば、Electricity bills will be slashedと書かれる英文です。

太字にした部分が省略されています。見出しでは、述語部分のbe動詞は省略されるのです。時制は明示されないのですが、この記事の場合、本文を読むと、slash(〈予算・価格・量などを〉ずばっとカットする,大幅に削減する)するのは、今後のことになるので、ここでは未来形にしています。


◾️電気料金救済措置の具体的な内容

記事の内容を要約すると、

・スイスの国会が、「戦略的に重要な」鉄・鉄鋼・軽金属の鋳造工場が一定の条件の下で財政的救済を受けるように、電気供給法の改正に賛成した。

・対象となるのは、シュタール・ゲルラフィンゲン(Stahl Gerlafingen)製鉄所とシュテルテック(Steeltec)製鉄所、ヴァレー州(Valais)のアルミ鋳物工場であるコンステリウム(Constellium)とノベリス(Novelis)。

・これらの工場は、4年間、送電網使用料の一部が免除される。この割引は、すべての電力消費者が共同で負担する。

・上院が条件を厳しくしたため、法案は下院に戻る。

つまり、

一定の条件を課せられた工場だけを対象に電気料金の負担を減らし、その財源は他のすべての電力消費者の使用料金アップで賄う。国庫からの支出はしない。

ということでした。


日本の電気料金補助は、個人及び企業(個別協議で電気料金を決める特別高圧契約を除く)が対象、財源は国庫(実質的には国債=国の借金)です。

対象は個人プラス企業なのですが、「物価高対策」が理由に挙げられ標準家庭で○○円と示されることで「家計に優しい」ことが強調されているように見えます。また、負担は将来に先送りしています。

スイスのやり方とは随分と違うなぁと思います。

他国と比較することで日本がどのようなやり方を選択しているのかが見えます。

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オオニシ チヒロ
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