人形師ギリコの « 娘 » の心情
減っていくだけの日々だったけれど、これからは意味のあるものにしたい。何故なら、あたしが生まれたからだ。自分の境遇に抵抗があって、何もしないまま、抵抗することだけに日々を費やしたおかげで、現実感が全く無くなってしまったのかもしれない。でも、どうにも現実に現実感が湧かないから、何が起きても受け入れてしまえる。けれど抵抗はする。ので、やっぱり現実感を味わえない。人形の目でこの世を眺めている感じだ。
あたしはカカシだ。干からびている。水を求める。水はない。風が強い。座ることはできない。暑い。寒さを求める。喉が渇いた。コーヒーに溺れる。寂しい。うさぎに恋する。血のように綺麗なものが好きだ。芸術や文学の感性はない。親父のおかげでひもじい思いをして生きてきた。安心できる場所もない。ただ黙って前のめりに倒れるか。
あたしは不満を持たない、ことにしている。ただ感じないように心を麻痺させているのだ。だからあたしの現実は作り物だし、突飛な出来事が起きても動じない、そんな冷徹さを兼ね備えている。地上から子供が転がり落ちてきても、気に留めない。助けを必要としていても、電話を途中で切る。あたしは冷徹だ。優しさの欠片も、
自分を「あたし」と呼ぶだけでは分からないことが多いのかもしれないが、試すのをやめないでこのまま突っ走ろうと思う。何故なら止まることに飽きてきたからだ。あたしは安息を知らない。虐待と暴力の中を這いずってきた。ヴァイオレンスな体験が人よりも多い。平気では済まされない。あたしは人を憎まない。恨みもしない。
※人形師ギリコの娘(名前はまだない)の心情を描写してみました。彼女は父親の生成した最高レベルのゴーレムで人間と瓜二つの姿をしています。父親同様、片足をチェンソーに魔武器化させることができ、魔力属性は「土」。なので地中から岩石の刃を発生させることができます。彼女の魂はゴーレムの体に宿ったので、彼女の対峙する自己というのは「物質と生命」に関するテーマになります。人形の体に人間の魂が定着させられているからです。魔術を使ってゴーレムを生成する父親の手によって。黄金の夜明け団に所属し、人類や魔女を迫害する父親に刃向かい、決戦の時が待たれます。彼女は狂気に堕ちた父親を討ち、自らを生み出したことへの憎しみをかけて勝利を掴み取ろうとしますが、その最期はギリコによって砂塵に変性させられることで身体が滅びます。一筋の涙が頬をつたい、父親の手の中で消え去ります。生成と消滅。
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