クロナの心情
マカ、君と初めて言葉を交わしたあの日、僕はとうとうこの命を落としてしまうんじゃないかって、そう強く思ったんだ。僕はそれまでも、その日だって支配的な母親に虐げられていて、君の大切な武器を傷つけたことだって、自分の感じる苦しみと比べたら全然大したことないって、本気でそう信じていた。けれど君がソウルに覆い被さって必死に名前を呼ぶ様子を見ていたら、僕だってほんの少しは自分のしてしまったことを重く捉えてしまうところだった。マカ、ごめんよ。僕は簡単に人を傷つけてしまえる。簡単に教会の中で喧しくする不良少年たちに刃を向けられる。僕は罪人だ。何人も何人も人を殺してきてしまった。マカは僕のことを本当は狂気なんて必要としていないって言ってくれたけれど、マカ、僕は、僕には狂気が必要なんだ。それは何もメデューサ様に言われてそう言っているわけではなくて。僕が夢で会ったマカに瓜二つの姿をした女の子、月に暮らしている彼女がその昔、月と魂を共鳴して星を破滅させてしまったらしいんだけれど、彼女がいうには、地球にも危機が迫っていて、いずれ強大な力を持つ狂気の大魔王が地上を蹂躙し、人類文明を壊滅させるというんだ。それに僕がラグナロクに魂を取り込まれて鬼神になってしまえたら、あとはマカが僕らを浄化してくれるって。月と魂が繋がっている僕らは、狂気を胸に滅びゆく文明をただ見届けるだけしかできない無力で儚い存在さ。君の退魔の波長で僕らを、ルキを浄化して欲しいんだ。そうすることでメデューサ様の黒血の研究は終わり、月が浄化された世界においては魔女たちも破滅願望を抱かずに暮らし始めることができるはずだからさ。僕の役目は君に魂を浄化されること、ルキと魂を共鳴すること、僕らで共鳴連鎖してマカの魂の波長を月に届けること、それらがこの地球に蔓延する狂気を滅却することのできる方法になるのさ。だからさ、マカ。僕を魔女狩りで消滅させてくれ。僕はもう長く生きた。後悔なんてないよ。母親の支配から逃れて、来世ではゆっくりと過ごしていたいな。重要なのは、僕がルキの魂と共鳴できるくらいの狂気の力を発揮して、その状態でマカが鬼神となった僕に魔女狩りを浴びせる。そうすればきっと、この星を覆い尽くす狂気の波長も広範囲における浄化が行われるおかげで世界は無事で済むはずさ。僕はこの最終戦争でみんなのための犠牲になる。何も後悔なんてないよ。僕に他者のために生きることを教えてくれたのは君だからさ。うん。じゃあ、あとはよろしくね。