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須賀さん、誘って頂いてありがとうございます。
面白そうなことが始まりそうだと思い、何を書こうかとこの2日間とても迷っていました。
ただ、どのような返事(?)を書くにせよ、今日までを一つ自分の中でタイムリミットにしていました。というのも実は、須賀さんから誘ってもらった直後の昨日と今日の2日間で、ゼミの先生が携わっている企画展を含め、東京にいくつか展覧会を観に行っていました。そしていま東京から愛知への新幹線の中にいます。単なる偶然ですが、この返事(?)は先生の企画展を観てから、家に帰るまでの間に書き上げたいなと思っていました。
さて、では何を書こうかというところですが、
去年のあいちトリエンナーレ2019の話も、日本学術会議の話もまったく無視できない話です。それに、自分がこの出来事に対して積極的に解決できる立場ではないにしろ、自分ならどうしただろうか、と思いを馳せる瞬間もいくらかあります。ただ、大学院時代の私たちは(須賀さんが政治的な出来事に関心があるのは知っていましたが、)ぼくの記憶では、焚き火をし、飯を食い、旅行に行き、ぞれぞれの作品について話をしている、という思い出しかありません。
それにぼくと須賀さんとでは政治的な態度に大きな差があるのか、というのもあります。「正しさはなにかという話ではなくて、正しさをどうつくるかという話」はぼくも大いに関心のあることです。
短かった学生生活を共にし、明確な対立関係にないぼくたちの「交換日記」で、国や行政の対応についてとやかく言うのもなぁと。
なので「大野くんは最近どんなことを感じて生きてますか」という問いと、「交換日記」の日記という要素から、須賀さんの疑問に対して明確な返事(?)をするのではなく、今ぼくが興味があって作品制作に生かせないかなと考えている話を主にして、応えていこうと思います。(「返事」に(?)をつけているのもこれが理由です。)
もしかしたら須賀さんの意図に沿ってないかもしれません。先に謝っておきます。ごめんなさい。
いまぼくは「花咲か爺」を下じきに、修了展で制作した「おじいちゃん」についての作品をブラッシュアップできかなと考えています。
それは今ぼくが住んでいる場所が関わっていて、今住んでいる愛知県の岩倉市というところは、年に10日間だけ「桜祭り」を行なっています。普段の岩倉は名古屋に勤める人のベッドタウンとしての役割を粛々とこなしているのですが、その間だけ普段と比べてとんでもない数の人がやってきます。
「花咲か爺」はほとんどの人が知っていると思うのですが、ある老夫婦が犬を拾うところから話が始まり、隣人の意地悪に晒されながら、最終的に拾って育てた犬の遺灰を撒くと枯れ木から桜の花が咲いた、という話です。
また、「おじいちゃん」についての作品は、亡くなった本人しか知らないような話をどこまで調べることができるのか、ということに取り組もうと考えていました。
これらはまだまだ点と点ですが、どこにでもあるようなベッドタウンと、誰もが知っている昔話が「桜」を介して重なり、そして最終的に誰も知らない個人的な話(ぼくのおじいちゃんについて)にも重ならないかなぁと思っています。まだまだビジュアルイメージもなく構想段階ですが。
ただ、「花咲か爺」をよくよく読んでみると、結構現代的な問題が隠れてるなと思います。この物語、実は良い爺さんの善行よりも悪い爺さんの悪行の方が重点的に書かれています。ちょっと乱暴ですが、悪い爺さんの行いとの比較で、良い爺さんが良く見えているのです。「Aよりはマシ」といった感じです。今の社会を見渡してみると、そんな比較ばかりな気がします。
「安倍よりはマシ」、「Androidよりはマシ」、「(自分の考えの方が)あいつよりはマシ」。
本当だったら「マシ、だから良い」とはならないはずです。それこそポジショントークと自分の意見のぶつけ合いばかりで、本質の話から遠ざかっていると思う話に近いかもしれません。
と取り止めもなく自分の話ばかり書いてしまいましたが、書きながら、「花咲か爺」をポジショントークと合わせて考えることがあるとは思ってもいなかったので、これは個人的にはとても発見でした。
と同時に、自分の話ばかりを発信するのではなく、相手の話を聴きつつ、その人に伝えるために自分の話もする「交換日記」のような距離感は、もしかしたら今の社会には必要なのかもしれないとも思いました。
この2日間で秋田にいた頃の半年分以上の数の展覧会を見ましたが、多いから良いというわけでもなく、咀嚼する暇がないので、すぐに記憶から流れていきそうな感覚に襲われています。
これからどのような「交換日記」になるかはわかりませんが、幾らかの時間をかけてお互いが見ている風景や考えていることについて伝え合うのは面白いのかもしれないと思いました。
ひとまずこれで「大野くんは最近どんなことを感じて生きてますか」への応えとさせていただきます。
どうぞよろしくお願いします。