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2023/9/22 27周年ワンマンに向けて①

Interview&Text by Yurie Kimura

*6月2日の弾き語りワンマンはすごく楽しかったし、やってよかった

――6月2日の吉祥寺ROCK JOINT GBのワンマンライブは、久々の弾き語りでしたね。

 東京のワンマンはバンドでやることが多かったですからね。ステージでも話しましたけど、「ワンマンの弾き語りをやりましょう」と言ってくれたのはGBの野村さんなんですよ。「タイミングが悪いと動員がマジで厳しいことになりますよ」と俺が渋っていたら、話を聞いていた二十歳そこそこのスタッフが「僕も観たいです! そう思ってるGBのスタッフ、多いですよ」って。
それくらい若い子が「観たい」と言ってくれたことが嬉しかったし、彼らのための何かになるならそれで十分だな、と思ってやることにしたんです。

ライブの日はすごい雨だったのに、いろんな人が観に来てくれたのも嬉しかったですね。GBのスタッフなのにわざわざチケットを買って観てくれた子もいたりしたし。あとスパイス越境で俺を知って、歌にハマって来てくれた人とかもいて。新しい人たちがライブに来てくれているのをすごく感じました。

ライブも、心に変な引っ掛かりがない状態ですごく自由にやれて楽しかったですよ。前は歌いながら「次のMCで何を話そう?」と考えるようなこともあったけど、今回は喋りたかったら喋る、しゃべりたくなかったら喋らないでいいや、と思ってやってました。自分の中ですごく“抜けたな”という気がするし、いろんな意味であのライブをやってよかったです。


――MCは非常に素直で赤裸々でしたね。

 「みんな、俺の味方だったんだよね、ずーっと敵だと思ってた」ってやつですね(笑)。その話は最近、どのライブでもしているんですよ。「好きだからライブに来てくれてる」って、当たり前のことじゃないですか。でもその当たり前のことが、俺はずーっと信用できなかった。

いつも「この暗闇のどこかに敵がいて自分を狙ってる」って思いながら、ライブやってましたからね(苦笑)。

お客さんは味方だってもっと早く信じられてたら、いろんなことがもう少し変わっていただろうし、観に来てくれる人たちにももっと優しさを持って接することができていたと思う。

そのことを毎日感じているので、観に来てくれている人たちにはちゃんと「みんなが味方だと俺は知ったし、俺もみんなの味方ですよ」と思っていることを言葉で伝えておかんといかんな! と思って(笑)。

あと、せっかく時間を割いてライブに来てくれる人たちが喜んでくれるような声を出したいし、歌を歌いたいと思ってるんだということも、ちゃんと言葉にしています。

――「ここからもう1ラウンド始めたい」という言葉、その表情が非常に清々しかったことも印象的です。気合は入っているけど肩に力が入ってなくて、いいなあと思いました。

自分の気持ちに指標を立てるみたいな感じだったかもしれないですね。大森洋平はミュージシャンとして終わったわけじゃないし、音楽を諦めたわけでもない。“生きる”ということに重きを置いてスパイス越境を始めて、そのことで変わり始めている“今の大森洋平”だからこそ出せるいい声があるし、歌える歌がある。

それをもう一度いろんな人に届けたいし、それを聴きにたくさんの人にライブに来てほしい。そのためにもう一度積極的に動き出そうと思っています。


――開演前のSE が『End of The World』だったのは、“これまで”に終止符を打って“次へ行くよ”という意味合いだったんですね。

そうです。世の中的にもそうじゃないですか。新型コロナウイルス感染症を機に世界は大きく変わりましたけど、コロナ禍直前くらいから始まってる変化もあると俺は感じていて。それは社会も俺自身も。コロナ禍を経てその変化はさらに進んでいるし、その変化に気づいて自ら変わっていくか、気づかずに取り残されていくか、気づいても変わらないことを選ぶか。その分岐点に、今、みんな立ってる気がします。

『End of the world』は去年、Spotifyから流れてきたのを久々に聴いて、「いい曲だなあ」と。カバーすることも考えたけど、そのまま聴いてもらった方がいいと思ってSEにしたんですよ。

*自分の歌が変わったことで、古い歌も新曲のようなノリで歌える

――今だから出せるいい声、今だから歌える歌があるということですが、いい声が出せるようになった理由に心当たりは?

 う〜ん。4年前にタバコをやめたことは大きいと思います。ファルセットの立ち上がりとかが、以前とは全然違うので。あとはやっぱり、さっきも話したように目の前で聴いてくれている人たちが“敵”に見えなくなったことでしょうね。以前と違って変な力が入ってないから、声が抜けるんだと思う。

――自分の歌が変わったと感じたのはいつ頃から?

 変化は毎年感じているんですけど、コロナ禍でライブの本数が極端に減って1本のライブの重要性やステージで歌えることがどれだけ幸せなことかを思い知ったことが大きかったんでしょうね。

先が見えない状況が続いて、このままいったら俺くらいの歌うたいは二度とステージで歌えなくなるかもしれないなーと思ったりもしたし。だったら40年以上お世話になった“音楽”の歌を、今こそ書いておきましょうと、まだリリースしてない『音楽』という曲を書いたことも大きかった気がします。

人生よりも音楽を大切にし、歌えるなら死んだっていい、と思っていた長い時期を経て、今、大人になって、家族もできて、生きていくことにも重きを置ける自分がいるみたいな歌なんですけど、そこらへんに分岐点があったような気がします。

――音楽だけに集中していた時よりスパイス越境と音楽の二つをやっている今の方がずっと自由に楽しく音楽ができると、以前も話していました。

 掛け値なしに調子が良かった10代後半は、「俺には音楽しかないんだ!」と言いつつ学校にも行っていたし部活もやっていたんですよ。音楽の他にもやることがあった方が、俺は心も安定するし音楽活動の調子もいい人間なんだということに、スパイス越境を始めてやっと気がついたという(苦笑)。

音楽をリスナーとして聴く耳と音楽を作る人間として聴く耳、その両方もスパイス越境をやる中で取り戻せましたからね。デビューしてからはずーっと、「何かを盗んでやろう」とか「勉強になるかもしれない」とか、作る人間としての耳でしか聴けていなかったんですよね。

でも音楽を聴きながら仕込みをしているうちに、「これ、かっこいい!」と興奮しながら聴けるリスナーとしての素直な耳が戻ってきた。もしかしたらあの時(リスナーとして楽しみながら音楽を聴く耳が自分の中から亡くなった時に)に、魔法は切れてたんじゃないかなとまで考えたりもしましたね。早い段階で一回終わっていたから、あんなに苦しかったのかもしれないとか。売れるしかない状況をお膳立てされていたのに、売れなかったし・・。その辺も含めて“彼”は相当きつかったと思います(苦笑)。

――確かに“あの頃の大森洋平”くんは辛そうでしたよ。6月のステージでは「昔の歌も今の方が上手く歌える」とも話していました。

 いいことを言っているのに、俺がちゃんと歌いきれてなかったために浮かばれなかった初期の曲がたくさんあるなーと思っているんですよ。

今の自分のフィルターで歌うと、作った時とまったく違う歌だなと感じるし、“新曲”みたいなノリで歌えたりする。

以前は新曲がない状態でライブをやることに「俺は古い歌ばっかり歌ってるような人間なのか」としんどさを感じることもあったんですけど、今、聴きにきてくれている人は古い曲はほとんど聞いたことがない人ばっかりだと気づいたら、新曲がなくてもいいし、自分の曲だけじゃなくてもいいんだなと思うようになって、ライブのメニューを決めるのがとても楽しくなりましたね。

今ならもっと歌を届けられる自信があるから、今こそみんなに届けて、昔の曲たちを「よしよし」できたらいいなと思ってます。

〜②につづく

Debut 27th Anniversary Live “HIKIDASHI 1996〜2023″★弾き語りワンマン

2023.9.22(金)吉祥寺 ROCK JOINT GB
開場/開演=19:00/19:30

入場チケット=前売/当日:3,500円/4,000円(税込/1ドリンク(¥600)別)
予約=当HPメール(予約受付中!)、各SNSのDM等でも可、GBメール(予約受付中!)

問い合わせ=GB 0422-23-3091

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