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2022→2023 special interview❸

Interview&Text by Yurie Kimura

*スマホのボイスメモは思いついた曲やメロディでいっぱい

――そしたらあっという間に『LOVE&FUTURE』ができた、と。

 その日はスパイス越境の営業で、家に帰って最初のお酒をフジコさんと飲みながら「無茶苦茶なオファーだったな〜、頼まれたような曲、書けるかな〜」なんて話していたら、“アイに未来を〜 未来にアイを〜”ってサビのメロディと言葉が一緒に出てきたんですよ。

で、娘とフジコさんが風呂に入っている隙に、エレキギターでコードとメロを確認して「これはできる!」って。

あるのはサビだけだったけど、できる予感しかなかった。で、次の日、店に来てその続きを作ったら20分くらいで完成したという(笑)。

――そういうこと、よくあるんですか。


結構あります。で、大体うまくいくのはそういう時ですよね。昔はそれが奇跡でしかなかったけど、最近、そういうテンションに持っていくことができるようになってきた。どうしたらそうなるのか、言葉でうまく説明できないんですけどね。

今、曲をいっぱい作り貯めようとしていて、思いついたメロディをこまめにスマホのボイスメモに録ってるんですけど、そういう積み重ねみたいなものが日々あったことも、大きいんでしょうね。 

――曲の断片みたいなものはどれくらいあるんですか。

それがもうものすごい量になってるんですよ。それを繋げて曲を完成させたらめっちゃいい曲になるのはわかっているんですけど(笑)、その作業をするのが面倒でしょうがなくて。


――どんなところが面倒なんですか。

 曲作りのモードに入ると、心と体の回転がすっごく速くなるんですよ。それで疲れるんです。しかも集中しなきゃいけないじゃないですか。

一人だった時はそれで問題なかったけど、今は家族がいるから、話しかけられるでしょ。そうするとこっちはイライラするし、向こうも「ちゃんと聞いてない!」って怒り出したりする。家庭の空気が乱れるの、よくないじゃないですか。そういうのをいろいろ考えていくと「面倒くさい!」ってなるんです(笑)。

でも最近は朝の一人の時間ができたので、その時間に少しずつやってはいるんですけどね。

アンコールの最後にやった『遠雷〜何もない日々のこと〜』は、まさにその時間にできた曲です。


 *僕がポジティブな心境でいられたのは・・

――『遠雷〜何もない日々のこと〜』は『LOVE&FUTURE』を作ったすぐ後にできたと、ライブで話していました。

 ボイスメモにあった曲で、早く完成させたいな〜って気になってはいたんですよ。
そしたら『LOVE&FUTURE 』をレコーディングした翌日の朝、いつも通り5時とか6時に起きて日課のプランクをやった後にギターを弾いてたら、あっという間にできた。

クールダウンさせるための何かだったんだと思うし、曲ができる状態に、うまく入ったんでしょうね。

歌ってみて気づきましたけど、これはコロナ禍に入ったばかり、スパイス越境をやる前の時期のことを歌ってますね。

誰もいない公園で毎日のように娘と遊びながら、きっと来年もライブはできないだろうな、生活ができなくなるぞ〜と思っていた時の“なんとかしなきゃ!”という焦りみたいなものも入っています。

本当はもっと不安になるものなんでしょうけど、当てもないのに“なんとかなりそうな気がする”って思ってたんですよね(笑)。


――歌詞に“遠雷が始まりを教えてる”とありますから何か予感があったのでは? この曲で気になるのは“知らぬ間に失った僕のかけらを集めよう”というあたりです。


 それは壊れかけていた僕自身が復活して行く過程というか・・。

当時、娘は3歳で、マスクはしているけどコロナなんて関係なしに自由に楽しそうに公園で遊んでいた。それを見ていたら、だんだん自分の方が復活していったというか。

本当は相当な焦燥感があるはずなんですけど、ケラケラよく笑う明るい娘だったこともあって、非常にポジティブな心境でいられた気がします。

(❹に続きます)

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