Debut 25th anniversary interview❶ 〜25周年ライブと“スパイス越境”〜
Interview&Text by Yurie Kimura
❶〜25周年ライブと“スパイス越境”〜
――25周年のライブ、とても伸び伸び楽しそうでしたね。
ありがとうございます。バンドなのに弾き語りのライブみたいに自由に楽しめたのは初めてなので、自分でも本当によかったと思っています。
いろんなことを乗り越えてきたからなんでしょうけど、やっと自分よりキャリアの長いバンドのメンバーの中でも、ビビらずにやれるようになったんですよ。
本番前のリハの後にウエケンさん(上田ケンジさん)に「やっぱライブは楽しくないとダメですよね」って言ったら、「俺らはこれだけ長いことやってきてるんだから、ピリピリしなくても大丈夫なんだよ。楽しくないとやってられないよ」って。
“楽しむ”と“なあなあになる”はとても近い気がして、楽しむことを自分に許してなかった時期もあったんですけどね〜(苦笑)。
あの自由な感じで、今後もライブが続けられたらいいなと思っています。
――25周年を迎えられたことにどんな感慨がありましたか。
正直、とくにないんですよ。いつもライブも一緒にやってくれているウエケンさんとか(伊東)ミキオさんの方がもっと長くやっているから、毎回ライブの最後は「まだまだだなあ」で終わるから(苦笑)。バンドのメンバーが全員年下だったら、また違うんでしょうけどね。デビュー10周年の時は20代でまだガキだったから、「10年もやった! 俺、すごくない?」って思いましたけど、それ以降は・・。今は、まだまだこれが続くんだなあという感じです。
――ライブ当日、会場では“スパイス越境”のカレーも提供されました。2021年3月に“スパイス越境”をオープンすることになった経緯を教えてください。
2020年2月頃から新型コロナの影響でライブがまったくできなくなって、(妻の)フジコさんと娘の3人でずっと家にいたんですよ。外に出るのは娘を連れて散歩に出るときくらいで、あとは1日中グダグダ過ごしてました。
音楽で稼ぐこともできないし、なんの計画も立てられない時期だったけど、あれはあれで結構ハッピーな時間だったと俺は思ってるんですけどね。
で、そのうちフジコさんがスパイスカレーを次から次へと作り始めたんですよ。僕の麻婆豆腐とあいがけにしたり、子どもも食べられる辛くないスパイスカレーを試したり。
フジコさん的には趣味がひとつ増えた、みたいな感覚だったみたいだけど、この味は本物だ!と俺は確信したから、彼女をこの才能でデビューさせたいと思ったんです。新型コロナウイルスが普通の風邪になるまで10年くらいかかるという噂もあったし、家族で一緒にいられて生活していくにはお店をやるしかない、とも思って。
――暮らしの糧を確保するのは大事です。
それで「店をやったほうがおもしろいし、絶対に大丈夫だから」と自信なさそうな彼女の背中を押しながら、俺は俺で食品衛生責任者の免許を取りに行ったりして、準備を進めていたんです。複数の店舗を持ってる顔馴染みのオーナーに「カレー、すごくおいしいんですよ」とか「どこかにいい場所ないですかね」とアピールもしてたし(笑)。実際、地元のイベントでカレーを出したら評判がすごくよくてね。そしたら2020年の年明けに顔馴染みのオーナーが、俺が前から気になっていた今のお店を「ちょっと使ってみる?」って言ってくれたんですね。
――スパイスカレーを作り始めて1年後にはお店をオープンって、すごいですね。
俺、最初にドンときた直感を信じ切る能力はすごく高いんですよ。それは実現力にも繋がっていると思う。でもなんの前触れもなく「カレーの店をやる」なんて言い出したから、周りのみんなはハテナマークが出まくってましたね、あいつ、大丈夫かって(笑)。
(❷につづきます)
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