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有楽町チョコミンツ『連弾の春』を読んで

僕の大好き芍薬さん(@yuritanyogini)と天田銀河さん(@tancaloid_ginga)の二人によるユニット「有楽町チョコミンツ」によるネプリ『連弾の春』を読んだ。

内容はひとつの歌を二人の歌人でつくる「R-2ぐらんぷり」で使わなかった歌たち。

19日23:59まで出せるので興味がある方はぜひ。
予約番号は15043340
A3白黒、20円(セブンイレブンのみ)

中身を全部言うわけにもいかないので、一首ずつ好きな歌を。

地下書庫の匂いを連れて退社するわたしは雨にばかり好かれる/芍薬『雨のち忘却』

実際、晴れ男もいなければ雨女もいない。けれど地下書庫での作業を終えて退社する主体は自分は雨にばかり好かれていると言う自己認識をしてしまうやるせなさ。でも、雨だって、地下書庫での誰にも褒められない作業だって世界には絶対に必要だ。下の句の「雨に(ni)」「ばかり(ri)」と、「ばか(ka)り」「好か(ka)れる」の母音の韻律が口馴染み良い。

ハンドルを左へかるく切るように春の時計を巻き戻せたら/天田銀河『postlude〜before sunrise』

ハンドルと時計をその形状からリンクさせる発想が面白い。「かるく」と言う言葉があることで逆説的に「絶対にそうはならないこと」を強調している。二句目以降のすべての句にカ行が詠み込まれていて、強めのカ行の音が規則的な時計の針の進む音にも感じられる。

ちなみにこのネプリ、QRコードがあっておまけの連作も読める。ちなみに僕はそっちが好き。
では、最後に一首ずつ。

微笑みが否定の意味になるなんて知ってしまって空がまぶしい/芍薬『スロウダウン』

優しさが人を傷つけないようにするために傷つけるのと同様に、微笑みも気遣いでもって針を持つ。上の句の視点が好き。

VIRGINIA SLIM lightに火を点ける知らない人のような指先/天田銀河『春の終章』

バージニアスリムライトは主に女性が吸うことの多い細いタバコの銘柄の一つ。指先にフォーカスしているところを見ると、この歌で火を点けている人も女性だろう。知っていると思っていた人が知らない間にたばこを吸っているのを見ている静かな戸惑いが伝わる。

ぜひ、皆さんも!

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