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なぜ、VRChatPhotographyは自撮りなのか
VRChatコミュニティにおいて、写真と呼ばれているものはどのようにして撮影されているのだろうとギャラリーワールドをいくつか周った。
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総勢28名のVirtualPhotographerによる展示が行われている。
またXにてVRChatを用いて撮影されたであろう写真と呼ばれているものを観た。
そしてまた自分でも写真と呼ばれているものを撮影してみた。
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作品と呼ばれている写真(それもまた、多くの人々によって"写真"と呼ばれているそれ)や自分で写真と呼ばれているものを撮るたびに、改めて「写真」という言葉に疑問を持った。
写真とは長らく、カメラを境に被写体と対峙し、撮影者と被写体に分かれ、カメラ越しに(あるいはカメラのファインダー、現代では背面液晶であることもあるだろう)被写体を撮影者として観察し、自分の描いた映像となったとき初めてシャッターを切り、撮影をする。
その撮影をしたとき、被写体を写真というメディアに閉じ込め、写真の外界と内側に切り分け、内側を所有する行為であった。
ことに、VRChatコミュニティではどうか
ではVRChatコミュニティにおいてはどうか。VRChatにおける自撮りというのは上に述べた写真行為に当てはめると、自分を所有するということになる。
それらは恐らく、現実ではカメラの向こう側にいるはずの撮影者が不在であり、被写体と撮影者が一致している「自撮り」というものであった。
何故多くのVRChatコミュニティにおいて作品と呼ばれる写真には何故自撮りが多いのか少し覚えた感覚を書き出す。
VRChatコミュニティにおける「Virtual Photography」「VRChat Photography」
VRChatコミュニティにおける「Virtual Photography」ないし「VRChat Photography」の大まかな共通点を上げる。
主に自分で自分を撮影する(所謂自撮り)
アバターが主題である(ポートレートである)
スタジオ撮影のように構図、ライティングを固めたうえで撮られている(スタジオ撮影的である)
という点が見えてきた。(ただし上記に当てはまらないものが存在することは留意しなければならない。)
現実とVRChat、それぞれの「自撮り」
現実における自撮りとはどこに、誰と、いつ訪れたかという記録の側面が強い。
それに対しVRChatでの自撮りはスタジオ撮影的であり、所謂ところの作品撮りとして撮られる傾向にある。
このことから自らを作品として仕上げる。そして本来のスタジオ撮影では不可欠な(スタジオ撮影に置いても撮影者と被写体を自分一人で完結させる風変わりなものもいるが)撮影者と被写体を兼任し、くっつけてしまう。
これは大きく現実の撮影とは異なるVRChatコミュニティ独自の撮影文化であるように感じる。
撮影者と被写体とをくっつけてしまうことにより、現実の写真撮影では発生する「カメラ越しの撮影者と被写体との距離感」が消失する。
撮影者と被写体との距離感、閉じた世界
これにより自己で閉じた世界が形成され、それがイラストレイションのような写真(イメージ)を生み出す助けになっているのではないかと考える。
自己で閉じた世界は他者の介在を許さず、自己の投射をそのまま世界へ広げることができる。世界へ自己を逆投射する。
これは決して良い悪いの話ではなく、VRChat独自の、現実の撮影とも3DCGとも異なった、イラストレイションのような写真(イメージ)を産出する鍵となっているように考える。
これにより3DCGとも現実の撮影とも異なったパースペクティブがもたらされ独自の表現が進歩したのではないかと考えられるが、どのような表現が存在するか、歴史的背景も俯瞰しながら今後考えていきたい。
イラストレイションへの熱望、支持
このイラストレイションのような写真(イメージ)が現在のVRChat Photographyにおいて圧倒的に支持(view数、投稿数)され、主流となっているように見える。
何故イラストレイションのような写真(イメージ)が支持されるようになったのか、その他の「何故イラストレイション様でない写真は支持されていない(ように見える)」のかは今後覚書としてまとめて行きたい。