
今だから言えるあの頃の話04:事務所のリノベーションでトラブル(とはいえ最高に楽しかった時間)
5月の連休中にフラッと内覧した物件に心を奪われ、私は連休明けに上司に会社を辞めると告げ、6月末日に退職しました。
7月から会社が吸収合併され、体制が変わると聞いたのは、退職が承諾された5月末のことでした。
それまで引き留めに遭っていた私は、退職を承諾してもらうと同時に吸収合併の話を聞かされ、一気に不信感を持つことになります。そんな大事な話が、たった1ヶ月前になって開示されたのです。
しかも、吸収されることを知っていて私を引き留めるなんて、どういうつもりだったんだろうと、ゾッとしました。自分がただの駒だったことを突き付けられた気がしました。
会社が吸収されて無くなるため、思いがけず会社都合で辞めることができましたが、退職金に上乗せなどはありませんでした。
それどころか、陰ではリストラされたと言われていたようです。
今、過去のこととして思い起こすと、会社や上司にも都合があったわけで、社員が駒扱いなのも仕方ないと思う部分もあります。
雇われるというのは、弱い立場でもあり、甘い立場でもありますね。
多少モヤモヤしたものの、退職の日には清々しい気持ちになっていました。
会社の嫌な部分が見えたおかげで、何の迷いもなくなり、すでに成功の一歩を踏み出したかのように感じていたのです。
もちろん、ここから苦難の道が始まるわけですが、それを知らなかったからこそ、前向きな気持ちでスタートできたのだと思います。
独立開業するにあたり、最初に取り掛かったのは、ホームページとロゴの作成です。ホームページは知り合いのITエンジニアが作ると言ってくれて、ロゴはネットで見つけたデザイン会社に発注しました。
次に取り組んだのが事務所物件のリノベーションでした。
行政書士の開業には、来客や執務可能な事務所が必要です。ここで躊躇する人も多く、特に物件を借りて開業するとなると、一気にハードルが高くなります。
事務所は自宅でもいいのですが、色々考えた結果、成功するためには、お客様が訪問してくれる事務所が必要だと思いました。
そんな時に「これだ!」と思える物件が現れたため、一気に開業を決意することになったのです。
物件の内覧には夫と一緒に行ったのですが、夫も乗り気でした。
なぜか夫は、私が独立してうまく行くんじゃないかと予想していました。おそらくそれは、夫の願望でもあったのだと思います。
夫はITの仕事をしていて、当時鬱病の一歩手前までいき、勤めていた会社を退職したいと悩んでいました。私は夫の無茶な働き方を見ていたので、健康を優先して退職するようにすすめていました。
そんな時、行政書士試験に合格し、独立を決めたため、私がうまく行けば安心して退職できると考えたのだと思います。
私も夫を安心させるためにも、絶対に成功するからと言っていました。そのためには、お客様が来てくれる事務所が必要だと伝えました。
私にはある程度貯金があり、退職金も出たため、それを使って事務所を準備したいと、計画表を作って夫にプレゼンしました。
夫も希望の光を見たかったのでしょう。一緒にリノベーションの内容や考えてくれたり、業者への訪問に付き合ってくれました。
一緒にアイデアを出しながら、こんな事務所にしたいねと、あの時期は、本当にただただ楽しい時間でした。
開業のセオリーである「固定費はできるだけ抑える」という考え方は、2人には見えなくなっていました。
最終的に、夫もリノベーション費用を負担すると言い出しました。私を応援したいと言うのです。ありがたかったし、正直助かりました。
事務所家賃だけでも11万円弱かかるわけですから、私も貯金や退職金を使い果たすわけにはいきません。リノベーションには1ヶ月以上かかり、結構な出費となりましたが、何を思い出しても、本当に楽しい時間でした。
リノベーションにトラブルは色々とありました。
発注したものと違うものが入って来て、慌てて止めたり、スケジュール通りに進まなかったり、夏の暑い時期の工事だったにもかかわらず、なかなかエアコンが入らず、汗だくで作業してもらうことになったり。
作業に当たってくれた人たちは、本当に良い方ばかりでした。まるで門出を祝ってもらっているような気持ちになりました。
そんな中、1つ、大きなトラブルがありました。事務所に絶対に必要な電話線とランケーブルが、天井裏で切られていたのです。
この工事に当たってくれた人は、感じが悪く、線が切られていたことに腹を立て、これでは電話もネット回線も無理だと言い始めました。それって、仕事ができませんと言われているようなものです。
何とかなだめ、下手に出てお願いし、夫にも来てもらい、3人で天井から線を引き出す作業をおこないました。
大変な作業でしたが、何とか電話もネットもつながり、最後は3人で拍手で終わりました。これもまた、今となっては良い思い出です。
あとから、別の建物でネット回線工事をお願いした際に、天井裏には色々なケーブルがはっていて、邪魔だからと言って、自分の工事に関係ない配線を切ってしまうことはよくあることだと聞きました。
かなり驚きましたが、事務所の配線も、何かの工事の際に切られたのかもしれません。
ネット回線工事なんて、物件を借りてから行うものなので、その時点で回線がつながらないとわかったら、本当に悲劇ですよね。
実際、私の知り合いが、回線工事を依頼してからつながらないことがわかり、かなり落ち込んでいました。
ただし、その後、何とかなったようなので、やはり諦めずに対応をお願いすることが大切なのかもしれません。
お盆休みなどもあり、事務所のリノベーションは8月下旬に終わりました。
机やソファーセットなども入り、理想の事務所になりました。
そしていよいよ、9月開業となります。
そこからが、苦難の始まりでした。